[1-2] 不動産投資のデメリット

逆に他の金融商品と比較して不動産投資の良くない点も検証してみました。

金利上昇リスク

 不動産投資を勉強した人が最も気にするのは金利上昇リスクではないでしょうか。筆者の保有している物件を例に挙げれば、金利2%では、税引後に月々25万円のキャッシュフローが出ていますが、金利6.5%となれば、税引後キャッシュフローはゼロとなります。

 一口に金利と言っても、短期プライムレート(短プラ)、長期プライムレート(長プラ)、長期国債(10年国債)、公定歩合(基準割引率および基準貸付利率)など、様々ありますが、不動産投資用の貸出金利は、長期国債に連動すると考えて良いでしょう。

税金が高い

2012/12現在、株式などの証券に対する課税はわずか10%です(2014年から20%になりますが)。証券ではわずか10%の税率で何億の規模でも、配当金もキャピタルゲインも取り放題です。

 一方、不動産(と言うより、個人の事業所得と法人税)には、高額な税率が課せられています。

たとえば、個人の転売益に対しては、

・短期譲渡(5年以下の所有)で実効税率39%

・長期譲渡(5年を超える所有)で実効税率20%

また、自宅の売却でこのように儲かる人は政治家もしくは、よほど大昔から住んでいる人くらいしかいないと思いますが。

・自宅 3,000万円までの利益は非課税。それ以上は9,000万円までの利益で(3,000万円控除後の6,000万円に対して)14%,それ以上は20%

資産管理会社(金融業界ではPIC=Private Investment Companiesとも)として複数の法人を作って、そこに不動産を持たせて、あらゆる手立てを使って節税しても、数億もの規模となればインカムゲイン(賃料収入)に対してですら、実効税率10%を下回るのは不可能と言えるでしょう。不動産から上がる利益に対する課税率は高いのです。

→不動産で利益が出た際によく利用される節税対策商品[11-5] よくある節税のための金融商品

 不動産というのは金額が大きいが故に、値上がりしたときの儲けも大きいわけです。しかし、法律も税制も、それを良しとはしないルール作りをしています。90年代バブルの反省より、国を挙げて不動産の転売で稼ぐのは悪。と決めつけているので、それを成し得ることは容易ではありません。

不動産価格の高騰は抑制される

 日本では、90年代バブルの反省から、不動産価格の高騰に対しては極めて慎重です。たとえば、国土利用計画法による制限があります。

 これは実務上、具体的に何か制限を受けるというわけではないのですが、不動産の高騰や転売はダメですよ。という基本思想が如実に表れている法律です。

 「土地の投機的取引が 相当範囲にわたり集中して行われ、又は行われるおそれがあり、及び地価が急激に上昇し、又は上昇するおそれがあると認められるもの(国土利用計画法12 条)」は規制区域として指定して、売買に際しては「都道府県知事の許可を受けなければならない(国土利用計画法14条)」とあります。実質的な売買制限で す。

 ただし、値下がりを禁止する規定はありません。一方、株式市場では、相場を崩すような売り方は禁止(カラ売り規制)するというルールがあり、値上がりを制限する規則は記憶にありません。対照的ですね。

銀行の慎重な融資姿勢

 銀行に行って「不動産の転売に使うお金を借りたい」「不動産投機に使いたい」と言いますと、どんなお金持ちであろうとも全く貸してもらえません。監督官庁である金融庁の指導で、貸出資金の使途は細かく定められています(実際は銀行担当者の作文である程度の自由は利きますが)

 いくら手元現金が豊富な人であっても、長期的に資産価値を見られる物件であり、かつ通常1~3割という少なくない自己資金を積まない限りは一般の金融機関は融資をしてくれません。この慎重な融資姿勢は、80年代バブルの反省から生まれたシステムと言われています。

 さらに、金融機関のローン審査には、1週間~2週間程度かかるのが一般的で、確定申告書の提出が必要であるなど手間暇がかかります。証券であれば無条件に即日、証券担保ローンを受けることができるのと対照的ですね。

 融資について詳しくは[7-1] 不動産融資の重要性以降の章をご覧ください。

低い流動性

 株式や債券などの金融商品は、市場で売れば4営業日で現金になります。一方、不動産の場合は、買い手を探さなければ、いつまでたっても現金化されません。

 専任媒介契約の法定有効期限が最長3ヶ月ということから考えても、大幅にディスカウントをせずに一般的な市場価格で売ろうとすると、統計的に3ヶ月くらいは見ておきなさいということなのではないかと思います。もちろん、駅近物件などはタイミングが良ければ1週間で売れることもありますが、価格や条件が悪いと1年以上売れない物件というのも多数あります。

 さらに、仮に本日に買い手を見つけたとしても、1週間以内に契約、1ヶ月以内に決済というのが一般的ですので、最短でも1ヶ月はかかります。さらに、契約後にローン特約条項による契約白紙撤回により、契約成立後にキャンセルされる可能性もあります。また、どうしても即金でと言うと、買取業者に市価の2-3割引で買い叩かれてしまいます。

空室リスク

 個人投資家は、空室率を計算に入れないことが多いですが、ファンドや機関投資家は想定空室率を差し引いてNOIを試算します。

 空室率の想定をどの程度とするのがよいのかは、立地条件に完全に依存しますので、一概に何パーセントとは言えません。たとえば、3年に一回テナントが替わり、募集期間は2ヶ月という一般的な代謝を繰り返すだけでも、2ヶ月/36ヶ月=入居率94.4%ですので、多少、条件が悪かったりすると85%以下の入居率は特にめずらしいことではありません。早稲田大学至近の学生向けワンルームという賃貸には困らないであろう場所でも、空室率15%で計算しているファンドがありました。

維持費がかかる

 維持管理が必要な長期投資であるため、漏水修理や原状回復など、さまざまな経費がかかります。また、突発的な修繕など、どこでいくらかかるか予測しにくいのが債券などと違って良くないところのひとつです。

 さらに、大型のファンド物件などでは、修繕以外にも時代のニーズに合わせるためにエントランスの改装、インターネット無料化など、CAPEX(=Capital Expenditure 追加的な資本支出)と言われるバリューアップ投資をして、常に地域で目を引く物件となり得るように追加投資をしています。

諸経費がかかる

○不動産を買うとき

・業者への仲介手数料
・所有権移転登記費用、抵当権設定登記費用等
 

・不動産取得税
 

○購入後

・賃貸時の報奨金(いわゆるAD)
 
 好景気のときは不動産業者も大家さんから手数料は取りませんが、景気の悪いときは大家さんが報奨金を払って業者に客付けを依頼します。2012年12月現在においては、礼金ゼロくらいで渋っていたらテナントが付きません。

○法人化した場合

 法人で不動産を所有している大家さんも多くいます。投資規模が大きくなれば、個人よりも法人の方が税制面で有利です。しかし、法人にした場合、次のような経費がかかります。

・会社設立費用 初回のみ20万円程度
・税理士顧問料 年間40万円程度
・法人税均等割 年間7万円 等
・利益が出れば法人税。利益を誰かに給与や配当として支払って利益圧縮しようとしても受け取る側で課税されます。

○テナントが付いた後

テナントも付いて一段落ですが、その後は下記のような経費がかかります。

・修繕費用(古いビルはこれが結構かかります)
・管理費用(賃料回収管理などのPM費用)
・ビル管理費用(エレベーター点検などのBM費用・ビルメン費用などとも言われます)
・法令遵守費用(消防点検、水槽清掃など)
・火災保険
・銀行への利息支払い
・銀行への営業協力(次回も融資するから、くだらない投資信託や外貨預金を買ってください・・など)
・固定資産税、都市計画税 等

○不動産を売るとき

・業者への仲介手数料
・抵当権抹消費用
・キャピタルゲイン課税

メリットとデメリット=リスクとリターン

 デメリット部分の文章の方が長くなってしまいましたが、逆の言い方をすれば、リスクをきちんと把握して、空室や流動性リスクの管理できる物件を選んで買えば、ハイレバレッジなのにロスカットされない、自己資金比利回り15%を超える安定資産を持つことができるということです。


2013/11/07更新