[9-3] 屋上に太陽光パネルを設置

2013/11/07更新

9Kwを超えるメガソーラーについての話題はこちら。
家庭用とは内容が全く違い、投資妙味も異なります。両方読んでみてください。

自宅の屋上に太陽光発電はお得か?

結論的には、2012年2月現在(全量買取制度開始前)では、補助金を考慮しても投資効率という点では非常に低いと考えます。つまり、導入に適した時期はもう少し先であるという結論です。(ただし港区のみ補助金が高額なので検討余地あり。また、高容量のパネルを設置できる場合、法人が設置してエネ革税制の適用を受けられる場合も検討余地あり。

太陽光発電が注目されている理由と補助金制度のまとめ

□原発事故

 3.11震災と原発事故の影響で、クリーンエネルギー、非原子力エネルギーに対する意識が一気に高まりました。設置業者の中には震災後には、見積もり依頼の件数が一気に5倍に増えたと言うところもありました。

 なお、原発事故以前より、国策として太陽光発電は推進されており、政府広報の中でも「CO2を排出しない無限のエネルギー」として次のように紹介されています。

太陽光発電の利用は世界各地で進められつつありますが、その中でも日本はドイツに次いで世界で2番目に太陽光発電の導入が進んでいます。2005年時点での 日本の太陽光発電の導入量は約140万kW(キロワット)。そのうち8割が住宅用太陽光発電システムです。政府は、2020年までに太陽光発電の導入量を 2800万kWまで増やすことを目標に掲げており、そのなかで、住宅用太陽光発電システムについては、2005年の約20倍にあたる約530万戸に増やすことを目標としています。
http://www.gov-online.go.jp/useful/article/200908/5.html

□売電収入が得られる

 太陽光発電を導入する最大のインセンティブは、余った電気(のみ)を東京電力(関東地域の場合)に売却して現金収入を得られるという点です。

 余剰電力はいくらで売却できるのか?

 平成24年6月までに申請を済ませれば、42円/kwという価格で売却で10年間余った電力を東京電力が買い取ってくれることが約束されています。一般的な家庭の屋根に搭載できるパネルは3kWh(~4kWh)程度で、 3kWhの場合で月の発電量は250kWh、売電収入は[250kWh-家庭で昼間に利用した電力量]×42円=6,000円程度 というのがモデルケー スです。これは計算ベースではなく、導入者の東京電力からの請求書明細を参考に計算していますので、販売店などのシミュレーションよりも現実に近い値で す。そして、売電収入とは別に、昼に自家発電して自己消費した分の電気料金は東京電力に支払う必要はありませんので、この支払削減分もメリットです。

 売電についてはいくつかの問題と制度変更の予定があります。2012年7月からはじまる全量買取制度、発電設備の価格低下と技術革新によるパラダイムシフトも考慮に入れてください。

□機器の購入に補助金が受けられる

 3kWh導入の場合の例

□国からの補助金
144,000円
平成23年度住宅用太陽光発電導入支援復興対策事業
48,000円/kW、上限10kW(システム価格が60万円/kW以下であること)
3kWh導入の場合 = 補助金 144,000円(3kW × 48,000円)

□東京都からの補助金
300,000万円
住宅用創エネルギー機器(太陽光発電システム)導入促進事業
100,000円/kW、上限100万円(100円未満切り捨て)
3kWh導入の場合 = 補助金 300,000円(3kW × 100,000円)
※東京都の補助金は、まだ予算の10%程度しか消化されていないという噂あり。なくなることはないようです。

□市区町村からの補助金
新宿区:受付終了(すなわちゼロ)
豊島区: 120,000円(4万円/kW、上限16万円)
葛飾区: 240,000円(8万円/kW)
港区: 600,000円(20万円/kW、上限60万円)
など地域により大幅に異なります。
最も多いのは3kWh導入の場合 = 10~20万円程度

この3つの補助金を合計した金額を機器購入時に実質的に価格から差し引くことが可能です。補助金の申請は通常、業者が代理で行います。このように、太陽光発電の最大のポイントは、補助金で設備が購入でき、購入した設備は売電により収益を生むという点なのです。

□一度設置すれば30年程度は稼働する

 可動部のない太陽光パネル部は30年程度はメンテナンスフリーで稼働すると言われています。ただし、太陽光パネルで発電した直流の電気をAC100V交流に変換するパワーコンディショナーと呼ばれる機器は、一般的な電気の変換回路と同じように10-15年の設計寿命であるため、故障時は5万円程度(基板交換の場合)の交換費用が発生します。

太陽光発電が投資対象として不向きな理由

理由は次の通りです。

1.利回りの考え方が不適切

 業者のパンレットには、投資利回り10%、8年で回収可能など魅力的な投資であることが謳われていますが、利回りとは、何年か経った後に資産が一定の価格で売却できることを前提として計算するものですので、10年後に価格がゼロになっていることが、ほぼ確定している太陽光パネルに対して、利回り10%!などと謳うのは間違っていますIRRや期間中の金利、インフレ率を無視しているためです。10年で回収できたとしても、10年後の回収時点でようやく利益ゼロ(10年間の金利を考えると赤字)の状態。その後は、機材が壊れるまで、おそらく23円/kWh程度の単価で発電を続けますが、現行機種よりもはるかに低い発電効率の旧型機材を使い続けることになります。

2.売却時の契約引継ぎの問題

 現在の契約システム上、売却などで東京電力との契約名義が変更になった場合、売電契約や買取価格保証の条件は引き継がれません。つまり、物件を売却した際に買取価格が現在よりも下がっていた場合、新しい所有者は旧型の発電効率の悪い機器を、条件の悪い契約で引き継がなければならなくなります。これは投資として全く現実的ではありません。

  しかし、この回避方法として、共有部分電力を東京電力と契約する際、「○○マンション共用部分」などという名義で契約して、物件売却時は受給契約書と呼ば れる書類を東京電力に提出し、支払者のみを変更するという方法は認められています。東京電力のカスタマサポート(新宿支社2012/02/20)に確認し たところ問題ないとの回答を得ました。太陽光パネル設置時には契約者名義に注意してください。同様の理由で管理会社名義で電力契約をしている場合、管理会社を変更すると買取価格が変更となってしまう可能性もあります。

 2012/03/20追記 その後、導入者に追跡調査をしたところ、契約時に「○○マンション共用部分」などで契約すると国の補助金の申請が通らないため、やはり個人名や法人名などで契約するしかないのが実情で売却時の売電条件引継ぎはあきらめるしかないとのことでした。

3.発電量の全額を売電する計算となっている

 太陽光発電では9時~15時の間に95%の発電量を稼ぐと言われています。実は、その間の発電は、家庭や物件の共有部分で利用した電力に先に充当されます。ここで余った電力のみが42円/kWhで売電されます。

 つまり、昼の間は本来ならば24円前後を支払えば購入できる電力をまかなうのに発電コストの高い太陽光発電の電量が充当されてしまっているのです。一般家庭では、統計的に見て、太陽光発電のうち4割が自己消費、残り6割が売電に割り当てられると言われています。

 
東京電力料金表。2012年2月現在の家庭用料金例。1kWhあたり22.86~24.13円程度の対ユーザー売値。

4.元を取るための期間は机上の計算より長期化

 3kWh程度の発電量であれば12-15年、7-10kWhなど容量を大きく取ってコスト効率を上げた場合でも10年程度は見ておく必要があります。(細かい計算は省略。他社のページですがこのあたりは 保守的に計算されています。)そして、10年後はインフレ等を考慮しなければ、買取価格は20~23円/kWh程度(買取価格保証制度がなくてもペイする 価格?)になるのではないかと考えられます。買取価格が20円台では、2012年現在の機器の発電効率では経済合理性がありませんので、買取価格保証の終 了する10年後に発電効率の数倍高い機種への乗り換えを行い、結局、買取価格保証の10年間では利益を生まなかったというシナリオも考えられます。

5.国や東京電力の政策に大きく依存

 実は、太陽光発電での長期にわたる電力買取制度はスペインですでに導入され、スペインでは2008年に太陽光発電バブルを経験しています。買取の条件が良かったことから、家庭への取り付けや自家製のミニ発電所が乱立、高額な売電収入を得ることを目的とした投資が殺到しました。

 2011年10月19日(ブルームバーグ):
(スペインでは)太陽光発電による電力について1キロワット時当たり最大44セントの料金を25年間にわたって保証した。07年の大手エネルギー供給会社の電力卸売価格の平均は同約4セント。その10倍以上の価格だった。

 この結果、スペイン当局は当初の買取価格を維持できなくなり、新設の設備に対しては当然に買取保証価格の引き下げ(家庭用では約↓23%)、そして、既設の設備に対しても遡及して年間の買取電力量制限(年間1250~1707時間)というルール改定を行いました。

 スペインの失敗を学んでいる日本の当局であれば、同じ失敗を繰り返さないための回避策を考えていることは当然でしょうが、原発問題による電力会社の財政状況の悪化、さらなる自然災害や金融危機による財政難により、結果的には当初の約束が履行されないリスクは大きいと言えます。国債や年金すら危ういと言われている中、電力行政の約束ごとのみ死守される理由はありません。

6.現在の太陽光パネルは技術的に未熟

発電設備の価格低下と技術革新によるパラダイムシフト

 太陽光パネルの技術詳細については専門外で分かりませんが、この図表は参考になります。複数の専門筋が今後10年以内で発電単価は今の50%程度まで下がると予測しています。

 
日経エレクトロニクス2011.12.26

光吸収100倍の太陽電池を開発 岡山大、生活排熱で発電も
http://sankei.jp.msn.com/science/news/110919/scn11091916400001-n1.htm
ヤマダ電機 低価格太陽光発電PB投入 来年度内に2万セット目標(SankeiBizより)
2012.3.10 05:00
 家電量販店大手のヤマダ電機は9日、自主企画商品(PB)として低価格の家庭向け太陽光発電システムを10日から全国のヤマダ店舗で発売する、と発表した。価格は出力1キロワット当たり40万円を切り、 従来(50万円前後)より約2割安い。(中略) 韓国エス・エナジー(ソウル市)の太陽光パネルとオムロンの電力変換装置など、低価格化したシステムの組 み合わせをメーカー横断的に構築し、パッケージとして「ヤマダ」ブランドで売り出す。当面、一般住宅向けの「3.84キロワット」(153万円)とアパー ト向けの「9.6キロワット」(380万円)のシステムを中心に販売する。ともに1キロワット当たりの価格は39万円台で、国の補助金(4万8000円) を活用すれば、実質1キロワット35万円前後での導入が可能になる。

 また、このように既存の技術とは異なる製法で、桁違いの発電効率を実現するデバイスが市場投入される可能性も(希望的観測ですが)あります。このような革命的な発電方 法が現実となった場合、すでに太陽光パネルを敷設している投資家は、現行品の1/100という低効率のデバイスを利用し続けるという環境に悪い事態に陥り ます。その場合、旧型発電機が発電する高い単価の電力に対して買取価格を保証し続けるのかという問題も発生するでしょう。

 20年、30年という長期で見れば回収できるから良い。という考え方は社会情勢の変化というリスク、技術革新により生まれる高効率な機器を導入できない機会損失を無視しすぎているため現実的でないと言えます。10年後には、技術革新により現在の機器の価値は間違いなくゼロになっていることを考慮する必要があります。

7.設置できる対象が限定されている

 現行品の太陽光パネルは、木造の戸建てに設置することを前提として設計されているものがほとんどです。木造戸建ての△型の切妻屋根に適した設計になっているため、RC造一棟マンションによくある陸屋根(フラットなタイプの屋根)に設置する場合は、別途架台が必要で割高です。

 
シャープ公式より

 さらに、陸屋根の場合は躯体に固定させるための工事が必要であり、防水のために屋上に塗布してあるエポキシ材などとの接合を考える必要があります。この架台、躯体への固定、防水処理のコストは小さくありません。

  そんなに強靱な固定の仕方をしなくても、パネルを屋根に置いて重り(重量物)で固定すれば台風が来ても吹き飛ばされることはないのではないか?と思います し、実際、スペインで太陽光パネルが普及した際に、そこまで慎重な工事を行ったとは考えられません。なぜそこまで保守的な工法にこだわるのでしょうか。

  これは三菱やシャープなど日本のパネルメーカーによる施工会社の管理方法と関連しています。日本の大手パネルメーカーは施工会社に対してIDと呼ばれる認 定制度を設けています。その中では、設置工程が厳しく定められており、その通りに工事を行わなければメーカー保証が付かないという仕組みになっています。 そのため、もっと効率的で安価な設置方法があったとしても、メーカー指導の保守的で高コストな方法以外は採用できないという縛りがあります。中には、海外製メーカーを専門に扱い自由な設置方法で低コストに設置を行っている業者もありますが、この場合、メーカー保証は受けられず施工会社の保証のみとのことです。

8.常に最適な条件で太陽光を受光できるとは限らない

  都内など建物の密集している地域では、周囲の高い建物の影になって時間帯によっては晴天でも発電できないケースが発生します。また、悪天候や積雪があれば 発電しませんので当初予想通りに発電しないことも考えられます。シャープ公式によれば、過去30年の気象データを用いた統計では、東京での発電量は 4.08kWのシステムで4,222kWh(諸々の送電ロスを控除した後の数値)年間電気料金換算で14.5万円とのことです。しかし、すべてのパンフ レットのシミュレーションは、もっとも採光効率の良い真南、傾斜角30度という条件で計算されています。パンフレットにある最適な条件と設置条件が異なる場合、パフォーマンスは悪化します。

投資としてうまみのある点

9.投資額を税務上の損金として今期に一括計上できるエネ革税制

 これは税務署により見解が異なるようですが、いくつかの資料によれば、中小企業が自社ビルや投資物件などに太陽光パネルを設置した場合、費用の100%が当期に一括償却できる可能性があります。(エネ革税制 平成23年3月31日までに取得した設備について) これは非常に大きなメリットです。節税効果と補助金を組み合わせて考えれば非常に高い投資効率を実現します。

 しかし、私が麹町税務署の電話相談センターに聞いたところ、貸付用資産(賃貸マンション)は一括償却の適用外との回答でした。自社ビルの屋上に付けて自己使用するようなケースはOKとのことです。税務署の担当者により回答が異なるようです。所轄税務署、税理士によく確認しましょう。

10.購入資金の借入ができる

 自己資金割合など調査中。期間15年×2~3%程度が一般的なようです。オリコなどの信販をはじめ、シャープなどパネルメーカーもグループ会社経由で融資を提供しています。

設置業者から見た太陽光発電

 3.11震災後、問い合わせ数は5倍になったという業者もありましたが、成約率は10件訪問して1件程度。成約しても粗利は10-15%程度とのこと。価格のたたき合いで、あまり儲かるビジネスではないと言っていました。パネルは、面積当たりの発電量ではパナソニックが若干優位ではあるものの、基本的に中国製でも国産大手でも、そう大差はないため、パネル産業も価格のみの勝負となっているのではないかとのことです。

[海外製]
・カナディアンソーラー(カナダ)
・サンテックパワー(中国)
・トリナ・ソーラー(中国)
・Qセルズ(ドイツ)

[日本製]
・シャープ
・三洋電機
・パナソニック
・三菱電機
・東芝
・京セラ

なお、太陽光パネルの価格は、設置工事込みで、概ねどこの業者でも60万円/kWhというのが相場(2012/02現在)です。

総評

 火力や原発ならば23円/kw以下で作れる電気に対して42円という価格を付けないとペイしないのが現状の機器性能です。そしてその差額は、太陽光発電促進付加金として東京電力からの請求書に乗って一般家庭が負担しています。

 発電パネルの変換効率現況の3倍くらい良くならいと、補助金や高額な売電価格保証により経済合理性を無視して無理矢理に普及させている感が強いわけです。国全体がアーリーアダプターなわけですね。

  技術的に成熟する(グリッドパリティ)より早く普及促進することは、はたしてエネルギー戦略的、地球環境的に良い選択なのでしょうか。技術革新の恩恵を受 けるには先行投資が不可欠なのか、もしくは、あとで高効率の自然エネルギー発電が市場投入されたときに、既存の低効率な導入設備が足かせになるのか。今の 段階では誰にも分からないことですが、直感的には、金銭的にペイしないシステムが環境に優しいとは考えにくいですね。

  また、個人的には、単位当たりの価格のみが勝負となる太陽光パネル産業において、日本勢だけで5社も競合して値引き合戦をしているというのは、半導体メモ リや液晶、プラズマパネルでかつて犯した過ちを繰り返しているように見えます。この不毛な競争は社会資源の無駄です。是非、日本勢は一社にまとまり世界を相手に戦ってほしいと思います。

メガソーラーについて

 9Kwを超えるメガソーラーについての話題はこちら。家庭用とは内容が全く違い、投資妙味も異なります。両方読んでみてください。

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