[11-3] 固定資産税評価マニアックス

 固定資産税の評価証明に記載されている財産評価額はどのように計算されたものなのでしょうか?通常は、計算が間違っていて是正を請求するなどということはありませんので、計算式を知る必要はないのですが、そこに計算結果があるならばそれが導かれた課程も知りたい。計算結果だけ示されると、なんか煙に巻かれているみたいで落ち着かない。このセクションはそんなマニアな人向けに調べてみました。

土地の評価

□土地の固定資産税評価額

1.まず評価の基本となる固定資産税路線価(相続税路線価とは違う)は、ここからに調べます。
http://www.tax.metro.tokyo.jp/map/index.html


調べたい物件の路線価は896すなわち89.6万円/㎡でした。しかしその下の12-189とは?

2.物件の接道を見ると「896 12-189」などと書かれています。これは、路線価格である平米89.6万円に路線価修正率表番号12-189の割引率を掛け算して、さらに画地補正率も掛けなさい。という意味です。
http://www.tax.metro.tokyo.jp/map/h21/syuseiritsu/shinjuku.pdf

  

不動産屋の9割以上は修正率というものを知らないので「路線価×面積で土地価格を見積もるとー」と言っているのですが、それは本来は間違い。しかし、ほぼ全員が間違っているので評価尺度として全員共通のものを使っていることにはなり、誤用の慣用的に機能しています。

3.それに加えて、画地補正率というのがあって、地型による補正があります。
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kihon/sisan/hyoka/02/07.htm

  新宿区の路線価修正率表によると12-189は0.977なので、0.977 × 画地補正率表より、当該物件は、奥行価格補正率8m-10m(普通商業・併用住宅地区)0.97 × 間口狭小補正率2m-4m(普通商業・併用住宅地 区) 0.9 となり 0.852921 が補正掛け目となりました。本来は、これとは別に前年度よりも地価が上がっている場合は価格据え置き、というようなルールがあるようなのですが、地価が上 がってるということはないだろうと思って今回は無視しました。計算結果は0.852921×平米89.6万円×34.85㎡ =約2663万円 なので微 妙に(14%くらい)計算が合わないのだけど、だいたいこんなイメージで土地の評価額が出ました。

□固定資産税課税標準額

 しかし、評価証明を見ると、評価額とは別に固定資産税課税標準額と言うのがあり、この課税標準額というのはどのように計算してるのか?という疑問が沸きました。
http://www.tax.metro.tokyo.jp/shisan/kotei_tosi.html#k_11
  ここに書いてあるのですが、まとめると、商業地だと評価額に0.65を掛け算しろ、ということみたい。この割引率は都市により若干異なる模様。 \23,282,410×0.65=\15,133,567となって、評価証明に書いてある14,654,903円とは、またもや3%くらい合わないのだ けど、ざっくりこんな感じ。これ×1.4%=固定資産税、0.3%=都市計画税となります。

 まったく、土地の評価ひとつするのに、こんなに複雑なシステムが稼働しているなんて、無駄もいいところですね。

建物の評価

 さらに!建物は、もっと面倒。

 家屋単位当たり再建築費評点比準表という一般非公開(都庁で閲覧はできるらしい)の書物と照らし合わせて、単価(再建築評価点数)を決めていきます。この比準表は、木造・2階建ての普通の家なら平米何点で評価、のような設定事例集になっていて、似たようなパターンを探して当てはめることで、新築建物を評価しているようです。この点数を1.05倍すると概ね木造物件に対する財産評価(平米単価(円))、1.1倍すると非木造(RCや鉄骨)の財産評価になるとのこと。

 なお、1,000平米を超える大規模建物の場合は、前述の事例集との類似パターンマッチではなくて個別に評価するため、竣工図書から材料一覧を引っ張ってきて、それぞれの部材単価を積算していくそうです。固定資産税(家屋)評価基準(地方財務教会)という書物があって、それにフローリングは1枚いくら、手すりは1個いくら、など設備の価格明細が載っているのでそれを参考に部材単価を評価します。想像しただけでも面倒な作業ですね。

 そのように新築の価格を算出しています。その結果、ざっくり言えば、新築費用実費の60-70%が評価額になるのだそうです。だったら最初からそうしてよ・・。と思わずため息が出ます。

建物の経年減価

そして、建物は経年により減価するという面倒な事態が発生します。しかし、この経年減価という考え方は、融資の現場でも頻繁に出てくる不動産の基本知識と言って良い内容なので、知っていて損はないでしょう。

  

この表に従い減価補正するようです。さらに経年劣化しているにもかかわらず再建築費用が上がっている(建物は古くなって価値が下がっているが、北京オリン ピックの影響で鉄骨の値段が上がっていて、経年分の値下がり以上に材料価値が上がっている)ような場合は、減価されずに前年度と同じ評価額で評価されたり するケースもあるそうな。あー、めんどくさ。

 そこで簡便な計算方法はないのか?という切り口で発見したのがこちら。東京法務局管内新築 建物課税標準価格認定基準表。名前長すぎですね!田舎に行くと評価証明が出ない物件というのがあって、そういう物件のための計算方法なのだそうです。全部 これで計算すりゃいいんじゃねーの?と思うんですけどね。
http://houmukyoku.moj.go.jp/tokyo/static/nintei-kijyunhyou0904.pdf


  当該ビルで言えば、鉄筋コンクリート11.4万円×127.11平米×築17年(/0.9558*0.5717)=約866万円 となり、評価証明の約 997万円とは15%くらい合わない(そもそも簡便法であるため、というのと、本物件は施工単価の高い地下室をがあるからかな?)のですが、なんとなくの 感覚は掴めました。

 土地も建物も15%くらい誤差が出てしまって理由がよく分からないので、また時間あるときに都税事務所に聞きに行ってこようかなと思うのですが、この評価システムって、とにかくくだらないと 思います。もっとシンプルな課税方法にすれば税務署職員も不動産鑑定士も減らせてみんなハッピー。そもそも相続税路線価、固定資産税路線価、公示価格っ て、税金使って何度も同じような調査するな!と言いたい人は多いのではないでしょうか。これでは新興国のシンプルで利便性の良いシステムに勝てないのでは ないでしょうか。そして、こんな複雑な仕組みでは外国人には到底理解できないので、日本の課税制度や不動産行政は不透明と言われても仕方ないと思います。もっとシンプルで無駄のない国になると良いですね。


2013/11/07更新