[7-8] 不動産投資ローン(融資の裏側)

 不動産と融資というのは切っても切り離せない関係で、どんなお金持ちでも不動産を買うときにはお金を借りるのが普通です。 借入を起こした方が有利な投資ができるからです。

 しかしながら、立ち上げたばかりの不動産業者など、銀行など一般の金融機関からは借入を起こせない立場の人も世の中には多く、「転売をして儲けたいが軍資金がないので貸してほしい」「良い話があるので一口出資しないか」など、たくさんの話が持ち込まれます。提案書一枚と他人の資金、さらには他人のリスクで金儲けを企む人の多さに驚きます。具体的にどのような話が聞かれるのか、いくつか例を挙げてみましょう。

買取屋の資金調達源

 一口に不動産屋と言っても種類はいつくかに分かれて、仲介専業、建売屋、底地屋買取屋(転売屋)などいろいろな業態があります。

  いくつかある業態の中の一つが買取屋です。緊急にお金が必要なエンドユーザーや売却の事実を公にしたくないような物件(例えばお年寄りが近所に内緒で売り たい、差し押さえ寸前なので内々に売りたいなど)を即金で買い取る会社です。市場価格の3-4割引というのが一般的でしょうか。それをリフォームして市場 価格で転売します。リフォームすらせずそのまま転売するだけのケースもあります。

 ところで、こういう人たちは一体どこから数千万円の現金という買取資金を調達してくるのでしょうか。 疑問に思いますよね。

 よくあるのが不動産業者向けの融資会社、アサックス、新生プロパティなどから借りて購入するというパターンですが、金主と呼ばれる個人のお金持ち(日本人でないケースも良くある。暴力団というわけでもない。)から年率20%くらい(?)で資金を借りて事業を回すというパターンがよくあります。

 創業して日が浅く、買取転売を生業とする会社に大手の金融機関は貸出をしませんので、このような金主からお金を出してもらって買取屋は事業を回すわけです。

つなぎ資金需要に応えるスポンサー

 金融機関によっては、先に物件価格の全額をキャッシュで支払った後でなければ融資できないというようなケースもあります。ここで登場するのがつなぎ資金 です。日本では制度上、つなぎ資金を融資できるような金融機関がないので、個人のお金持ちが貸金業として融資を出しているケースもあります。だいたい貸金 業法で規制している以上の金利を取るのが普通のようです。

 つなぎ資金需要はいろいろなところでありますで、ファンドを組成して融資してあげたりするとビジネスになるのではないかと思います。

 不動産業を創業するときは、個人のお金持ちにスポンサーとして入ってもらえるか否かというのが成否を分けるようです。創業当初から何千万も自己資金で拠出できるという人はいませんので。

融資担当者に顔の利く税理士

 銀行の融資担当者は、地元の名士である税理士や業界では名の通っている会計士という人からお客さんを紹介してもらうことがよくあります。当然、そのよう な力のある税理士経由で銀行を紹介してもらえば、融資も通りやすい、というよりは、通常では断られてしまうような話さえもすんなり通るということです。

 国の機関や大手の銀行から零細信金まで、顔が利くという人は必ず存在しています。

 そのような顔が利く人経由での融資申し込みというのは、だいたいコンサル料(謝礼金)が融資金額の1%程度。この1%を支払ってでも借入を起こしたいという人はたくさんいまして、融資あっせんとセットで物件の売買をするような業者は安定的に顧客をつかめているようです。

 当然、その税理士から融資担当にも何らかの見返りはあるものと推測されます。かなりグレーゾーンですが。

 不動産は古くは需給が価格を決めていましたが、最近は融資の可否がマーケットを作っていると言っても過言ではありません。ローンさえ付けば、買いたいと思っている人はたくさん居るので、融資のあっせんに価値があるのです。

 なお、政策金融公庫の創業融資あっせんを生業にしている税理士や行政書士もいるようですが、政策金融公庫については、よほどビジネス初心者で、自社の決算書の見方がよく分からない、というような会計知識ゼロの社長以外は、政策金融公庫の融資申込は他人に頼まずとも一人でできる内容です。それほど面倒でもありません。政策金融公庫の斡旋でも0.5~3%程度のフィーを抜く士業の事務所が多いのですが、これに頼む必要はないでしょう。

書類の偽造

 これは明らかに刑法に違反する行為です。焦げ付いたとき、調査が入ったときなどに私文書偽造が発覚する可能性があります。しかし、銀行も偽造であることを知っていて受け付けているケースもあるとも聞きます。

 下記の事件でも「金額の上乗せは当然」と言っていることから、金額の改ざんは日常的に行われていることが推測されます。

銀行から3億8000万円詐取容疑 田園調布在住の男逮捕
2011.6.28 22:58

 不動産購入とマンション建築資金の融資名目で銀行から現金3億8000万円をだまし取ったとして、神奈川県警海老名署は28日、詐欺と有印私文書偽造・同行使の疑いで、東京都大田区田園調布、自称不動産業、XXXX容疑者(36)を逮捕した。

 同署の調べによると、契約金額を水増しした不動産売買契約書と工事請負契約書を偽造。契約書が本物のように装って銀行の担当者らに提出し、平成18年9月に銀行から現金を振り込ませた疑いが持たれている。

 返済が滞ったのを不審に思った銀行が調査し、21年11月に告訴した。同署によると、XXX容疑者は現金を振り込ませた事実は認めているが、「金額の上乗せは当然で、だまし取るつもりはなかった」と供述しているという。

  一番、悪かったのは、某銀行の担当と組んで業者が中間省略で間に入り、契約金額を偽造して1億円程度の物件にオーバーローンを出させたケース。自社売主の 物件(2,500万)で住宅ローンでオーバーローン(3,000万)を出させて、手元に残ったお金(500万)を頭金としてもう一件の違う物件を買わせて いた話を聞いたことがあります。なお、自社売主の物件は数百万の利益が乗っている割高物件で業者にはうまみがあります。これらは業界では「書き上げ」と呼ばれ古典的な手口のようです。当然ですが、これらは刑法に違反する行為です。当社では取り扱っていません。

借入照会

ローン審査のときは、借入状況データベースシステムを金融機関が共有していて、それを使います。

 借入と返済実績のみならず、どの銀行がいつ、あなたの履歴を照会しました。という照会記録も一定期間保存されるので、あまりたくさんの銀行に融資を申し込んだり、あるいは消費者金融に借入相談をしたりすると怪しまれます。

 しかし、最近では、多くの金融機関に問い合わせをして最も条件の良いところから借入を起こすという方法も一般的になってきたので、実際に借入を起こさない限りは(照会だけならば)それほど神経質にならなくても良くなってはきているようです。

そして、基本的な銀行融資の内情についても重要な点を下記に説明します。

銀行融資の仕組み

 下記は、すべての民間金融機関に共通の基本原則です。覚えておくと、銀行がなぜ貸してくれるのか、貸してくれないのかを理解する参考になります。

□なぜ銀行は債務超過の会社には融資しないか

 2期連続赤字や債務超過は金融庁の貸出先分類による要注意先に分類され、銀行側が引当金を積まなければならなくなります。つまり、債務超過や毎期赤字の会社へ貸出をすると自動的に銀行のバランスシート(自己資本比率)が痛むので、銀行からすると貸す理由のない取引先となります。そのような取引先は、いくらキャッシュを持っていても貸出を受けることは困難です。銀行の自己資本比率については不動産とはあまり関係ありませんが、Wikipediaのこちらに説明があります。

□なぜ銀行は不動産融資をしたいのか

 銀行には金融庁より中小企業への融資ノルマが課されるのですが、不動産投資目的の資産管理会社のような実態のない会社も中小企業扱いになるそうで、同じ中小企業でも担保を取れる分安全性が高くロットも大きいので取り組みやすいとのことです。[7-1] 不動産融資の重要性 にも書いたように、「100万円の無担保融資を返してもらえるかどうかも分からない零細商店に100件重ねるよりも、1億円を物件担保付きで不動産融資を1件にした方が楽」なのです。

□支店決済できる金額をつかむ

  どの民間金融機関も、金額が大きくなると仕組み上、本部決済という行程が必要になってきます。その場合、間に入る人が増えるわけですから、まず途中の段階 で、そこまで積極的に取り組むべき顧客ではないのでやめておくとか、支店としては積極的に上申したけども本部でNGを出されたというような面倒が発生しま す。支店内だけで決済できる金額を教えてもらって、その範囲内で融資を申し込むというのは賢い方法です。

□信用金庫から融資を得るには積み立てを

   信用金庫から融資を受けたければ、融資を受ける半年くらい前から仕込みが必要です。月に1万円でも2万円でも良いので、積み立てをしましょう。積み立て は、金融商品としては全く商品力のない商品ですが、融資の際に、積み立て実績が考慮され、「一見の客」という扱いから「積み立てをしてくれているお客様」 に属性フラグが変化します。

 信用金庫にもよりますが、私の経験で言えば、金利は変動3.3%など高め設定ですが、自己資金20~30% (諸経費は別途自己資金にて)など、使える範囲内の条件を提示してくれます。担当者が言うには、基本的に都銀で相手にされない客が来るのが信用金庫なの で、決算書の内容は多少悪くても検討するとのことでした。この積み立て分も自己資金拠出分に含めて考えて資金効率を計算し、それでも割が良ければ利用価値 はあると思います。

□都市銀行から融資を受けるには投資信託を

 都市銀行には、営業担当者から見ると、リスク性商品、 つまりは投資信託や国債などの元本保証でない商品を買った顧客とそうでない顧客は明確に区別されています。前述の通り、一定額までの融資は支店のみの判断 で実行可能なので、取引銀行でリスク性商品の購入実績があれば、営業担当者が審査部門に上申する際の融資シナリオに「この顧客は当行で住宅ローンも組んで おり、さらに投資信託まで買っている。今後も取引の拡大が予想できるので、不動産融資も出してほしい。」などと書いて締めくくることができるのです。そう すれば、審査部門に対して、営業上の重要な顧客なのであれば若干甘く見ようという動機付けをすることができます。

□なぜ銀行のリテール営業担当は証券会社に比べて余裕があるのか?

 もちろん雇用体系やノルマが違うというのもあるのですが、システム上の大きな違いは、銀行からは顧客の口座内の資金の動きをすべて見通せるが、証券会社からはそれを見ることができない。という点です。つまり、銀行からは、誰がいくら持っていて、主にどのようなことにお金を使っている、という情報を閲覧することができるのです。そのため、1千万円以上の大口の資金移動があった顧客のリストアップ、余裕資金をリスク性商品に呼び込める見込み客リストアップ、富裕層の絞り込み、などは完璧な精度で作成できるため無駄がありません。

 また、営業に行ったときに、訪問先が「うちは金がないから投資信託なんぞは買わん!と言われても、営業担当者は顧客が余裕資金を持っていることを知っている」(都銀リテール営業担当)のです。なお、借入情報、不渡り情報は全銀行で共有されていますが、他行の預金取引の内容までは調査することはできないとのことです。

  しかし、銀行担当者と大口取引先の間は、贈収賄(と言っても民間企業なので犯罪ではないのかもしれませんが)を含めて必要以上に親密な関係であることも多 く、機密に係わる情報も多かれ少なかれ漏れているケースを多く見かけます。銀行取引の秘密はあまり守られていないと考えた方が安全かもしれません。当然、 国家権力で捜査をするような場合は、令状一つでほとんどの情報にアクセスできることは容易に想像できます。


2013/11/07更新