[8-2] 賃貸市場/事務所・商業系

事務所・店舗の概要

 事務所や店舗の賃料は、景気の影響を大きく受け、住居系に比べて値動きと空室率変化が大きいのが特徴です。

  たとえば、ファンドバブルで景気の良かった2007年と、サブプライム危機の起きた2008年以降では、空室率は大きく異なります。そして、空室率と賃料 は相関が高いことは言うまでもありません。さらに、あまりに景気が悪くなってくると、中小ビルにおいては、賃料水準の問題ではなく、新しくビジネスを立ち 上げようとする人がそもそもおらず、事務所に対する問い合わせが来ない。という状況すら発生します。

 一方、事務所や店舗は一等地に建っているものが多いため、景気回復時の値上がり幅は大きいのが特徴です。また、内装費用もかからず、住居系物件よりも高い利回りで売りに出ていることが一般的ですので、現況賃料で常に満室にできるのであれば、住居系よりも利回りの高い投資となります。

 しかし、事務所系物件の空室率や賃料は景気に大きく左右され、住居系物件よりもハイリスクです。そのため、金融機関も事務所系、店舗系物件には融資を出さないことも多く、個人投資家が長期保有目的で投資を行うことは簡単ではないと考えます。

事務所・店舗の賃貸市場

 住居系以外の賃貸にはどのようなテナントがあるのかを紹介します。最も多い用途は一般事務所としての利用ですが、ニーズの多様化に合わせて賃貸スペースの使われ方にもバリエーションが増えてきました。テナントの種類によっては、規制される法令があったり、追加設備が必要な場合もありますので事前に確認しましょう。

賃貸事務所のトレンド

 事務所の賃料は、景気の影響を大きく受け、住居系に比べてかなり値動きと空室率変化が大きい(ボラタイル)です。


CBRE(シービー・リチャードエリス株式会社) オフィスマーケットレポート vol.57より

 景気の良かった2006-2007年と2011年03月現在では、空室率が大きく異なります。そして、空室率と賃料は相関が高いことは言うまでもありません。あまりに景気が悪くなってくると、中小ビルにおいては、賃料水準の問題ではなく、新しくスモールビジネスを立ち上げようとする人がそもそもおらず、事務所に対する問い合わせが来ない。という状況すら発生します。

 なお、このチャートは東京全体の平均であり、地区により空室率は大きく異なります。CBRE(シービー・リチャードエリス株式会社)が無料でレポートを公開しており、全体のトレンドを把握するのには便利です。
http://www.cbre.co.jp/JP/Research_Center/OfficeMarket/Pages/default.aspx


 その結果、都心5区という一等地においてですら、半分以上の事務所が、以前よりも10%以上も賃料を下げて契約更新せざるを得ない、厳しい状況に陥っています。募集賃料も下落傾向であることは言うまでもありません。また、主要地区以外ではもっと下げがきついことは容易に想像が付きます。

いろいろな種類のテナント

 景気の良いときは、これと言って付加価値が無くてもテナントは勝手に付きましたが、景気の悪い時期は、貸す側にも戦略が必要です。つまりは、一般事務所 でダメなら他の用途で募集も考えるという幅の広げ方です。商業物件の空室対策として考えられる一般事務所以外の使い方をリストにまとめました。

■事務所系

一般事務所(IT系スタートアップ企業など)

大型機械を置く作業所(オフセット印刷機など)
 軽印刷所を新たに始める人はほとんどいないと思いますが、騒音や化学薬品使用などの問題もあるため、どのような機械で何をするのかは調べる必要があります。

■飲食店系

普通のレストラン
 飲食店は、臭いやゴキブリ発生の原因などの理由から近隣からは嫌がられる傾向にあります。また新しいビルは、まだ汚されたくないという理由から、オーナーも飲食店の入居を嫌がるケースが多いです。古いビルでは入居後に下階への漏水などの可能性もあり、気が抜けません。

喫茶店
 空き区分店舗を安く購入して、スターバックスのような高級かつ安定テナントを入居させてバリューアップして、高く転売するというような会社も存在しています。

テイクアウト、デリバリー専門店
 デリバリー専門のピザ、寿司、弁当は人通りの少ない場所でも問題はありませんが、バイク用の駐輪場が何台か必要です。

企画系カフェ(メイドカフェなど)
 しかし、最近は、メイドカフェも下火のようです。

■物販系店舗

普通の物販店(洋服、雑貨など)

マニア向けの物販店(アニメ・フィギア・プラモ・楽器など)
 このようなコアな客層向けの物販店のメリットは、エレベータ無しの物件でも4Fくらいまでならお客さんが階段で上ってくれるというのが一番のポイントです。

書店、DVD店
 最近、書店の新規開店というのはほとんど見なくなりましたが。私もAmazon以外で本を買うのは駅の売店くらいです。

美術ギャラリー
 美術ギャラリーなんて需要あるのか?とお思いでしょうが、1Fの路面店など、好ロケーションで人気のあるところは数月先までいっぱいというところもあるそうです。

携帯電話ショップ
 条件の良い場所なのに、ちょっと狭すぎて普通のビジネスには適さない・・。というような場所は携帯電話ショップが良いかもしれません。10坪以下でも営業可能です。

コンビニ
 大手コンビニは賃貸業界では大歓迎のテナントです。中規模マンションの1F(ゲタ履き)に入居していたりすると好印象です。中華系の投資家は、マーケティングが命のコンビニやマクドナルドが入居している区分店舗を好んで買うとの情報もあります。

■サービス系店舗

カラオケボックス
 カラオケは新規開業よりも廃業した店舗の売買の方がよく見かけます。

美容室
 内装業者が美容室に営業をかけると、「物件もセットで持ってきてよ!」と頼まれるそうです。つまり、美容室は場所が命。良い場所さえ取れれば、結構堅いビジネスなのかなと想像しています。原宿など美容室に好適な場所では、不動産業者に「使えそうな物件があったらいつでも持ってきて」と予約をしている美容室経営者も多くあります。

医院
 法律上は、規模により診療所(入院施設がまったくないかベット数が19床以下の医療機関)と病院に分けられます。診療所は一般的にクリニックと呼ばれています。

雀荘
  風営法7号営業という法律により規制されます。用途地域の商業地域、近隣商業地域、準工業地域、工業地域、工業専用地域で開業できることになっています が、その中でも文教地区では開業できません。特殊な法律に規制される業界をテナントとして迎えるときにはオーナー、仲介業者(重説作成者)ともに注意が必要です。

マッサージ店
 てもみんのような一般マッサージ店から無許可で性的なサービスを提供するあやしい店までたくさんあります。

個人経営エステサロン
 高級住宅街にあるハイグレード物件なのに半地下(窓がない)であるために埋まらない住居のような物件を高級エステサロン化するというのも一考に値します。

個別指導塾
 フランチャイズ展開をしている小規模な塾が多くあります。

不動産屋
 中小の不動産屋というのは、不動産業界ではあまり歓迎されていないテナントの模様です。統計的にガラの悪い人が多いということ、そして原状回復時にテナントが不動産屋だと知識があるので大家が言い負かされて不利になる、という話です。

■宿泊業

ホテル
 こんなホテルって誰が泊まるの?というようなホテルは都心にも意外に多く残っています。それらの中には、一般の旅館業免許で経営していても実質的に風俗店と提携して風俗のプレイルームと化しているケースも地域によってはあるようです。

ラブホテル
 聞くところによりますと、3年に一度はリニューアルをするので改修費がかかります。また、水を使いっぱなし状態ですので、水回りの修繕費が非常にかかるそうです。場所にもよりますが、経営しているのは意外に一般人やまともな企業だったりします。

■倉庫

  空きビルを月極の倉庫にコンバージョンする業者がいくつかあります。業者はオーナーから長期一括借り上げで事務所借りてエンドユーザーに転貸します。業界 ではメジャーな会社に)問い合わせてみたところ、都内、RCのB1-4F、EVなし、のべ床面積約40坪、築15年というビルで、初期費用1500万くら い、坪6500円(周辺相場の60%)で10年一括貸しという仮条件(現場調査などの精査前)だそうです。正直、高額な初期費用と周辺相場の60%という賃料設定を考えると、倉庫にせず普通に賃料を下げるか住居にコンバージョンするというのが正解です。

■駐車場

コインパーキングのような駐車場というのは、予想に反してかなり利益率が高いです。

■自動販売機ビル

・ジュース自動販売機
・お酒自動販売機(立ち飲み用のテーブルが置いてあるところもある)
・タバコ自動販売機
・食べ物自動販売機
・ガチャガチャ(ハピネット・バンダイなど)
・アダルト系グッズの自動販売機
・コインロッカー

■レンタルルーム系

・貸し会議室

学習スペース

スタジオ、教室

時間貸しホテル
 これは普通の人が立ち上げられるビジネスではないと思いますが、秋葉原界隈にはラブホテル代わりに使うレンタルルームなる用途が存在しています。関わったことがないので詳細は不明ですが、”ホテルがライバル”という感じでしょうか?

■風俗

 風俗やスナックが主に入居しているビルを、この業界ではなぜかソシアルビルと言います。○○サロ(風俗系のワードはGoogle評価が下がりそうなので伏せ字にしてます)は飲食店として届け出をして経営している店が多いそうです。

店舗テナントの誘致

 2011年8月現在、不況と震災のあおりを受け、駅から少し離れると、山手線内側エリアでも小規模路面店舗や事務所の空きが目立つようになってきました。しかし、駅前の一等地に空きが出ることはありません。これは次のような理由によります。

 店舗のリーシング専門業者というのが存在し、彼らは多くの大手飲食チェーン店、美容室などの新規出店企画室へ問い合わせをして、出店の条件をヒアリングしています。そして、その条件を空室待ちリストとして数千件単位でデータベース化します。その条件に合う店舗物件のオーナーへ飛び込み営業に行ったり、時にビジネスにはならずとも数年間も顔つなぎのために挨拶に通ったりと、足を使って常に供給サイドと連絡を取り合い、空室が出た際には真っ先に連絡が入るような体制を整えています。

 大手チェーン店の開業条件は、駅からすぐの人通りの多い場所、間口の広い場所、1F(または上がったとしても2Fまで)など、厳しい条件のものが多いため、条件に適した物件は非常に少ないのですが、一方で、それらの店舗は、駅前に出店すれば必ず利益を生むようなドル箱ビジネスが多いため、一等地の路面店舗は、オーナーが何もせずとも、ほとんど空室期間ゼロで5社、6社での取り合いというような熾烈な戦いになることが多いのです。

店舗、事務所テナント誘致専門の会社

これ、具体名を書いて良いのか分かりませんが、店舗、事務所のリーシング専門業者で有名なところは次のようなところです。

 株式会社スペーストラスト 店舗管理業務など。最大手。

 三鬼商事株式会社 大型オフィスの仲介など。最大手。オフィス賃料や空室率の市況データを無償提供しています。

 サンフロンティア不動産 通称サンフロ。事務所への賃貸付け。

 株式会社イリオス 店舗仲介では大手

 株式会社日本ソフト店舗 Webによれば「東京・神奈川・関東圏の店舗物件を専門に仲介」

 株式会社エリアクエスト 東証マザーズ上場のオフィス・店舗仲介大手。元エリアクエスト社員から独立した業者多し。

 株式会社イデアル 店舗物件、オフィス物件仲介

 株式会社テンポアップ Webによれば「店舗・事業用物件専門の不動産会社」

 株式会社アップテンポ テンポアップとは関係ない


2013/11/07更新