[1] 日本と海外不動産の違い

海外不動産の心得

経済を大きな視点で見ると、東京に不動産を買うというのは、日本人が都心を外して郊外に投資しているようなもので、世界の中心は東京ではありません。海外の都市には東京よりも投資対象として魅力的な街がいくつかあります。

海外9カ国、16都市で投資物件を見てきた筆者に言わせれば、ローンさえ出るのであれば、海外投資はあり得る選択肢です。この章では、海外不動産投資に共通する基本的な考え方と日本との違いをお伝えします。

何が日本と違うのか

1.意外に借入は起こせる

日本人の感覚からすれば、観光ビザで入国した外国人が不動産を買うのに融資する金融機関はないだろう、と思うのが普通なのですが、海外では、場所にもよりますが、意外に自己資金を30%程度積めば、地元の銀行、HSBC、Citiなどで融資を受けることが可能です。さらに、「クリエイティブな融資」というのがあり、売り主が買い主に対して購入費用を融資する、返済は金利のみで元本は物件売却時に返済など、日本では考えられないような融資の方法もいろいろあります。

2.しかし、賃料収入でローンは返済できない

 海外では日本と違って、借入金利が高いです。というより日本が安すぎるのです。さらに表面利回りで10%も回るような物件は、日本人が名前を知っているような大都市には、ほとんど存在しません。つまり、利回りは低いのに借入金利は高い。すなわち、キャッシュフローは赤字。となります。なぜそんな、赤字になるような物件を買うのだ?という根本的な疑問がわいてきますが、日本以外の国にはインフレ率というものがあり、不動産は放っておけばインフレ率以上に値上がりするというのが普通の考え方なのです。中国、トルコ、イスラエルなど多くの国で、値上がり益の追求が不動産投資をする理由となっています。

3.現地でも税務申告が必要

海外で不動産を購入した場合、日本で物件を購入したのと同様に、メンテナンスにかかった経費、渡航費用、消耗品費、減価償却など、一通りを日本での税務的な費用として計上できます。そして、これにはお得な裏技(後日リンク作成予定)もあります。

それに加えて、現地での税務申告も必要となり、たとえば、カリフォルニア州(アメリカ)で誰かに申告を依頼するのであれば、年間で数百ドル程度の申告費用が必要です。ちなみに、これを日本在住の国際税理士なる人たちに依頼すると、20万円くらいに跳ね上がりますので、コストを抑えるには、電話やメールで現地の人とやりとりできる英語力は必須です。

4.日本で減価償却が取れる

サンフランシスコなどに良くある木造で築100年なのに2億円というような物件を買った場合、日本の税法でも木造の築100年、当然に耐用年数オーバーなので(建物部分のみ)4年の定額法で償却できる(都内のとある税務署に匿名で確認したところ、規則通りなので問題ないとのこと。ただし、グレーゾーンなので後から否認される可能性もあり)。

区分所有なので土地の価値はほとんどないと仮定すると、購入価格のほぼ全額が償却対象となり得ます。海外不動産は日本の税務申告にも大きく影響を与えます。ただし、日本の法人名義で海外不動産を所有するのは非常に手数がかかるので、金額が小さいうちは個人名義での取得を前提に考えると良いでしょう。

5.居住権

ごく一部の国(マルタなど)では、その国に不動産を購入すると永住権を取得できるケースがあります。日本の有事に備えて海外に居住権を取得するというのもリスクヘッジの一つかもしれません。

通常は、不動産の購入とは別に、当該国の経済や雇用に貢献する投資を2000万円~5000万円くらい(アメリカ、カナダ、オーストラリアなど)、もしくは数億円単位の金融資産を証明(シンガポールなど)することができれば永住権を実質的に購入できるシステムになっています。

6.不動産業者の信頼性が最重要

私がトルコではいくら条件が良くても不動産は買えないなあと思った理由はこれでした。

国によっては、訴訟になった場合に理由の如何を問わず外国人が勝てる可能性はほぼゼロであるなど、様々な障壁があります。日本と海外のシステムの違いによる問題を担保するのは、現地の不動産業者の信頼性のみです。日本人のエージェントを現地で探せるのならば、その方が問題は少ないでしょう。

さらに、そのエージェントに物件管理は一任するわけで、彼らがテナントを一生懸命に探してくれて、コストの安い修理の方法を提案してくれて、面倒くさがらずに英文メールのやりとりをしてくれなければ、大変なトラブルになります。◎信頼できるエージェントとプロパティマネージャー(物件管理責任者)を見つけるというのが海外不動産投資の一番の鍵なのです。

基本マナー

1.複数の業者に声を掛けてはいけません

これは非常に重要。欧米系の国では複数のエージェントに声を掛けたり、競合させたりするのは、マナー違反です。最初にDo you work with other agents/Realtors?(他に付き合いのある業者は?) と聞かれます。信頼できるエージェント一人とだけビジネスを進めてください。

海外では、基本的に、不動産に限らず客と業者は、それなりの信頼関係と尊敬(respect)で結ばれており、お客様は神様ではなく、プライベートな話も合間に挟む、人と人との関係です。お金を払う側が上、もらう側が下という日本の商習慣とは違います。日本と同じ感覚で接してしまうと、失礼なやつだと思われますので気をつけましょう。金融業に限らず、レストランやケーブルテレビのオペレーターでも似た感じです。

私もアメリカで次のような警告をもらったことがあります。
Real estate agents operate by a code of non-competition between other agents, as such, no reputable agent will work with a client if they are aware that they are consulting with or working with another agent. It is frankly against our moral code and as I respect that code(後略

2.居住中でも内覧に協力するのが一般的

基本的に、欧米圏では、人が住んでいるところに見ず知らずの買い主が内覧しに来るということに、それほど抵抗がありません。賃貸中のアパートでもテナントに一声掛ければ内覧できてしまうのが一般的です。内覧に協力しなければならないと契約書に盛り込まれている国もあります。

たとえば、アメリカであれば、自分がテナントとして住んでいる場合、理由を説明して内覧を断ることもできますが、ケチな住人だなあ、くらいの印象は与えるかもしれません。それでもテナント側に不利益はありませんが、彼らは、宗教的に隣人に協力するのは「当たり前」という感覚の人が少なくありませんので注意が必要です。部屋で赤ちゃんが寝ているので静かにしてほしいと頼まれたり、内覧に来たバイヤーと住んでいるテナントが言葉を交わすということも普通です。

なお、ベットルームはプライベートな場所です。日本でもベッドルームには人を入れたくないという感覚には、あまり違和感はないと思いますが、海外ではもっとセンシティブです。気をつけましょう。


2011/07/14更新