[U3-2011] ラスベガス(不動産編)

ラスベガスとは

【カジノ、展示会、そして不動産の街】

 Las Vegas は アメリカ Nevada州では一番大きな都市で、全米では28番目の人口を抱える街です。そして、説明するまでもなくカジノを中心とした観光都市です。

マカオとの違いをひと言で言えば、マカオはカジノ(と風俗産業)だけですが、ラスベガスは大規模な展示会やセミナーの誘致に成功し、カジノ以外の目的で訪れる人も多いのが特徴です。


ラスベガスで一番有名な看板

実際、私が今回訪ねた2011年6月にも、Electric Daisy Carnival 2011 という若者向けの音楽イベントをやっていて、Holiday Innなどの安宿も含め、どこのホテルも満員でした。ほか、コンピュータ技術関連展示会のThe International CES などのイベントもが有名です。ホテルは何もない平日は$60程度でストリップというメインストリートの大型カジノホテルに宿泊できますが、大型イベントと 重なる繁忙期は$800程度に価格が跳ね上がることもあります。

最近では、全住居の20%がforeclosure(差し押さえ)になっている。住宅購入者の70%が評価損を出している。など、不動産市場がメルトダウンしている街としても有名になっている気がします。

なお、ラスベガスに来ると、恐らくみんな考えるのが、このゲーム機やネオンサインなどの無駄な電力は、いったいどこから来ているのか、ということなのですが、Hoover Damというダムの水力発電で作られた電気が多く、思ったよりエコフレンドリー(?) 火力じゃなくて良かったですね!

どんな人が住んでいるのか?

【ラスベガスには観光業従事の低所得者層が多く住む】

 アメリカで不動産を見る際に重要なのが、どんな人たちが何の目的で住んでいるのか?です。

日本とは違い、スペイン語を話す文化圏の人たち、チャイナタウン、白人のお金持ち、ナレッジワーカー、ブルーカラーワーカーなど、階級や人種の違いで、犯罪率、予算が全く違うためです。それぞれ違う世界の人々と考えても良いくらい生活スタイルが違います。

そのため、この地域の物件は、どんな人たち向けなのか?ということを想像するのが非常に重要なのです。また、ラスベガスは上の地図のように周囲に砂漠しかなく、他の街へのアクセスがないために顕著ですが、アメリカの街は、地域ごとに完結していて、他の町に働きに出る人がいないので、街にどれだけの雇用があり、どれだけ人口が増えているのかがとても重要な指標となります。日本とは違い、埼玉の奥地に住居を作っても、東京(地域外の街)には無数の職場があるから値段が安ければ東京で働く人が買うかも。という図式はラスベガスでは成り立ちません。近隣に仕事がなければ人口は増えない。シムシティでは確かに、このようなルールになっていました。アメリカではそれが現実社会に当てはまる重要な要素です。

さて、話を戻すと、住んでいる人の多くは、City Centerなどをはじめとする巨大なカジノホテルの従業員やその周辺産業です。年収の中央値は3万ドル以下で、ブルーワーカー層が多く、サンディエゴなど他の都市と比較しても住人の所得レベルは低いのが特徴です。


この図の作成年月は不明でしたが、建設工事従事者が大変に多いので景気の良かった時期なのだと思います。次いで、ホテルと飲食、エンターテイメントが大多数を占めているという、他の都市ではあり得ない、職業構成(demographic)となっています。

ラスベガスの住人の収入分布と持ち家の価格分布

比較としてこちらはサンディエゴ

ただし、この街を訪れる観光客は富裕層ばかりです。なぜなら最も掛け金の低いルーレットやスロットマシーンで遊んでいても、一夜で500-1,000ド ル程度負けるのは私も含めて普通なので、3日も滞在してカジノに入り浸っていれば、数千ドルを容易に放出できる設計になっているのです。また、レストランのレートも一人$50程度~と安くはありません。

人口は増えているのか?

【公式には10年前と比べて人口の伸びが著しいことになっているが、バブル崩壊後は減少】

 アメリカの人口統計であるUS Censusは、全数調査は10年に一度、間の年は推計のみを計算しているようです。そのため、2000年と比べて2010年の人口は何パーセント増えて いる、という超長期のデータが主に使われており、はっきり言って意味がありません。

きちんと細かいところまで見ている人は、「He has estimated the state’s population peaked with a July 2008 estimate of 2,738,733. Comparing the estimate against the new census, Nevada has lost about 38,000 people.」 このように、国のやっている統計的には人口の増加が著しいことになっているが、サブプライムのバブルがはじけた後、人口は減っているというような分析をしている人もいます。一応、私の前職は統計調査絡みだったので、このへんはしっかりさせておきたいところです。個人的には、2006年で建設工事絡みの仕事が一通り終わってしまったので、仕事は大幅に減り、人口もそれに比例して減っているのは自然なことだと推測しています。

2009年のUS Census Estimatesによれば、Las Vegas のあるClark County(地域名)には819,409戸のコンドミニアムや戸建てがあるとのことです。現地の物件をいくつか見たところ、ほとんどの物件は2007年 頃までに竣工を終え、バブルがはじけた、それ以降は新造されていませんので、この数値はほぼ最新のデータと言えます。

そのほかの数値としては、次のようなところでしょうか。
Population in July 2009: 567,641 ラスベガスの人口は56万人
Persons per household, 2005-2009 2.68 一世帯当たり2.68人の家族構成

バブルの爪痕

【不動産価格は7割下落した地域も】

 人口動態が重要とは言え、外国の地方都市の人口を示されても、いまいち何を読み取れば良いのか分からない、というのが本音です。それらをわかりやすく不動産と関連づけしたものがこれらの図です。サブプライム問題でバブルがはじけた後、物件価格はピークから6-7割も下落、2008年以降は新規に着工された物件はほとんど無し、という散々な状況です。なお、他の都市ではここまで急激な物件価格の下落は観測されていません。

 

【City Centerもバブルの生んだ怪物】

 MGM+Dubai Worldの共同プロジェクトであるCity Centerは現在のラスベガスの実質的な中心地で、「It is the largest privately funded construction project in the history of the United States.(米国史上最高にお金のかかった民間プロジェクト)」 「With a total cost of approximately $9.2 billion(約1兆円かかった)」とWikipediaにあるように、とにかくスゴイです。個人的には、世界の建設プロジェクトの中で最も見ておくべ きものの一つでお気に入り物件です。

ちなみに、City Center内にあるHarmon Hotelという建物は、完成していますが、耐震か何か構造上の欠陥が見つかり使われていません。取り壊しの予定とのことです。バブル期に企画して建設中にバブルがはじけた物件で手を抜いた結果によくあるパターンだと思います。

【MGMが2007年に573億円で買った更地は未だに更地のまま】

 今回見に行った、Allure (200 W Sahara Av Las Vegas)という構想コンドミニアムから見える、この空き地、MGMが2007年に573億円で買った更地です。Maxim Casinoというカジノホテルを建設する予定だったのがバブル崩壊で計画変更、2011年6月現在まったくの更地です。


http://en.wikipedia.org/wiki/MGM_Resorts_International
On April 19, 2007 the company announced that it planned to purchase a 7.6-acre (31,000 m2) site from Concord Wilshire Partners for $130 million and a 25.8-acre (104,000 m2) site from Gordon Gaming for $444 million. The two parcels give the company complete control of the southwest corner of the Sahara and Las Vegas Boulevard intersection. When combined with underused parts of the Circus Circus site, the company will have a 68-acre (280,000 m2) site for future development. The Concord site had been the proposed location for the Maxim Casino.[17]

郊外の戸建てを見学

【バブル期に勢いで作った砂漠の真ん中の家】

 もう、ホントによくこんなところに家を建てたなあ。というレベルのプロジェクトがたくさんあります。街外れのコミュニティでは、竣工から5-6年以上 たった今でも200戸程度のコミュニティを売り切るのに苦戦しているようです。※アメリカではコミュニティと言って200件,300件などの戸建てをまとめて新築し、街ごと新造するのが一般的。舞浜にあるローズタウンのようなイメージ。

今回訪ねた戸建てのコミュニティは、下記の2つです。だいたい両方とも同じです。
Maplewood Springs – Pinnacle Homes – Las Vegas, NV
Tierra Summit homes

 

建設地はストリップ(カジノホテルなどの中心地)から車で10分くらいの通勤便利な場所ですが、完全に街外れで徒歩圏に店などはありません。写真のようにほとんどはすでに売り切った様子です。

この写真の通り、砂漠の真ん中に作っているため、窓からの眺めは壮大な砂漠ビューです。野良ドンキー(ロバ)が出る(!!)と言っていました。オオカミまでは出ないと言っていました。良かったですね。この写真の場所は、おそらく市が所有していて将来的には公園になる予定の場所だが、いつ実現するのかは不明(!?)という頼りない将来展望を語られました。おそらく計画は中止となることでしょう。

セールスオフイスと街並み。同じ家でも2007-2008年頃に買った人は現在の倍以上の金額を支払っています。近所同士で金額差が問題になってトラブルになることはないだろうとのことです。

 

中の様子。印象的だったのは、壁がとても安っぽいところ。蹴っ飛ばしたら穴が空きそうな感じでした。とは言っても新築なので、慣れれば別にOKかもしれません。

それでも家具をキレイに入れてモデルルーム化すると悪くない仕上がり。

すでに土地を仕入れてしまったので、工事は現在も進められています。本当はやりたくないのだと思いますが、作りかけで放置するよりは良いのかもしれませ ん。1戸作るのに3ヶ月かかります。砂漠の土地なんてタダみたいな値段で仕入れてるんじゃないの?と思ったのですが、こんな砂漠の更地でも、バブル期には 1エーカー = 4046㎡ あたり$750K、すなわち坪6万円程度はしていたそうです。どうでしょうこの価格。安いのか高いのか、もはやよく分かりません。

価格とスペックはこんな感じなのですが、街の中心部に$50K-100K以下の中古がゴロゴロしていることから考えると、この場所で$170K以上というのはあまり割安感がありません。エージェントが書いた$2200-2300/月の賃料予測はちょっとウソだと思います。そんなには取れないでしょう。この場所でテナントを探すのはとても大変だと思います。

では、中心部の激安中古を買ってみたらどうなのか?という話にもなったのですが、激安物件のあるコミュニティは管理組合が破綻していたり、どうしようもない状況に陥っているケースも多いのでお勧めできないとのことでした。

中心部のコンドミニアム

ストリップ沿いの中心地には強大なホテルがいくつも建っていて、日本の高層マンションくらいの普通のサイズの建物では見落としてしまうくらい、それぞれのホテルが巨大でユニークなデザインです。

しかし、意外にも高層コンドの数はそれほど多くありません。主要なプロジェクトをリストアップしてみました。

□中心地
The Residences at Mandarin Oriental (3752 Las Vegas Blvd, SouthLas Vegas)
Veer Towers (3780 S Las Vegas Boulevard Las Vegas)
Park Towers (1 Hughes Center Drive Las Vegas)
Turnberry Towers (222 Karen Avenue Las Vegas)
The Martin (4471 Dean Martin Drive Las Vegas)
Panorama Towers (4525 S. Dean Martin Las Vegas)
Turnberry Place (2857 Paradise Road Las Vegas)
Sky Las Vegas (2700 S Las Vegas Blvd Las Vegas)
Allure (200 West Sahara Las Vegas)
Metropolis (360 E. Desert Inn Las Vegas)

BINGの地図が意外に高性能でした。

□中心地以外
The Meridian 低層リゾート型 (260 E Flamingo Rd, Las Vegas)
Boca Raton Las Vegas South Strip Condos
Juhl
Newport Lofts
Soho Lofts
The Ogden (Streamline Tower)
Loft 5
Manhattan
One Las Vegas
Park Avenue

□ゴルフ場隣接
The Regency Towers (3111 Bel Air Drive, Las Vegas)
One Queensridge Place (9103 W. Alta Drive, Las Vegas)

□ホテルコンド
MGM Signature Towers (135 E Harmon Ave Las Vegas)
Palms Place Las Vegas (4381 West Flamingo Road)
Platinum 211 E Flamingo Las Vegas
Trump Las Vegas 2000 Fashion Show Las Vegas
Vdara 2600 W. Harmon Las Vegas

中心地の高層コンドミニアムをもう少し詳しく調べたのが次の表です。(ちょっと詳しく調べ過ぎ?)

 

中心部のメジャーなコンドの総部屋数は4,308です。恐らく、探し漏れはないと思いますが、あったとしても計5,000部屋程度の高級コンドが供給されている計算です。この部屋数は、折からの不況で今後5-10 年増えることはないでしょう。なお、東京23区で2011年5月に新築分譲が開始されたマンションの戸数は約2000部屋です。これには小規模なマンションも含みますが、そう考えると、合計5,000部屋の供給数というのは、決して多すぎるようには見えません。

価格も、US$=80円で平米換算すると平米15万円程度~と感覚的にはかなり単価は安めです。東京の同クラスのマンションの1/4~1/5ですね。実際、Allureの販売の人が言うには、SqFtあたりの建築コストよりも現在の販売価格の方が安いそうです。

しかし、忘れてはならないのが、これらのコンドのほとんどは、南カリフォルニアの富裕層などがセカンドハウスとして購入するもので、実需がほとんどありません。5,000部屋を供給は限られていると見るか、実需がないのに造り過ぎと見るかは判断が分かれるところで、いろいろな人に聞いてみたのですが、no body knows(それは誰にも分からない)という回答が支配的でした。

実際、The Martinの販売員が言うには、2007年に違うデベロッパーが建設して2010年10月に買い取ったが、まだ30%しか売れていない。とのことです。

賃貸はこんな感じのようですが、どのくらい容易にテナントが見つけられるのかは分かっていません。物件によってはバケーションレンタルを禁止していて最 低12ヶ月の賃貸期間をもって賃貸市場に出さなければならないと定めているところもあります。そうなると、どういう人が住むのか想像が付きません。

□The Martin (4471 Dean Martin Drive Las Vegas) の内覧

一番右の縦長の建物です。左の2棟はPanorama Towersです。営業の人が言うには、Panorama Towersよりも品質はよいとのことで、誰だか忘れましたが、世界的に有名なハリウッド俳優の誰かも買っていると言っていました。

共有部分や室内のグレードは非常に良いです。窓からはカジノホテル群が見えます。

□Allure (200 West Sahara Las Vegas)の内覧

 

モデルルームのアジア系テイストは悪くない仕上がりでした。装飾無しの部屋に家具などを入れて、モデルルームと全く同じ仕上がりに作り込むには+20K程度のオプションで対応可能とのことでした。

窓から見えるのは、Turnberry Placeのビル4棟とMGMが2007年に573億円でカジノホテル用地として仕込んでそのまま放置されている更地です。

まとめ

私の感覚としては、景気の回復局面では、郊外の戸建てよりも、これらの高級コンドの回復が早いだろうと見ているのですが、なにぶんラスベガスに限った話ではありませんが、新築をまだ分譲中なのにもかかわらず、同コンド内で任意売却や差し押さえ物件がたくさん売りに出ていて、さらには、差し押さえ物件を買った新たな買い手がもう一度支払い不能に陥り任意売却中という冗談のような話もたくさんある状況です。いつになったら健全なマーケットに戻るのかは想像が付きません。

アメリカの不動産事情はさすがはサブプライム問題の本場、日本に伝わってくる話よりも相当悪いように私の目には映っています。ラスベガスの不動産は、景気が上向けば上昇余地は高いと思いますが、予想が外れたときの下ぶれも大きく、ここでは不動産すらもギャンブルだと言えます。


2011/07/25更新