[7-9] 金利上昇の問題

下記の情報は2010年02月20日現在のものです

金利上昇は日本経済最大のリスク

 私は、日本の国の一番の弱点は、借金が多いことではなくて、 金利上昇に耐えられないことだと思っています。

  日本以外の国では、通常インフレがあるため不動産価格は何も問題がなければ緩やかに上昇をし続けます。そして、金利の引き上げは、通常はインフレ(バブル 気味)の経済を正気に戻すために行われる金融政策です。金利上昇局面では所得も含み益も増え、買い需要は旺盛となります。いわゆる良い金利上昇です。

 しかし、今の日本を見ると、 それとは逆の悪い金利上昇の危機に面しています。日本が1000兆円近い国債発行残高を綱渡りでやりくりしている実態に、世界の投資家や投機筋が注目し、集中砲火を浴びせれば、ソブリン債格下げを余儀なくされ、債券や為替が売られ、その結果、通貨が信頼を失い、外部要因主導で金利の上昇を引き起こす可能性は十分にあります。

 ちなみに、これを心配する人の多くは、幸田真音の日本国債というこの筋では有名な小説を読んでいます(笑 私は読んでいませんが。

日本国債務のGDP比率
http://www.mof.go.jp/budget/fiscal_condition/related_data/sy014/sy014d.htm

ユーロ各国債務のGDP比率

EUスタンダードはこのような感じです。(金融ビジネス2010WINTER)  日本国債務のGDP比率はスペイン並みに高いということがデータから読み取れます。

しかし、国債暴落説には反論もあり、日本国債の9割以上は日本国内で吸収されているため、ヘッジファンドの集中砲火も金利を動かすまでには至らない。外貨建ての貸付はあっても借入はないため円安耐性がある。円安になれば製造業が潤い景気が回復する。などが反論の論拠としてあげられます。

国の借金総額
http://www.mof.go.jp/budget/fiscal_condition/basic_data/200908/sy2112g.pdf

公債残高に地方の債務などを加えた国・地方の長期債務残高は、平成21年度末で825兆円(対GDP比171%)程度です。額の大きさばかりに注目が集まりますが、外国人から借りている分は、6%程度だけ(下の国債等の保有者内訳参照)というのは重要な事実です。

国債等の保有者内訳
http://www.boj.or.jp/statistics/sj/sjexp.pdf

 しかし、相場は多数決で決まり、決まりかけると投機筋が追い打ちを掛ける(オーバーシュートさせる)というのが水戸黄門のように毎回同じパターンで繰り返されています。

 実質的には、国債保有が内国金融機関のみ、外貨建て債務がないというテクニカルな後ろ盾はあるものの、世界中が日本の借金は多すぎてどこかで行き詰まると思っている、もっと言えば、行き詰まらせ、それをダシにして一儲け企んでいる輩がたくさんいる中、何も波乱を起こさずに沈静化させることはできるのでしょうか。

 私は、国家の信用を計る物差しは通貨であり、ドル円で130円を超えたあたりからは黄色信号だと思っています。なお、執筆現在(2011/06/15)、一ドル80円という超円高ですが、通貨高で破産する国はないと思っています。

 もちろん、悪い金利上昇は不動産市場にも大きな影を落とします。

金利が上がると何が困るのか?

 金利が上がってしまうと、 一番困るのは国債を大量に持っている国内銀行と生保など機関投資家です。 次に困るのは、住宅ローンを変動で組んでいる人々。分かりやすいですね

住宅ローン金利
SBI住信 変動35年 0.975%(諸費用別)
SBI住信 固定7年 1.78%(諸費用込み)
フラット35 固定35年 2.85%(諸費用別)

住宅ローン貸付残高
http://www.jhf.go.jp/research/zandaka/index.html
ここ10年くらいは概ね180兆円の残高で推移
住宅金融支援機構系は100%固定金利、民間は8~9割方の貸付が変動金利と想定。変動金利の貸出残高90兆円くらい。

ネットで見つけた人の試算
http://www.rieti.go.jp/jp/papers/contribution/fukao_m/03.html
私が以前、変動金利と固定金利はどちらが得かを計算したときとだいたい計算結果は同じです。

 しかし、これはフラット35で組んだ人と不公平がないように、出来上がり金利で4%くらいまでは国から救いの手は差し伸べられないでしょう。なぜなら、投資ローンなどでは4%までの金利上昇に耐えられるかを判断基準としている銀行も多いため、4%は想定範囲内の最大の金利というコンセンサスが概ねできています。そう簡単に救済策が出てしまったらフラット35で高い金利を払ってリスクヘッジした意味がなくなります。

 統計から読みますと、私の試算では住宅ローンの半分近くは35年変動で借りている人(これ数十年前に組んだ人も含むので、最近組んだ人はもっと変動の比率が高いと思います。)なのではないかと思うのですが、ゼロ金利と言われる時代、すなわちこれから金利が上がることが間違いない時代に、投資知識のない一般人が35年もの長期にわたって金利上昇のリスクヘッジをしないで年収の数倍ものローンを組むというのは異常事態だと言えるでしょう。

※ この記事の執筆後、フラット35Sが登場して、最近(2011/02現在)は長期固定金利借りる人も増えたのではないかと思います。なお、フラット35S は、平成22年2月15日より資金をお受け取りになる方から、平成23年12月30日にお申し込みされる方まで・・・とのことです。延長されることは往々 にして良くあります。

法人向け貸付は意外に大丈夫

 大企業の場合、金利上昇リスクは折り込んで仕事をし ているでしょうから、さほど大打撃はないと思います。中小企業向け貸付は、金利上昇分は国が負担するなど保護策が働いて、意外に被害が少ないと思われま す。中小企業は、商売の環境は厳しいですが、その分、融資や税務では多少優遇されている傾向にあります。

法人向け融資
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20100205ATGC0500X05022010.html
す でにリンク切れしていますが、この記事によると銀行の貸付残高は422兆ある。銀行部門の住宅ローン残高は116兆なので、残りは300兆くらいがざっく り法人貸付という計算。ほとんどは大企業向け融資だと思われます。なお、法人向け融資と見せかけて実質は不動産購入資金に充てられているという額もかなりあると思われます。

金利は上げられない。が、外部要因で上昇する可能性も

 国としては、流動性の罠にはまっているとまで言われ、馬鹿にされているゼロ金利の長期化は避けたいところではありますが、このタイミングで金利を上げたくはないでしょう。第一、上げるメリットもこれと言ってありません。少なくてもプライマリーバランスを黒字化してからで良いでしょう。

 不動産に関して言えば、景気が回復局面で金利が上がるのであれば、住宅ローンの支払いは増えますが、家の価値が上がっていればローンを外して転売することができます。

下記は、現在の金利水準のまとめです。

政策金利
http://www.gaitame.com/market/japan.html

2008年12月より0.1%

無担保コール翌日物(オーバーナイトコール)
http://www3.boj.or.jp/market/jp/menu_m.htm
0.070%(2011/06/15) 基準割引率および基準貸付利率(公定歩合)=ロンバート型貸出制度上の実質的なインターバンクの上限金利(?)0.3%

JPY3ヶ月TIBOR
http://www.zenginkyo.or.jp/tibor/
0.44636%

長くなりましたが、結論としては、

・自己資金の何倍ものハイレバレッジで不動産投資をするならば、金利上昇リスクを忘れてはならない。

・そして日本経済は、いつ急激に金利が上昇してもおかしくない環境にある。

・一度、悪い金利上昇が始まると、手に負えない水準まで一気にオーバーシュートする可能性が高い。

・住宅ローンはフラット35Sにしておけば一安心。


2013/11/07更新