[11-2] 相続税対策と減税措置

税金対策

【相続税対策に効く不動産投資】

 不動産を語るとき、意外に見落とされているのが税金の話です。不動産取引にかかってくる税金は証券とは比較にならないほど高額です。それでもなお人は不動産に投資をし続けます。それはなぜでしょう。実は、やり方によっては、相続税の大 幅削減、給与所得からの税額控除など、税金対策としても活用できる裏技がたくさんあるためだったのです。

 どのような理由で税金対策となり得るのでしょうか。具体的な仕組みと対策の代表例をいくつか紹介します。

 不動産取引や保有に係わる基本的な税金については、他社のページですがこちらがわかりやすいです。ここでは、知っておきたいいくつかの特例のみを紹介します。

財産評価とは

【相続対策に不動産が効くのは実勢価格よりも安い財産評価というカラクリのため】

 相続時には、被相続人(死亡した人)の財産を様々な評価方法で評価して、その人が全部でいくらの財産を持っているのかを計算する必要があります。そして、その計算の結果はじき出される純資産額に対して相続税がかかってくるのですが、ここでポイントになるのは、資産の種類によっては必ずしも時価ではなく、税務署が特別に定めた計算式によって価格を評価される財産がある。というところです。

 そして、この税務署の定めた計算式、すなわち財産評価基準に従った場合、時価よりも著しく低く価値算定されるケースや、特例を適用して課税を免れることができるなど抜け道が多いため、税務署公認で財産評価額を圧縮することが可能なのです。

  なぜ不動産を持っている人だけに相続税の優遇があるのか?という素朴な疑問が沸いてきそうですが、これには、相続時に不動産は相続人(子供)に受け継がせ るべき、という国のポリシーが関係していると思われます。誰かが死亡する度に高額な相続税が払いきれなくて、由緒ある名家の土地が売りに出され、新興デベ ロッパーがマンションを建てるというのが国益に反するという考え方、もしくは、地方では土地の相続なくしては家を継ぐことができないという実務的な問題も 関係しているのかもしれません。

 Wikipediaによれば、この評価方法について、日本不動産鑑定協会は、「世界でも珍しく、これこそ我国独特の文化と言えましょう」と言っているようですが、個人的には、この評価方法については、はっきり言って無駄だと思います。これがなければ、路線価の調査に投じている莫大な費用も削減できますし、税務署の職員も削減できます。諸外国のように時価や簿価をベースに評価する方がシンプルで外国人にもわかりやすく、特にデメリットもありません。

財産評価の基本的な仕組み

【借地権設定や賃貸アパート経営で相続税を大幅に削減できる理由】

 私は税理士ではありませんので、全体像のみを相続対策という視点から説明するにとどめますが、概ね次のような仕組みになっています。

 相続税路線価×補正率 補正率とは簡単に言えば、間口が狭い、地型が悪い、傾斜地などの悪条件を引いて、複数道路に接道しているなどの好条件をプラスしたものです。これ以外にも、実務的には、相続対策としてわざと借地権を設定する、賃貸アパートにして他人に貸すなどすると、さらに評価を30%減して良い(地域により)という規則もあります。

 もともと実勢価格より2~3割程度安い相続税路線価にさらに奥行きや地型の補正率(これは場合によりますが都内であれば最大10%減程度の掛け目)をかけて、その上、借地権割合の評価減まで取っているので、財産評価が実勢価格の半額程度になっているケースも多いと思われます。さらに、これを借入を起こして購入した場合、1億円の物件を買っても補正やら借地権割合やらを差し引くと財産評価は約5千万円となり、借入は 時価評価なので1億円、差し引き-5千万円です。不動産を買うだけで何もせずとも-5千万円の財産評価減を取ることができるのです。

 
 土地及び土地の上に存する権利の評価明細書。この用紙を使って相続税評価を計算します。国税庁のページよりダウンロード可能。

主な財産評価の特例

【広大地の評価】

 広大地とは、売却するときに道路など付設して戸建分譲することが想 定される土地です。道路などのいわゆる「つぶれ地」が生じることになると、路線価に単純に面積を乗じる評価方法では、実際に売却した時の金額よりも相続税 の評価額の方が高くなってしまうため、評価減を適用できることになっています。相続税と固定資産税評価が最大65%OFFになります。広大地補正率=0.6-0.05×(広大地の地積/1,000) ただし補正率の下限は×0.35

□どのくらい広ければ広大地となるのか?

国税庁の通達情報では広大地とは下記の面積以上とされています。

市街化区域 三大都市圏  500㎡
 同上 それ以外の地域  1,000㎡
非線引都市計画区域 用途指定なし  3,000㎡
 同上 用途指定あり  市街化区域に準じた面積

□広大地の条件

  戸建住宅用地であり、開発行為を行う場合に、道路、公園等の公共公益施設用地の負担が必要なことが前提となっています。容積率が300%未満であること。 300%以上の容積の場合はマンション用地に適すると認められ広大地の特例は適用できません。指定容積率は大きくても道路付けが悪く基準容積率は300% 未満になる場合は適用が可能なようです。

 戸建住宅とマンション用地等が混在する地域の場合の国税庁の見解は 「周辺の状況や専門家の意見等からして判断して明らかにマンション用地として適していると認められる土地を除き、戸建用地として判断しても良い」とされています。

□特例適用の実際

  広大地の特例は、開発に関わる有効宅地の減少(開発道路、公園その他)を加味してという事が前提のため、いわゆる旗竿地が区画割り上可能であれば、評価減 は適用されません。この区画割り上、というのがくせ者で、理論上可能であれば適用不可、つまり、周辺の不動産相場から鑑みると旗竿地では売れない、した がって旗竿地なんて周辺地には存在しない、といった地域でも区画割り図から旗竿地が可能となってしまうと評価減は受けられません。

 ま た、広大地の判定基準は曖昧なため、相続税申告後の税務調査において税務調査官の主観的な判断により「この土地は広大地には該当しない」と否認されるケー スも多々あり、その適用に慎重になってしまう傾向があります。保守的に適用をせずに申告するか積極的に適用するかは納税者の意思が尊重されるべきですが、相続税の場合は税務調査対象となる確率が約3割と高く、また、そのうち9割が修正申告(追徴課税)を余儀なくされているということから、保守的な扱いとする傾向に拍車がかかっています。

【小規模宅地特例】

これは主に、先祖が残した家を代々継いでいく人、または、中小企業や特に町工場のように不動産はあるけどキャッシュがない、相続の際に不動産をとられたら事業承継ができない、という中小企業救済のための税制優遇措置です。適用のポイントは
□被相続人(死んだ人)と相続人(子供)が生計を共にしていることが必要
□評価減されるのは土地だけで建物は通常の財産評価方法に従う
□複数の不動産を持っている場合でも、適用可能なのはひとつだけ

簡単に言うと
土地240平米までの自宅(都心なら売買価格で1.5億円くらい?)ならば80%の評価減。
土地200平米までの賃貸用マンション経営(都心なら売買価格で1.5~2億円くらい?)ならば50%の評価減。

つまり、自宅+賃貸アパート1棟程度の相続であれば、ほとんど相続税はかからないという金持ち優遇特例です。 日本の相続税率が高いというのはタテマエである本則の話。数々の特例を適用後はかなり安くなるのです! なお、統計上、相続税対象者は4%程度に過ぎず、一般のサラリーマン家庭には相続税は課されないようになっています。

細かい話は他社のページですが、こちらに出ています。

主な不動産関連の減税措置

【自宅に不動産取得税はかからない】

 これにも大きな特例があり、ざっくり言えば都内の1億円くらいまでのマンションなら不動産取得税はほとんどかかりません。

  都心マンションの土地の評価額は100万~300万と僅少で、かつ特例で割り引かれる率も高いので、土地に不動産取得税がかかってくるケースはないでしょ う。建物評価は1,000~2,000万となることが一般的です。建物評価は1200万円を超えると課税対象となります。建物評価2,000万円は、共有 部分の広さにもよりますが、かなりのハイグレードマンションでなければ出ないでしょう。仮に建物固定資産税評価額2,000万円の場合でも(2,000万 円-1,200万円)×3%=24万円の不動産取得税のみが課されることとなります。

 詳しくは他社のページですが、こちらに出ています。

【毎年50万円の住宅ローン減税】

 これも非常に有名な減税措置なので、車輪の再発明を避け、説明は他のページに譲ります。簡単に言えば、ローン残債が5千万円以上あれば、毎年、所得税の50万円割引が10年続く(平成22年末までに自宅物件の決済が済んで居住開始した人の例)というものです。ただし、株の収益を含め所得が3千万円以上ある年は控除対象になりません。今年3千万円以上の所得となってしまっても、来年それを下回れば再び適用可能です。この特例の減税幅は段階的に縮小され、平成25年末にて終了となる見通しです。

 詳しくはhttp://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/income/063.htm

 自宅を購入か賃貸か、どちらが得か?の議論については、上記2つの減税も含めて考える必要があります。

【投資用ビルは固都税2割減免】
(小規模非住宅用地に対する固定資産税・都市計画税の減免)

これは簡単に言えば、投資用の小規模ビルの固都税を2割減額する特例です。
http://www.tax.metro.tokyo.jp/shisan/info/hijyuu2.htm

●減免要件 平成23年1月1日時点で、以下の要件を満たす土地について減免します。

(1)土地要件
  一画地における非住宅用地の面積が400㎡以下であるもの

(2)所有者の要件

個人、資本金の額又は出資金の額が1億円以下の法人
資本又は出資を有しない法人(保険業法に規定する相互会社を除く)

●減免割合 対象となる土地のうち、200㎡までの部分の固定資産税・都市計画税の2割
●減免手続  この減免を受けるためには、申請が必要となります。

  土地の広さの要件である400㎡以下から逆算すると、~1.5億円程度の商業物件であれば、比較的どんな物件でも、誰でも受けられる間口の広い減免制度です。物件を買うと都税事務所から減免対象ですよ、という通知が来るはずですので、それに記入して返信するだけで固都税が2割も減免されます。これは必ず提出しましょう。これは東京都独自の条例で、他の都道府県では適用ありません。

富裕層は優遇されている

【日本にも見えない階層がある】

 小規模宅地の特例に代表されるように、資産数億くらいの小金持ちには優しいのが日本の税制なのです。しかも、表向きの本則では厳しいことを言いながら、特例という難解な仕組みで庶民には気付かれないように、金持ち優遇をするという手口なのです。

 中小企業の事業の用に供する資産の減税や国に貸している土地(主に郵政公社向けに賃貸中の土地)の減税は、公益性の面から百歩譲って批判の対象から外すとしても、単なるアパート経営の大家や何していない地主のボンボン子息まで優遇する必要はどこにあるのか?

 日本では、建前上、貧富の差も階級もないことになっているので、貧富の差の明示がない故に、経済的に困っている人を支援するという考えも薄弱です。(欧米と宗教観の違いもありますが)

  もちろん、経済の仕組み的に、お金持ちや権力者から資産を取り上げて、万人に平等に配ってしまうと国が破綻することは明確であり、国としても権力者を優遇 しなければならないし、権力者は権力を持ってるべきなのですが、 その陰でに、大学に進学するにも育英会や学生ローンから借金をしなければ学業すらままならない人、やる気はあっても働き口を見つけることのできない人の多 くが無策のまま切り捨てられていることは頭の片隅に入れておく必要があるでしょう。

相続税の未来

【富裕層からも徴税しなければ国の財政は成り立たない】

 平成23年税制改正案では、相続税の基礎控除を現行の5,000万円+1,000万円×相続人の人数の合計額から3,000万円+600万円×相続人の人数の合計額に変更するとしていました。この法案今年は結局継続審議となりましたが、来年はまず間違いなく可決するであろうと予想している専門家は多い状況です。

  そして、この基礎控除減額の結果、増税が予想されます。特に東京都では、大多数の自宅+賃貸アパート所有者が課税される事になると予想されるからです。例 えば家族4名(父、母、子供二名)の場合、父の相続発生時の基礎控除額は現行では8,000万円だったものが改正案では4,800万円となります。自宅+ 賃貸アパート所有者の場合、それだけが相続財産とは考えにくく、現金1千万円、死亡保険(生命保険)(これも非課税枠減少)1千万円くらいあるとすると、 不動産の評価額は2,800万円以下でないと相続税免税の分岐点を超えてしまいます。いくら路線価が下がったとはいえ、自宅+賃貸アパートで2,800万 円以下にはならないだろう、という理由から、この法案は富裕者をターゲット、特に土地持ち富裕者をターゲットにした増税法案だと解釈されています。

税務情報についてのご注意

 筆者は税理士ではなく、いわばこのページの記述は専門外です。しかし、不動産に詳しい税理士2名の監修を受けて作成した内容ですので、あからさまにおか しな点はないと思います。税理士法の規定により、ここでは一般的な税法の解説を行うまでとさせて頂き、税務についての個別相談はお受けしません。


2013/11/07更新