[6-4] 売買契約書と重要事項説明書のポイント

契約書のポイント

【必ず確認すべき点】

・土地権利が所有権か借地権か

・土地建物価格の按分

・手付金の金額

・決済期日

・手付解除期日

・違約金が売買代金の何パーセントか(個人は10~20%、業者間は20%が相場)

・融資特約期日
・瑕疵担保責任の期間

【基本的な書式】
 FRK(一般社団法人 不動産流通経営協会)書式、全宅連(公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会)、全日(全日本不動産協会)など、いくつか書式を提供している団体がありますが、内容はどこでもほとんど同じです。

当社の加盟している全宅連書式の契約書でチェックしておくべきポイントは次の通りです。どちらかというと作る側から見たポイントです。

1.「買主は、銀行融資を得るために金融機関に提出した融資申込書の写しを売主に提出すること」という規定。この条項は、個人情報に配慮して特約で無効化した方が良いです。

2.ローン特約は、標準書式では金額についての制限しか規定されていないので、ローン期間や金利が条件通りに出ないことを理由に白紙解除をしたいならば、特約に入れなければなりません。

3.境界を明示することが書式中で謳われていますが、境界未確定売買であれば特約が必要です。

4.物件状況報告書(告知書)と付帯設備表を作成すると規定されていますので、作成しない場合は特約が必要です。

5.印紙は売主と買い主が平等に負担すると規定されていますので、売主は契約書コピーで良いので買主に印紙代を負担させたいという場合は特約が必要です。

重要事項説明書の特約によくある内容

昭和62年5月14日 東京地裁判決 昭61 (ワ) 8498号(土地売買契約書は著作物ということはできない)
とのことで、いろいろな重要事項説明書から、よくある文言を抜粋してみました。

★の数=重要度です。

・容認事項について★★★

買主は不動産売買契約書案第XX条(担保責任)の規定にかかわらず本物件につき以下の事情が存することを了承し、その事情が存する状態でこれを買い受けます。

・景観法

一定の土地面積及び一定の高さ以上の建築物、工作物の新築、改築、若しくは移転、外観を変更することとなる修繕若しくは模様替又は色彩の変更を行おうとするものは、あらかじめ市長に届け出なければなりません。詳細ついては、添付資料「川崎市都市景観条例」をご参照下さい。

・都市ガスが来ていないのでオール電化★★★

本物件の北側前面道路に都市ガス本管が配管されていません。そのため本物件には都市ガス管は引き込まれておらず、本物件は、オール電化となっています。本物 件にて、ガス利用機器を設置する場合にはプロパンガス販売業者とプロパンガス供給契約を締結のうえ、供給設備等の設置工事が必要となり、費用が生じます。

・町内会

本物件が存する地域においては、××町内会(町会費:¥200.-/1世帯(月額))が組織されていますが、加入は任意です。

・屋外広告物条例

川崎市では屋外広告物の表示および掲出する場合等について、その規模、用途により川崎市屋外広告物条例による規制を受ける場合があります。屋外広告物の許可 区域においても、屋外広告物を表示する場合等は、原則として知事の許可が必要です。詳細については添付書類「川崎市屋外広告物条例」をご参照ください。

・新宿区細街路拡幅整備条例

対象不動産前面道路は、新宿区細街路拡幅整備条例に基づく細街路に該当するため、対象不動産にて建築確認申請等を行う場合は、同条例に基づく区長との事前協議が必要となります。別添「新宿区細街路拡幅整備条例」、「協議手続きの流れ」をご覧ください。

・建築基準法第22条第1項

川崎市全域が建築基準法(昭和25年法律第201号)第22条第1項の規定による区域に指定されており、屋根に不燃材料等を、外壁等の延焼の恐れがある部分 に準防火構造を使用する等の規制があります。詳しくは、添付資料「建築基準法第22条区域規制について」をご参照下さい。

・暴力団排除条例

神奈川県暴力団排除条例は、暴力団が県民の生活や事業活動に介入し、これを背景とした資金獲得活動によって県民等に多大な脅威を与えている現状にかんがみ、県民の安全かつ平穏な生活を確保し、事業活動の健全な発展に寄与することを目的に施行され、概要については下記のとおりです。(以下略)

・洪水ハザードマップ

川崎市では、「多摩川・鶴見川洪水ハザードマップ」が公表されており、本物件周辺は、概ね200年に1回程度起こる大雨が降ったことにより、多摩川が氾濫した場合に想定される浸水の状況をシュミレーションをした場合において、浸水深1m~2m未満の区域に該当しています。(詳細については添付書類「多摩川・鶴見川洪水ハザードマップ」をご参照下さい)

・液状化危険度分布図

川崎市発行のの液状化危険度分布図によると、本物件周辺は「液状化危険度が極めて低い地域」に指定されています。詳細については添付書類「川崎市液状化危険度分布図」をご参照下さい。

・ライフラインの配管が第三者敷地を経由している★★★
・前面道路に水道が来ておらず露出菅を使って違うところから運んできている★★★
・各居室内に洗濯機置き場のない間取り★
・女性限定賃貸物件★★
・隣地から構造物が越境している
・隣地境界の万年塀やフェンスの所有権が不明
・津波防災地域づくりに関する法律
・建ぺい率、容積オーバー★★★
・車庫は容積不算入措置を受けているので他用途に変更できない
・セットバックと隅切り★★
・文化財保護法に定める試掘調査が必要な地域
・給水設備の名義変更が必要→給水装置所有者名義変更届(様式)を参照
・擁壁の安全性について東京都建築安全条例

-暇なときに追加予定-

重要事項説明書のポイント

【買主として見ておくべき点】

・建ぺい率と容積率が法令の範囲内か

・法律に違反しているカ所はないか

・既存不適格はないか

・境界が確定しているか

・竣工図、構造計算書、建築確認、検査済証、隣地境界立会書があるか

・公簿売買か実測売買か

・月額維持費がいかほどかかるか

・解約ペナルティのある契約(インターネットや機械警備など)はないか

【契約の承継】

  賃貸の女性限定募集、コインランドリー設備のリース契約、セコムの契約、セコムが緊急通報する際に利用する電話回線契約、防犯カメラリース、防犯カメラの メンテ契約、ケーブルテレビ、インターネット無料化を提供する業者のルーター等設備のリース、同業者の月額費用、Bフレッツなど光ファイバー利用料など を、通常は買主が承継します。

 それぞれ、月額いくらかかるか、解約ペナルティはいくらか。契約主体は売主か管理会社か、などを調べないと後で必ず面倒な事態となり、仲介者責任を問われると思われます。

【売主の現住所】

 売り主の現住所と登記簿上の住所が異なる場合は、売り主の負担にて更正登記(正しい住所に変更する登記)をしてもらう旨を契約書の特約に定める必要があります。実務的には決済時に買い主側の司法書士が所有権移転登記と同タイミングで更正登記を行うケースが多いです。

【購入名義】

  購入名義人は、個人単独、個人共同(旦那のみか奥さんとの共有名義か?)、法人のいずれとなるかの確認。なお、共同名義は、手続きがややこしいのみで、あ まりメリットはないですが、たまに記念に二人の名前を登記簿に残したいという人もいます。うまくやれば住宅ローン控除を夫婦で受けられるケースもあるよう です。一番良くあるのは、旦那の年収だけではローンを組むのに足りないため、奥さんの収入も合算したいために共同名義にするというパターンでしょうか。

共有名義と共有持分のポイント 〔前編〕
http://allabout.co.jp/r_house/gc/25731/
共有名義のメリットとデメリット
http://allabout.co.jp/r_house/gc/25726/3/

【売主が非居住者】

 これは面倒です。司法書士はサイン証明(印鑑証明的なもの)を取得したりする必要があり通常よりも時間がかかります。また、売主が非居住者の場合、買主が受け取った手付金と決済時の残代金から10.21%(復興税込み)を源泉徴収して、受け取った翌月10日までに買主が納税する必要があります。手付金を受け取った月の翌月、残代金を受け取った月の翌月、と2回納税の必要があります。

 売主が複数(共有持分)で、1名だけ非居住者などという場合、その1名の持分比率に併せて非居住者への支払金額も按分となりますので、按分された金額に対して10.21%を源泉徴収します。

 これは普通の買主は知らないので、重説に記載すべきでしょう。

【川崎市の場合】

 市内全域が建築基準法第22条1項の指定区域です。これは防火耐火関連の規制で、どうでも良い内容ですが記載は必要です。川崎市(や横浜市)で水道を新規に引く場合、水道加入金として1戸あたり15万円以上かかります。なぜこんなに高いのかは不明です。東京23区では水道加入金はかかりません。あまり戸数が多いマンションを新築する場合などは、重説に書かれていないと、後で数百万円単位で買主は想定外の費用を支払うことになってしまいます。

【土地と建物の価格比率】

  投資用物件の場合、重要になってきます。契約書の建物価格に基づいて税務上の建物残存価格、及び消費税額(土地には消費税が課せられないため)が決まるの で、買い主が取得した後の減価償却にも影響してきます。建物価値が大きければ減価償却で損金にできる金額が大きくなるので買い主は建物価格を大きくしたい のが一般的です。一般的には、都税事務所が発行する評価証明の土地固定資産税評価額、建物評価額の比率をもとに土地建物価格を按分(通称、土地建物価格は 評価額按分と言われる)します。

 よく、売買価格-土地固定資産税評価額=建物価格にしたい。という人がいて、実際多く行われているのだと思いますが、2013/07/31に税務署の電話相談に聞いたところ、その建物価格の求め方はダメだと言っていましたが真偽は不明です。

【仲介手数料受領時の注意】
  仲介手数料を満額受領する場合、建物にかかる消費税は除外して手数料の計算をする必要があります。例えば、土地+建物=5,000万円(うち建物消費税 100万円)の場合、(売買価格5,000万円-消費税100万円)×3.15%+63,000円が法定上限の手数料(税込み)となります。上限以下であ れば、顧客との話し合い次第で5,000万円×2%にしましょう。などとすることに問題はありません。

重要事項説明書のポイント

[区分所有]

・駐車場(車の大きさ制限、台数)、駐輪場、バイク置き場(詳細を管理組合に確認)

・ペットの可否と種類、何匹まで可能か。(近年はペットのトラブルが多いので詳細まで確認)

・管理費、修繕積立金の特別徴収及び値上げ予定

・自治会費の徴収

・住宅用防災機器の設置義務があり、新たに設置する場合は買い主負担であること。

・家具や付帯物(エアコンなど)のどこまでが売買に含まれるかの明示。

[一棟物件]

・越境物

・心理的な瑕疵

・私道の権利関係

・売主の負担で再測量を行うのか、既存の測量書類を引き継ぐだけなのか

・瑕疵担保責任の期間(売主が業者の場合は2年間の瑕疵担保責任法定義務あり)

・東京電力やNTTが敷地内に設備を置いている場合、敷地利用と設備メンテ契約引継ぎ

・ケーブルテレビなどの月額利用料(通常1,000~3,000円程度/月)

・売主が自己使用している場合、所有権移転後に転居するのか

・建築基準法上の違反(建ぺい率・容積率オーバー)はないか

・既存不適格(再建築時には同じ大きさの建物は建ちませんなど)

・狭あい道路(接道4m未満でセットバックが必要な場合、それを明示)

□大手作成の契約書・重要事項説明書でも入念なチェックが必要

  通常は、作成者側が有利になるように作ってあるため、契約の相手方は、事前に内容を確認する必要があります。大手でも会社によっては、コンプライアンス部 などのチェックを通さず、担当者レベルのみの確認であるケースもあり、必ずしも正しい契約書、重要事項説明書になっていないケースもあるため、大手だから と言って安心はできませんが、中小零細の作成した書類はもっとあてになりません。

□契約を自己都合で違約とした場合、仲介手数料は返金されない

 財団法人不動産適正取引推進機構のWebによれば、契約後に自己都合で違約(ローン特約によるものを除く)、手付金を没収となった場合、仲介業者へ支払った仲介手数料は戻ってくるのか?という質問があり、原則的には戻ってこない、判例によれば仲介手数料は半金のみで全額の支払いまでは認めないケースが多いとありました。つまり、契約後に自己都合でキャンセルした場合、契約時に支払った仲介手数料の半金は戻ってこないのが通例です。
http://www.retio.or.jp/info/qa7.html

□契約の直前に媒介契約書
 客付けの不動産会社に対して、契約時に一般媒介契約書仲介報酬支払契約書などを提出することもあります。本来は、買付の前に行うべき契約ですが、良いか悪いかは別として、業者の中には契約と同時に後から媒介契約書を作るケースもあります。この契約が買い主から業者へ手数料を支払う根拠となります。また、一般媒介で契約しておけば、契約情報をレインズに登録しなくて済む(このような契約方法が公式に認められているかは不明です)ことになっています。

□売り主が中小業者の場合
  印紙代節約のため「当方の契約書はコピーでよいです。そのかわり契約書に貼る印紙代は買い主で負担(もしくは折半)してください。」と言われるケースもあります。法律的にも税務的にも、契約書の効力としても問題はなく、業者から見れば印紙代数万円が浮きますが、あまりかっこよくはありません。

□雑談での注意点
  契約の際に売り主、買い主が顔を合わせ、中には物件について「老朽化しているのは分かっているから細かい設備の瑕疵は追求しない」「付帯設備についての瑕疵は免責だが、この機器は付帯設備に含まれるのか?」など、雑談を交えて話し合うこともありますが、これは後でトラブルや訴訟になった場合、発言が訴訟、 調停などの場で引用される可能性もありますので注意しましょう。

□決済日(受渡日)を変更する場合
 決済日変更に 関する覚書を作成し、仲介業者が売り主、買い主の双方に印鑑をもらいます。ただし、本来的には当初約定した決済日以降の日程を指定することに対しては、相手方は拒否する権利があり、決済日を過ぎる場合は債務不履行を指摘される可能性があります。また、通常、契約書上の決済日はデッドラインとなる日程を指定 されることが多く、実際の決済は、決済予定日よりも前倒しで行われます。

 なお、売り主によっては、スポンサー投資家やノンバンク金融機関(アサックスなど)からの借入で物件の購入費用を賄っており、それらの金主に対して資金回収予定を約束しているケースがあるので、スケジュール変更には 簡単に応じてもらえないこともあります。決済日の変更を拒否して違約金を請求することも法的に問題ありませんので決済日変更には注意しましょう。

司法書士業務のポイント

□売主または買主が外国人、共同所有の場合

これは司法書士業務に一手間増えます。事前に伝えましょう。売主が非居住者の場合は、現地の領事館が認証したサイン証明やら何やら、特別な手続きがあります。

□本人確認書類
本人確認資料には、1号書類・2号書類・3号書類というカテゴリーがあり、

1号書類 顔写真付の公的な証明書(パスポート・運転免許証・住民基本台帳カード)

2号書類 顔写真がない公的な証明書(健康保険証等)

3号書類 公的でない証明書(公共料金明細書等)

と分かれています。1号書類がない場合は、2号書類を2つ以上か、2号書類+3号書類が必要というのが司法書士団体の統一見解です。なお、免許証の住所が古いままであるというような場合は、住民票(一つ前の住所まで表示)もしくは、戸籍抄本の附票(過去すべての住所を表示)の提出が合わせて必要です。

□印紙代の金額
平成23年6月30日までの間に作成される契約については下記の印紙が必要です。

 記載金額  税額
 1千万円を超え5千万円以下のもの  15,000円
 5千万円を超え1億円以下のもの  45,000円
 1億円を超え5億円以下のもの  80,000円
 5億円を超え10億円以下のもの  180,000円
 10億円を超え50億円以下のもの  360,000円
 50億円を超えるもの  540,000円

2013/11/07更新