[6-3] 契約実務手順(売買:契約から決済までの流れ)

ここは業者側の視点で流れをまとめています。一般的にこのような流れです。

1.電話での問い合わせが来る

 物件をレインズに掲載して真っ先に連絡が来るのは、エンドの買い主ではなく業者からの転載承諾願いです。大手の一部など、転載承諾を書面で求めてくる業者もあります。

 なお、業者というのは、まず最初に両手取引を考えますので、幅広く広告するよりも身内だけで取引をまとめようとします。これは高値で売却する可能性を狭め、売り主と利益相反となる業界の悪い慣習です。

2.買い主(または客付業者)に資料を送付

・物件所在地の記載されている販売図面

・建物間取り図

・レントロール


・登記簿


・公図


・検査済証の有無

 このあたりを最初に送付します。守秘義務の関係もあり最初からあまり多くの資料が開示されないケースが多いです。大手などでは、詳細はCA(Confidential Agreement NDA: Non Disclosure Agreement とも言う) 秘密保持契約を締結してから詳細開示というケースもあります。2番目に出てくるのは次のような資料です。

・評価証明

 買い手側の立場から言えば、売り主側はあまり多くの情報開示を望んでいませんので、必要な資料があれば具体的な書類名を挙げて依頼することが重要です。

3.現地へ案内

 区分マンションなどの場合は、買い主よりも先に現場入りして、エアコンを付けるor窓を開けるなどします。これをしない と客付けの業者に仕事ができないやつorやる気がないと思われます。先に一通り自分で物件を確認してから、買い主へ説明をします。次のような事項を説明し ます。

・売り主所有物の残留物

・家具や付帯物のどこまでが売買に含まれるか

・屋上の防水工事状況(雨漏り対策)

・電気、水道、ガスの状況(オール電化か否かなど)

・既知の瑕疵

・売主の売却理由(適当で良い)

4.買付証明書

 買い主に買付を入れてもらいます。買付用紙はFAXでやりとりすることが多く、通常、原本は求められません。元付業者は買付証明を売主に持って行き、どんな属性の買主なのかを説明します。この際、売主に対して価格交渉をまとめるのも元付業者の仕事です。通常は、元付業者と売主の交渉は電話ではなく対面で行われることが多いようです。一度、顔を見ておいた方が、よくわからない業者という立場ではなく、取引先と認知してもらえる。という心理的な理由が主だと思われます。

 なお、建物価格をいくらにするかはトラブルになりやすい要素です。買付の際、無難に「土地建物価格は評価額按分にて」などと書いておけば面倒を回避できると思われます。

5.賃貸契約書の送付

・テナントとの賃貸契約書

 賃貸契約書、通称、賃契(ちんけい)は個人情報が満載の書類で、分量が多い(数ページ×部屋数分+契約更新書類)ため、通常、賃契は買付を入れた後でなければ出してくれません。

6.契約書、重要事項説明書作成と資料用意

契約書、重要事項説明書は通常、元付業者側で作成します。なお、元付業者側で重要事項説明書が予め作成されていることが希にあります。このようなケースでは、すでに誰かが契約を結び、ローン特約で白紙撤回された可能性が高いです。なお、元付業者が契約書、重要事項説明書を作ることが一般的というだけで、大原則は、元付、客付が共同(責任も労力も半分ずつ)で仲介することになっていますので、客付だから何もしなくて当たり前という態度だと元付に嫌がられます。

7.契約日を決める

 契約日は、元付業者が零細仲介業者なら買付を入れてから2~3日(重説の完成度よりスピード優先なので)、元付が大手の場合できちんと調べる場合でも買付受領後1週間程度で契約が一般的双方の気が変わらないうちにというのが基本です。中には、ローンの確約が取れてからでないと契約しないという売主もいます。

8.契約書と重要事項説明書の確認

 チェックすべきポイントこちらのページに書きました

9.売り主、買い主の双方に契約の手順を伝える

 通常は、売り主、買い主の双方に当日持ってきてもらう物のリストを送ります。

買主への契約当日のご案内例

【日時】 平成24年6月26日(火)13時

【場所】 大手不動産業者 池袋営業部
TEL:03-XXXX-XXXX FAX:03-XXXX-XXXX
170-0013 東京都豊島区XXXX XXXXビル

【当日のお持ち物】
株式会社XXXのご実印、会社名スタンプ、XXX様の運転免許証、手付金とし て現金1,000万円、収入印紙80,000円分、当社仲介手数料半金XXX円

売主が契約当日に持参すべきは下記の通りです。
・会社実印、会社名スタンプ、会社登記簿謄本、社長の運転免許証、手付金領収書、同領収書への印紙、仲介手数料半金

また、下記は当日見せるだけですが持参を要求されることもあります。権利書(登記識別情報通知)原本、確定測量図原本、隣地境界立会原本、賃貸借契約書原本

10.買い主に預金小切手または現金を準備してもらう

 手付金の金種(小切手でいくら・現金でいくら・振込でいくら)などは仲介業者経由で売主が指定します。売り主と買い主の 捺印日に時差があるケース(契約日に顔を合わせない、持ち回りと言われる契約の方法)などは、手付金を不動産業者に一時的に預かってもらい、契約が締結さ れたことを業者が確認した上で、業者から売り主へ振込をすることもあるようですが、通常はそこまではしません。物件の売買価格よりも抵当権残債の方が多い 場合には、売主は債務超過と見なして、手付金は仲介業者が保全することもあります。

 なお、売主が業者の場合、手付金が5%以下であると 宅地建物取引業法第47条第3項で禁止されている「契約の締結を誘引する行為」(手付金を少なくして契約をしやすく仕向けること)に該当するという見解が あり、大手不動産業者では、あまりに少ない手付金だと受け付けてもらえません。

 契約に必要な印紙は買い主/売り主の負担ですが、忘れてこられると面倒なので、収入印紙は業者側で用意して、現金で印紙代をもらう方が賢明でしょう。

11.契約当日

買い主に持参してもらうものは、

・個人実印(法人の場合:会社実印)

本人確認書類(法人の場合:会社謄本のコピー)

・手付金

仲介手数料半金

印紙代実費

場所は仲介業者の事務所で行うのが一般的です。

売り主に持参してもらうものは、本人確認書類、実印、印紙です。

契約の当日、引渡を行う書類は

□重要事項説明書

□契約書

のほかに

□登記簿謄本

□公図

□住宅地図コピー

□地積測量図

□建築確認済証

□検査済証

□水道ガス配管(区分所有以外の場合)

□竣工図※

□土地筆界確認書(民民-あれば)※

□境界確定協議書(官民-あれば)※

□固定資産評価証明書

□物件状況報告書(書式は任意)

□私道協定書※

□テナントとの賃貸契約書※

□売り主が法人の場合は登記簿謄本

□消防用設備等(特殊消防用設備等)点検結果報告書※

□道路台帳図
など物件により異なります。※の書類はコピーを契約時に交付、原本の授受は決済時となります。

これ以外のおまけ書類として、次のようなパンフレットを役所で取得して買主に交付すると、書類に厚みが出て格好が付きます。(北区の例)

・うるおいのあるまちづくり

・狭あい道路拡幅整備要綱

・北区中高層建築物紛争予防条例のてびき

・緑化計画書作成の手引き

・東京都北区集合住宅の建築及び管理に関する条例

・共同住宅・店舗・飲食店・ホテルなどを建築される方々へ

・北区居住環境整備指導要綱

・雨水流出抑制施設設置に関する指導要綱

・北区自転車駐車場の設置等に関する指導要綱

・集合住宅等の建設における資源保管場所設置の手引き

・東京都北区都市景観づくり条例のあらまし

・東京都北区遺跡地図

・東京都北区洪水ハザードマップ

12.契約から決済まで

 買主と金融機関で融資について調整してもらいます。仲介業者は本当に融資が出るかを確認します。

 融資が決まれば司法書士を決めます。通常は、買主の任意で自分の好きな司法書士を選べますが、金融機関によっては指定の司法書士利用必須となっていることもよくあります。

 契約後に測量と境界確定をすることもあります。通常、その費用は売主負担ですが、話し合い次第です。境界未確定の現況有姿で売却することも双方の同意があれば差し支えありません。

 司法書士には、契約書(融資条件の確認、および登録免許税減税に関係するため投資か自宅なのか用途を確認)と固定資産税評価証明(登録免許税計算のため)を先に送っておきます。登記の際には、評価証明の原本が必要となるため、売主側業者は評価証明原本を用意します。

13.決済の案内

 売主、買主へ決済の当日に持参してもらう持ち物を案内します。

買主へ送るメールの例

■日時 平成25年X月XX日(月)午前11時
■場所 ○○銀行 ××支店1F(東京都中央区××1-2-3)
■お持ちもの 運転免許証、会社名スタンプ、会社実印、200円の収入印紙2枚(領収書用)
司法書士への報酬及び登録免許税XXX円、当社仲介手数料半金XX円

14.決済日

 売り主、買い主、司法書士、銀行(融資付きの場合)、売り主側業者、買い主側業者の立ち会いの下、次の事項を行います。場所は、買主が借入をする金融機関であることが通常です。

 決済は、持ち物忘れや万が一のトラブルに備え、午前10時くらいの早めの時間帯からスタートするのが一般的です。理由は、何かトラブルがあった場合、銀行が閉まる午後3時までに回復しなければならないため、余裕ある時間設定をする必要があります。

残代金の支払い

固定資産税、都民税、管理組合費の日割り精算

敷金、保証金の引き継ぎ

・仲介手数料残額(半金)の支払い

登記に必要な書類の引渡(司法書士による所有権と抵当権の登記)

鍵の引渡

残代金の支払い
 銀行振込の場合、詳しくは分かりませんが、センター経由ではなくて支店に直接送金という指示を銀行員にするとするとすぐに着金するようです。いずれにしても15時までの着金が必須となります。

固定資産税、都民税、管理組合費の日割り精算
  固定資産税、都民税(通称:古都税【ことぜい】)の精算と区分所有の場合、管理組合費、修繕積立金の精算も行います。税額は、納税通知書を参照して、前年 度の固定資産税・都市計画税額の実金額を取得します。決済当日は買い主負担として、365日で日割り計算します。古都税は1月1日現在の所有者へ請求が行 くので、通常は買い主から売り主に対して清算金の支払いが発生します。マンションなどで管理費・修繕積立金がかかる物件の場合は、同様のルールで管理組合 費用も按分します。

 なお、消費税基本通達10-1-6により固定資産税・都市計画税清算金には消費税が課税されます税 金に消費税が課税されるのは納得いかない気もしますが、大手仲介などではこの通達は守られていて、固都税の日割清算金が10万円であれば、買主は 105,000円を支払わなければなりません。中小の業者では、このルールを知らないか、買主の機嫌を損ねないために無視しているかで、消費税を計算しな い仲介もあります。

敷金、保証金の引き継ぎ
 敷金は、通常、売 買代金と相殺(売買代金-敷金引継ぎ額=授受代金)とします。償却のある保証金、たとえば、保証金3ヶ月のうち、2ヶ月はテナント退去時に敷金と同じよう に返金するが、残り1ヶ月はオーナーがもらう契約となっていケース。このような場合は、償却する1ヶ月分については、保証金としては引継ぎをせず、売却時 に売主がもらってしまう(保証金と敷金総額-償却分=実際の引継ぎ分)ケースがほとんどです。ただし、この取り決めは自由契約ですので、必ずしもこのよう にする必要はありません。

登記に必要な書類の引渡
 通常、現金購入の場合、買い主または買い主側の業者が司法書士を用意します。ローンにて購入の場合は、銀行指定の司法書士となるケースが多いです。

  司法書士への支払いは、決済日当日に現金にて行われます。売主から賃料の清算金をもらえることが通常ですので、売主からもらった現金を司法書士への支払い に充当しても良いでしょう。時に、司法書士への現金の支払いが数百万円となることもあり、司法書士は、さぞかし儲かるのだろう。と勘違いすることもありま すが、司法書士の預かる金額のほとんどは登録免許税であり、彼らの報酬は10-20万円だけです。

鍵の引渡
  売り主はコピーした鍵も含めてすべて引き渡します。買い主は鍵の受領書に署名。トランクルーム、駐車場など部屋の鍵以外もある場合は一緒に引き渡します。 マンションの場合、管理組合への所有者変更通知、ポストの鍵番号、ホームセキュリティのパスワード、フルタイムロッカーのパスワードなども引き継ぎを行い ます

ローンで購入の場合
 決済は、ローンを出す金融機関にて行います。通帳に金融機関から融資額が入金され、入金と同時に売り主 への支払いに充てられます。フラット35などフルローンが出る融資制度の場合は、借入額-(融資手数料+支払い済みの手付金)の差額が買い主の通帳に残る ことになります。

15.飲み会

 決済が終わると中小の業者は、買主/売主を接待したりします。大手ではやりません。ここで接待をしておいた方が、仲良くなれるので、統計的にあとで文句を言われる確率が下がるのかもしれません(?)

16.司法書士が抵当権設定と所有権移転を行う

 抵当権設定(借入で買う場合)と所有権移転を司法書士に依頼します。細かい設定オプション的な要素はなく、どこに頼んでも同じ結果になる仕事です。

 手続きとしては、買い主が委任状など何カ所かに実印を捺印するのみです。司法書士への費用は一般的な1億円以下の売買、抵当権設定含む所有権移転登記で15万円以内が相場でしょう。

 司法書士への報酬より登録免許税が高く、登録免許税は、評価証明書の評価額(売買価格ではない)に対して、次のように計算します。

登録免許税=土地評価額×1%(平成23年3月31日まで)+建物評価額×2%
※投資物件など軽減措置が適用にならないケースの場合。自宅用では、住宅用家屋証明書を取得することにより、登録免許税の軽減措置があります。

 かなりざっくりですが、経験上、都心に1億円の自宅用マンションで20~30万円程度、2億円の投資用ビルで200~250万円程度です。軽減措置の関係で、用途により税額が異なります。

17.登記が完了

 1週間ほどで登記完了証(抵当権)登記完了証(所有権)登記識別情報通知の3通が発行され、司法書士から書留などで郵送されてきます。

  登記識別情報通知には、一度はがすと分かる仕掛けの目隠しシールが貼ってあり、所有権を移転させるために必要なパスワードが記されています。なお、この通 知を紛失した場合でも司法書士が本人確認をして、有者本人であることを確認し、その証明書類を作成すれば所有権を失うことはないとのことです。

 なお、現金で購入して後から抵当権を設定するなどした場合、登記の際、所有者から司法書士に登記識別情報通知を預け、司法書士が目隠しシールをはがし、抵当権設定登記を行った後に、別のシールをかぶせ封印を押すというケースもあります。

18.税務署へ報告

 不動産取得税の徴収にともない、購入者は土地、家屋の所在地を所管する都税事務所への申告が必要です。取得した日から 30日以内に申告することとなっていますが、東京都は仮に申告しなかったとしても税務署と登記所のデータが連携しており、自動的に捕捉されることになって います。都税事務所へ問い合わせたところ、みんながやっているかどうかは別として、それでも決まり上は取得した日から30日以内に申告することが必要なのだそうです。
http://www.tax.metro.tokyo.jp/shisan/fudosan.html


2013/11/07更新