[8-1] 賃貸市場/住居系

2013/11/07更新

賃貸物件の探され方

 この章は業者の立場から見た賃貸マーケットを説明します。都内の賃貸マーケットはひとことで言うならSEO市場であり、ホームズ、アットホーム、スーモ、フォレント、そしてヤフー不動産(リクルート系、いい生活、ダンゴネットなどからの転載)がメジャーな媒体です。

 賃貸では、売買ほど詳細なデューデリジェンスはありませんので、検索で上位に出てくればくるほど有利です。例えば高田馬場5分かつ目白駅5分の二駅利用可の物件は、最寄りをどちらにするかで検索結果への露出回数が大幅に変わってきます。他にも京橋と宝町など、ほとんど同じ場所でも知名度は大きく違います。

  ですから、登録する際に条件設定の目利きが必須です。上級者は、ホームズに登録する際、特定の検索条件で検索した時にヒットする検索結果の上位3つまでを 意図的に自社物件で固めるドミナント戦略でコンバージョンレートを高めるなど、ホームズ内ですらもSEO的な戦いが繰り広げられています。

 そのような仕組みゆえに、港区内の駅直結タワーマンション(ザ・ヒルトップタワー高輪台など)のような即日完売物件でも、賃貸で有利になる検索キーワードが少ないため、意外に賃貸が埋まらないというようなことも発生します。

 入り口がネットのSEOなので、無店舗のフリーランスお部屋案内人にもビジネスチャンスがあります。ホームズなどのネットに物件を掲載、携帯で問い合わせを受け、現地待ち合わせ、喫茶店で契約というフルコミッションで 動いている人たちです。このような人たちの中には、宅建主任者資格資格を持っていない人が多い気がします。(お部屋案内人が宅建を持っていないことは違法 ではありませんが、契約時には資格保有者が必要です。)そのため、知り合いの宅建業者の名義を借りて活動します。彼らが言うには、賃貸市場というのは安定 していて堅いビジネスなのだそうです。都心の有店舗型賃貸の店では、ひとりあたり月70万円以上の売上で一人前と言われています。

賃貸マーケットのからくり

 賃貸マーケットでは、「AD」「広告料」「バック」「担当者ボーナス」というのが、重要なキーワードです。冒頭からしょっぱいキーワードのオンパレードですが、これの有無によりテナント付けのスピードが変わってきます。

ADとは?

 「賃貸 AD」などと検索しても、ほとんどヒットしません。意外にWebを検索しても出てこないワードってあるのですね。これは何か秘密があるのでしょうか。レインズには「AD1ヶ月」などとよく書かれているわけですが。

  このADとは何かと言えば、以前は、賃貸契約が決まった場合、元付業者はオーナーから賃料一ヶ月分、客付業者はテナントから賃料一ヶ月分の仲介手数料を得 るというのが一般的でしたが、現在(2011/2)は、ファンド物件を中心にADなどという追加ボーナスが1~2ヶ月程度、客付会社に支給されます。つまり、客付会社はテナントからの仲介手数料1+AD2=計3ヶ月の仲介手数料をもらえるケースがあるということです。

 なぜ、家賃10万円程度の賃貸を案内してビジネスが成り立つのでしょうか?その秘密はADにあったのです。

 しかし、ネットでしっかり勉強している最近の消費者は、「AD出るから仲介手数料はいりませんよね?」などと、切り込んでくることもあり、大抵そのような依頼者は態度も横柄なので、客付業者も楽ではありません。

 また業者も業者で、もともと礼金0の賃貸を礼金2で紹介して、その2ヶ月分をオーナーから追加手数料として徴収しているケースもあったそうです。その後、そのような業者の一部が東京都から行政処分を受けているのをニュースで見ました。

 マンションオーナーとしては、賃貸の付かない物件にはADを出す(ADよりも担当者ボーナスの方が効き目がある気がしますが)。担当者と仲良くして、優先的に紹介してもらう。などの知恵が必要です。

ファンド物件の入居率のからくり

※下記の記述は上記の表の出典元である特定のファンドに対するものではなく、REIT物件全般に言える一般的な見解です。特定のファンドや物件に対して言いがかりを付けるものではありません。

 あるREITのディスクロージャーを見ると、上の表のようにファンド物件の入居率は都心部では常に95%以上の高い稼働率を維持していますが、これにはちょっとしたカラクリがあります。

 まず、ファンド運営側の事情として、高い賃料が取れ、将来的には賃料の値上げも可能であるという見通しの元でCAPレート、NOIイールドを計算して購入している物件なので、その根拠となる賃料は絶対に下げるわけにはいきません。

 ですから、ファンド物件は周辺の類似物件に比べて賃料は割高です。

  割高ですが、敷金1、礼金0、フリーレントあり、など引っ越しのしやすさ、おまけにAD2などの手数料面に加えて、物件自体も専ら高級賃貸物件として市場 に出されることを前提に作られていますので、周辺物件と比べても見劣りしません。そのような、営業しやすい条件が整っているので、テナントが付くのです。

  
高級ファンド物件ならではのユニークな間取りやデザインは時に大人気となることも。

 しかし、住居系ファンド物件の平均入居期間は、他より短く、おそらく3年以内だと思います。仮に3年としてもAD2+フリーレント2と付けるのは、賃料を1割以上値引きしているのと同じ収支なのです。

 つまり、ファンド物件の高稼働率は、高額なADや賃料以外の条件面の調整など、IR資料に現れにくいところを極限まで譲歩した結果作られたと言っても大げさではないでしょう。都心の小規模な賃貸専門店には、ファンド物件へのテナント付け(そこから得るAD)が収益のほとんどを占めるというようなケースすら聞きます。

タワーマンションの客層と傾向

 震災時、タワーマンションや高層ビルの上層階から階段で避難した経験から、震災直後のタワーマンションは敬遠されました。また、震災で被害の大きかった埋め立て地の地盤沈下からの連想で、豊洲タワーマンション群から港区への同額賃料で物件グレードダウン(港区の方が単価が高いので)引っ越しなども散見されました。

 震災から5ヶ月経った2011年8月現在では、タワーマンションの上層階だから避けられるという傾向は多くはなく、一通り今まで通りのマーケットに戻ったと言えるでしょう。

 タワーマンションの賃貸に関して、経験則からのポイントを述べると、タワーマンションを探しているDINKS層、都会派ヤングプロフェッショナル層は、タワーマンションに対して開けた眺望と、大型物件ならではの充実した共有部分(プール、ジム、コンシェルジェサービスなど)を求めています。そのため、眺めの悪い低層階、共有部分が充実していない物件、などは避けられる傾向にあります。

引っ越しの繁忙期と閑散期

 ネットで引っ越し屋さんが書いていた記事によると
http://www.hikkosi-guide.com/category/season/index.html

・春(2月下旬から4月中旬)は、引越し業界では、いわゆる「繁忙期」

・ゴールデンウィークは、春の繁忙期に引越しを控えていたお客様による需要が高まる時期

・梅雨時期は一段落

・夏は、夏休み期間中に引越しの件数が多くなる

・秋は、特に9月末=半期末に転勤による引越しの件数が多くなる

・冬は、引越しの件数が少なめ(ただし、年末を除く)

・年末は引っ越し件数が増加する傾向があり、逆に年始は極端に件数が減少

 こんな感じだそうですが、ほぼ実感値と一致します。つまり季節的には上記の繁忙期と閑散期を計算に入れてテナント付けをすればうまく回るということです。

 ちなみに、賃貸の部屋探し実務は土日が繁忙期です。これも平日の昼は会社や学校に拘束されてしまうので、賃貸案内人は一般の人の休暇日に忙しくなります。

礼金の秘密

 ひどい業者は、オーナーが礼金1ヶ月で募集をしている部屋に対して、テナントに礼金2ヶ月とふっかけ、差額の1ヶ月を広告企画料などとしてオーナーからバックしてもらっているケースもあるそうです。

 うわー、ひどい。と思う一方、賃料6万円などという部屋を決めて仲介手数料を6万円だけもらっても食べていかれないため、礼金、ADなどをもらって、賃料の2ヶ月、3ヶ月分相当の収入になるように調整しないとやってられないという業者の実情もある模様です。

2011/02/18の不動産流通研究所のニュースによれば、賃貸借契約書に礼金不記載の宅建業者らを行政処分/東京都

  東京都はこのほど、宅地建物取引業者2社の処分を実施した。X(東京都練馬区)に対し、礼金の額を賃貸借契約書に記載せず、また、広告企画料という名目で 法定上限額を超える報酬を受領したとして、宅地建物取引業法第37条第2項第3号(契約書の不記載)、同法第46条第2項(限度額を超える報酬の受領)に 違反するとし、宅地建物取引業務の全部停止16日間を、また、Y(東京都豊島区)に対し、礼金の授受に関する定めがあるにもかかわらず、賃貸借契約書(法 第37条書面)にその額についての記載をしなかったとして、第37条第2項第3号に違反するとして、宅地建物取引業務の全部停止7日間を言い渡した。

このような行政処分が下っています。礼金水増し&オーナーからのバックが摘発されたケースと見て間違いないでしょう。また、ずる賢い営業担当者は、ADを担当者ボーナスに振り替えている。という情報もありました。つまり、会社に1ヶ月分を入れるのではなく、自分が1ヶ月分の商品券をもらっているということです。

生活保護向け賃貸

 2013年1月現在、都内の一部では生活保護の人向け賃貸業者が活況のようです。東京では、単独者で53,700円以内、2人家族で69,800円以内というのが生活保護で出してもらえる賃料の基準となっているようです(区によ り金額が異なるとも聞いた気がします)最近では、風呂トイレ共同などの物件は、役所NGが出るようで、健康で文化的な最低限度の生活の基準は、はっきり言って、そこらの貧乏大学生よりも条件が良いです(が、ベルギーやマルタと比べるとまだ全然悪い)

 個人的にはベーシックインカムや社会福祉は欧州並みに充実してほしいと願っているため、悪いとは思いませんが、文句が出るのも分かる支給額ですね。これ以外に食費なども支給されるとのことで す。なお、賃貸の業者は、生活保護の人と連絡がつかなくなって困ることがあるが、近くのパチンコ屋で発見できることが多い。たまに缶ジュースをおごってもらえるのだけど、微妙な気分!などと言っていました。

 NPOなどの名義で賃貸物件を借りて、それを生活保護受給者に転貸している団体もあります。まともにやっている団体と営利目的で怪しくやっている団体と玉石混淆の様子です。

賃貸住居物件でトラブルが起きたら

 都庁相談窓口 賃貸ホットライン 03-5320-4958 へ。意外と混んでいますので、何度もかけないとつながりません。電話した日時や担当者名を伺って記録しておくと、後で大きなトラブルになった時に多少は役に立ちます。

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