[3-6] 空き事務所を賃貸マンションへコンバージョン(用途変更)

2014/04/06更新

 最近(2011/06現在)、売りに出ている物件は、店舗や事務所が圧倒的に多く、条件の良い一棟マンション、アパートはほとんど見かけません。同じ都内の似たようなエリアなのに需要のミスマッチが発生しているのは明らかです。

 街を歩けば、空室事務所の募集が目立つようになってきました。また、自社ビル仕様で建てられた賃貸事務所としても使い勝手の悪いビルなども売れ残り気味です。

 このような事務所ビルを賃貸マンション(共同住居)にコンバージョン(用途変更)することはできないのでしょうか。建築士にインタビューしてみました。

「共同住宅への用途変更」というのは、どちらかと言えば、問題はコンバージョンの現地工事ではなく、役所が法律的に用途変更を許可するか?が焦点となります。どのような条件の物件であれば用途変更が可能なのでしょうか。調べてみました。

まず、絶対条件的なもの。下記のとおりです。

1、既存建物図面
 既存図が無いとなると、現況図を作成しなければならず、作成可能なものとそうでないものがあります。現場調査し、図面作成した上でNGとなる場合もあり、費用だけが発生してしまうので既存図があることが望ましいです。

2、確認申請書
 既存建物の「用途」を明確にする意味で確認申請書が必要となります。既存用途が不明の場合、耐震診断等にて建物耐力を調査する必要が発生し、診断結果によりNGとなる場合があります。これについても費用だけが発生してしまいます。

3、完了検査済証
 
完了検査済証があると、上記の確認申請図通りに建物が築造されたということの証明となる為、用途変更手続きがスムーズになります。無い場合については、行政協議となり現況確認等で耐震診断等が発生する可能性があります。

 建築確認(行政確認)を必要とする用途変更はまず無理となるでしょう。 なお、事務所から住宅(共同住宅除く)への用途変更は建築確認を必要としない為、事業主の責任において用途変更可能です。また、ワンルーム形式で事務所仕様というものも見受けられると思いますが、そのような形状であれば用途変更できる可能性はあります。

4、構造計算書
 
積載荷重等が小さいものから大きいものへの用途変更となる場合に必要となります。積載荷重等が小さいもの「事務所や住宅等」から大きいもの「物品販売店 舗・飲食店・倉庫等」に変更する場合はほとんどの場合NGとなります。事務所から住宅の場合は事務所の方が積載荷重が大きいため、基本用途変更可能です。 しかし、設計者としてその裏を取らなければならない為、構造計算書は欲しいところです。

5、構造図
 4と同じ理由となります。構造図が無い場合は積載荷重の小さいものから大きいものへの変更は難しいです。

 つまりは、中小ビルの売買において、必ずといって良いほど紛失されている完了検査済証、構造計算書が必須なのです。これは障壁が高いですね。

 仮にこれらの書類があったとしても、その先にもつまずくポイントが目白押しです。用途変更(事務所から共同住宅)で想定できる懸念事項は下記のとおりです。

6、窓が必要
 
採光上有効な窓でなければなりません。その採光上有効な窓とは何かと説明しだすと大変なので、簡単にいうと道路や空地に面して窓が必要です。事務所の場合、非常照明にて明るさ確保が許されておりますが、共同住宅の場合、居室面積の1/7以上の採光上有効な窓が必要です。

7、換気規定
 居室面積の1/20以上の換気上有効な窓が必要です。

8、階段幅員規定
  1フロア200㎡以上となる場合は階段の巾が120cm以上、蹴上が20cm以下、踏み面が24cm以上必要となります。1フロア200㎡以下となる場合 は階段の巾75cm以上、蹴上22cm以下、踏み面21cm以上が必要となります。その他、2つ以上の階段が必要となる場合や、避難距離不足の為新設階段 設置等の措置が必要となる場合もあります。

9、廊下規定
 共同住宅の場合1フロア100㎡以上で廊下幅員1.2m又は1.6m以上が必要となります。1.2mは片側のみに居室がある場合、1.6mは両側に居室がある場合です。

さらに共同住宅として用途変更する場合には下記のような事項が懸念されます。

10、緑地の確保(敷地面積に応じて緑地を設ける必要があります)

11、駐車場の確保(建物規模等により駐車場附置義務が発生する場合があります)

12、駐輪場の確保
(建物規模等により附置義務が発生します)

13、雨水抑制設備の設置
(敷地規模に応じて浸透桝や浸透トレンチを設ける必要がある場合があります)

14、ごみ置き場の確保
(住戸数に応じてごみ置き場を新設しなければならない場合があります)

15、ワンルーム規制
(計画建物をワンルーム形式とする場合、行政ごとに定められたワンルーム規制を満足させる必要があります。最近では1住戸あたり25㎡以上の面積を求められることが多くなりました。)

16、福祉の街づくり条例またはバリアフリー法の整備(廊下、出入口、ELV構造、身障者用駐車場等において整備する必要がある場合があります。)

 これらについては予算に応じて新設や改良等にてNGをOKとすることもできます。

 また、上記に掲げたもの全てがどの建物にも該当するわけではなく、上記に掲げていないものについても発生する場合があります。東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県等の行政ごとにその指針が異なります。敷地規模、建物規模、住戸数等様々な与件でその条件が変わってきます。築年数が古い建物は近年の法、条例規制に適合していることが少なく、それらの法的整備を求められることが多々あります。

  さらにこれ以外についても多種多様な項目を一つ一つ調査しなければ概要が掴めません。このような理由により、行政調査をしたうえで、計画建物に該当する懸 案事項を一覧として提示してから用途変更の計画を立てることが多いです。(この建築士さんは、建築相談は無料、行政調査等は別途費用とのことです。)

  突然のメールでの問い合わせに対して親切に対応して頂いた建築士さんなのですが、ネットに名前は出さないでほしいとのことでしたので匿名です。なお、彼の 事務所でも物販店舗→遊技場、飲食店→スポーツ練習場等は経験があるが、事務所→共同住居は手がけたことがないとのことです。それだけ条件に合う物件が少 ないということだと思います。

 結論としては、法律を遵守で築古の中小ビルを賃貸マンションにコンバージョンして、空室対策とすることは9割方無理と言うことでした。残念です。法律の改正を待つしかありません。

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