[A1-2012] フィリピン(マニラ・セブ)

2014/04/23更新

訪問日:2012年2月

近代化の道をたどっているフィリピン

今回は、不動産を見るのがメインではなかったので情報量、写真ともに少なめですが、いくつかの現場を見てきました。

フィリピンはどんな国?

実際に訪問してみたマニラは、英語が通じる昔の中国という印象で、高級ホテルに滞在する以外、街中に出ると、交通渋滞と排気ガス、タクシーの過剰請求、マニラの中心地にも残されているスラムなど、多くのものが非常に不快です。クアラルンプールに雰囲気は似ていますが、もう少し貧しい雰囲気があります。

空港に降りて、まず目にするのが、児童買春は犯罪です!という告知。マカティ市のようなCentral Business District(大手町のような近代的な街並み)ではエマージング国の熱気を感じることができますが、中心地を少しはずれるとスラム街のバラックで多くの子どもたちが明日の糧を得るために働いています。

 

タクシーの運転手が言うには、月収は4万円に満たず、家賃は4,000円程度、子どもは6人で、みな学校に行かせているとのことです。月収4万円で6人の子どもを養えるというのは想像できないのですが、彼はそう言っていました。ただ、フィリピンでは結婚するまでは親と同居するというのが基本的な生活様式のようで、親族一同で家計を支え合って生活しているのかなと思いました。

そして、タクシーが赤信号で止まると小学生くらいの物売りの女の子が花輪を売りに来ていました。なお、Wikipediaによれば法定最低賃金は約400ペソ(720円)/日だそうです。

社会資本の無駄遣いも多いようで、セブ島のラディソンホテルとして使われている建物は10年前から建っており、いくつかのホテルグループが開業を試みたがライセンス契約が難航した関係で8年間は空きビルのまま、ようやく2年前にラディソンホテルが開業にこぎ着けたという日本ではあり得ない事態も。

フィリピン経済を牛耳る中華系財閥

フィリピンの経済を動かしているのは、フィリピン人ではなく少数の中国人でした。

 

一人は1946年に靴の修理屋を当地で始めたヘンリー・シー。彼は中国系フィリピン人ですが、今ではSM Prime Holdings の代表として、アジア最大級のショッピングモールThe Mall of Asia をはじめ30カ所を超える大型ショッピングモールをフィリピン全土に展開しています。

 

SMショッピングモールの中。SM applianceのキャッチフレーズは、our name is your guarantee となっていたのが印象的で、SMグループのブランド力の強さをうかがい知ることができます。日本で言えば高度経済成長期の三菱グルー プのような位置づけなのでしょう。

フィリピンの街を見渡せば、SMのロゴが入った店やビジネスが非常に多いのが観光客の視点からでもすぐに分かります。リテールマーケットを独占するだけではなく、SM Development Corp(SMDC), Banco de Oro(BDO)など、当地で最大の不動産デベロッパーと銀行も所有しており、フォーブスの富豪ランキングにもランクインしています。

フィリピン経済の主役のもう一人は、同じく中華系フィリピン人のルシオ・タンです。フィリピン航空、同国最大のタバコ会社、同国第二位の飲料会社、 Philippine National Bankなどの銀行、Eton Properties Philippinesという不動産デベロッパー、そのほか多くの会社を保有しています。

今まで訪ねた国の中で、ここまで中国人のパワーが強く現地人が飲み込まれている国は、初めて見たので驚きました。現地の不動産業者によれば、フィリピン人は商才がないからだめ。中国人と戦うパワーはないとのことでした。

当然、これらの財閥は、政治との結びつきも強く、財閥の圧倒的な経済支配力をもって国家運営に強く干渉していることは容易に推測できます。World on Fire なる本によれば、フィリピンでの中華系フィリピン人の人口割合は1%しかないのに、経済の60%を彼らが牛耳っているとのことです。また、インドネシアや他の東南アジアも同じような状況であるようです。実は、中国の強さは、中国本土以外にも触手を伸ばし着実にビジネスで利益を上げているところにあるのかもしれません。

http://en.wikipedia.org/wiki/World_on_Fire
In the Philippines, Chua explains, the Chinese Filipino is 1% of the population but controls 60% of the economy, with the result being envy and bitterness on the part of the majority against the Chinese minority—in other words, an ethnic conflict. Similarly, in Indonesia the Chinese Indonesians are 3% of of the population but control 70% of the economy. There is a similar pattern in other Southeast Asia nations.

セブ島のアヤラモール。SMショッピングセンターよりもハイエンド指向ですが、日本で言えばイオンモールと同じくらいのレベル感。

この2ファミリー以外では、フィリピン第三位の銀行であるBank of the Philippine Islands(BPI)やセブ島にAyalaショッピングモールを展開するAyalaグループなどが目立つところです。

マクロ経済指標

 
フィリピンを語る際に言及しておくべきは、インフレ率と金利の高さでしょう。ニッセイ基礎研究所の資料を見ると、翌日物貸出金利は6.5% CPIは年間で概ね6%ずつ上昇していることが分かります。
http://www.nli-research.co.jp/report/flash/2011/flash11_062.pdf

複数のデベロッパーから案内してもらった住宅ローンのレートも貸出期間15年で変動8-10%など、日本とは一桁違う金利水準となっています。つまり、不動産価格も年間で6-10%くらいは最低でも上がってくれないとインフレに負けてしまうわけです。

仮に不動産価格が毎年6-10%ほど価格上昇したとしても、インフレ控除後のペソ建てで考えれば実質価値としてはトントンなのですから、不動産エージェントの言う、毎年価格が上がる(名目価値が上がる)から良い投資タイミングだ。という宣伝文句は、ある意味では当然の価格上昇であるわけです。

 

マニラやセブなどの市街地では、多くのコンドミニアムを建設中。

不動産融資の状況 HSBC Cebu Business Park支店

不動産投資に対する融資状況を調べました。

□必要な資格

・HSBCプレミアの口座を開設すること
口座開設には400万ペソ(720万円)の預金をすることが必要。日本にあるHSBC銀行のHSBCプレミア口座でも良いようです。(なお、日本の場合は開設に1000万円必要)

□必要な書類は次の通り

・ローン申請フォーム
・既婚の場合は結婚証明書
・パスポート
・Mortgage Redemption Insurance申込書(団体信用生命保険のような制度)
・火災保険申込書
・Copy of Transfer Certificate of Title(登記移転の確認書)
・1年分の確定申告書(自営業者の場合)
すべての書類は英訳が必要になります。まともな翻訳会社が翻訳したものであれば受け付けられると思うとのこと。自分で翻訳はよろしくないようです。

□貸出条件

・フィリピンペソ建て、もしくは米ドルなど外貨建てでの貸付
・米ドル建ての場合は変動金利で3.99%(2012年2月現在) ※ドル建てで借りた分をペソに両替して物件代金を支払う
・貸出期間は最高20年
未竣工物件(preselling)は販売価格の60%
・竣工済物件は別途評価の仕方あり

フィリピン居住の連帯保証人がいない限りは、国内銀行からの通常の融資は受けられない規制があるとのことで、HSBCのみが外国人向けに融資を行っています。しかし、自己資金40%必要、HSBCプレミアの口座を維持する必要があることを考えるとレバレッジはあまり利かないと考えるべきあり、融資条件的には魅力はありません。

不動産に係わる税金と費用

現地人の不動産エージェントに不動産(real-estate)に関する税金を教えてほしいと頼んだらestate tax(相続税)の資料を送ってきました。単語は似ていますが全然違います。フィリピンに限らず、海外の不動産エージェントは緻密さに欠ける人が多いです。
http://www.bir.gov.ph/taxinfo/tax_income.htm#25147

□インカムゲインとキャピタルゲインの税率

政府発表の資料によれば
C) For Non-Resident Aliens Not Engaged in Trade or Business
1. On the gross amount of income derived from all sources within the Philippines  25%
2. On capital gains presumed to have been realized from the exchange or other disposition of real property located in the Phils. 6%

とのことですので、インカムゲインに25%, キャピタルゲインに6%が課税される(日本に住む投資家のような非居住者の場合)と思われます。所有者が現地人の場合は、インカムゲイン(所得)が50万 ペソ(約100万円/年)を超えると累進課税の最高税率である32%が適用となる模様です。累進課税の閾値最大が100万円というのには驚きです。中流階 級以上の人は、皆32%を支払えというシステムなのでしょうか。

※なお、現地在住の日本人不動産エージェントのWebによれば、日本人が現地に購入した場合のインカムゲインは30%となっていました。どちらが正しいかは未確認です。

□キャピタルゲインの計算の仕方は要注意

 同日本人エージェントのWebサイトによれば、キャピタルゲイン課税は、転売益に対して6%かかるわけではなく、売却価格に対して一律6%であることに注意喚起しています。購入価格がいくらだったかは考慮されないようです。さすがにそんなわけないだろう?と思い、他のサイトもチェックしてみましたが、他でも売却価格または路線価(Fair Market Value)のどちらか高い方×6%であると計算例を示しています。これは名目上はキャピタルゲイン税ですが、実質的には流通税ですね。これには驚きです。

How to Compute Capital Gains Tax on Sale of Real Property

Sample computation of capital gains tax on sale of real property

Example: Mr. Santos sells a residential lot in Pasig City with a floor area of 200sqm on cash with Selling Price of P3 Million. Mr. Santos is not engaged in a real estate business. The proceeds from the sale will be used by Mr. Santos for his trip to US and other personal expenses. The following are the fair market value information of the real property:

1. Fair Market Value as determined by BIR Commissioner (Zonal Value/BIR Rules):
1a. Land: P1,600,000 (let us say BIR Zonal value is P8,000/sqm [200 x 8,000=1,600,000])
1b. Improvement: P1,200,000

2. Fair Market Value as determined by Provincial/City Assessor’s (per latest Tax Declaration):
2a. Land: P1,400,000
2b. Improvement: P1,300,000

How much is the Capital Gains Tax?

Answer/solution:

Step 1. Determine the highest fair value (FMV):

Total FMV1 (1a + 1b): P2,800,000
Total FMV2 (2a + 2b): P2,700,000
Total FMV3 (1a + 2b): P2,900,000
Total FMV4 (2a + 1b): P2,600,000

The Highest FMV is FMV3: P2,900,000. This is the FV we will use in the step 2.

Step 2. Determine the higher between FMV and Selling Price:

FMV = P2,900,000
Selling Price = P3,000,000

The higher value is the selling price P3,000,000. This is our tax base for computing Capital Gains Tax.

Step 3. Calculate Capital Gains Tax.

DST = P3,000,000 x 6%
DST = P180,000

□固定資産税

 こちらも同日本人エージェントのWebサイトによれば、マカティ市(日本で言う丸の内エリアのような近代的なビジネス街)では、平米あたり 200~300ペソだそうです。私が現地で会ったフィリピン人の不動産エージェントは、固定資産税などはかからないと言っていましたが、相手もあまり英語がうまい訳ではなかったので、おそらく誤り。実際には課税されると思われます。

□付加価値税

 320万ペソ(576万円)以上の物件には、12%のVAT(付加価値税)がかかります。価格に含まれて提示されます。

http://real-estate-phils.blogspot.com/2011/11/bir-increased-threshold-amount-for-vat.html
Effective January 1, 2012, the sale of a residential lot which is PHP1,919,500.00 and below (Current – PHP1,500,000 and below), and the sale of a residential house and lot which is PHP3,199,200.00 and below (Current– PHP2,500,000) are exempt from VAT.

□登記費用

登記費用(Documentary Stamp Tax+ Transfer Tax+ Registration Fee)として合計2.25%かかる様子です。Transfer Taxはマカティ市では0.6%など、概ね0.25% ~0.75%の間でエリアにより若干違います。なお、Transfer Taxは、路線価(下記の英文のFMV)または売買価格のいずれか高い方を基準に計算されるようです。

http://real-estate-guide.philsite.net/taxes.htm
The SELLER pays for the:
Capital Gains Tax equivalent to 6% of the selling price on the Deed of Sale or the zonal value, whichever is higher. (Withholding Tax if the seller is a corporation)
Unpaid real estate taxes due (if any).
Agent / Broker’s commission.

The BUYER pays for the cost of Registration:
Documentary Stamp Tax – 1.5% of the selling price or zonal value or fair market value, which ever is higher.
Transfer Tax – 0.5% of the selling price, or zonal value or fair market value, which ever is higher.
Registration Fee – 0.25% of the selling price, or zonal value or fair market value, which ever is higher.
Incidental and miscellaneous expenses incurred during the registration process.

http://www.foreclosurephilippines.com/2009/08/what-is-transfer-tax.html
Sample Computation
Considering that there is still an issue as to the proper computation of the transfer tax base, I suggest that we not delve into the various interpretations of Section 135 of the LGC and simply multiply the transfer tax rate by the higher amount between the consideration paid and the fair market value.

Let’s take for example a residential condominium in Makati City with a floor area of 50sqm with a Selling Price (SP) of 1.0M. The existing zonal value per square meter for that condo in Makati is currently Php50,000/sqm.

First let’s compute for the Fair market Value (FMV):

FMV=Zonal Value x Floor Area
=50,000 pesos/sqm x 50sqm
=2,500,000 pesos

Since FMV is higher than SP, we shall use FMV to compute the transfer tax:
Makati City Transfer Tax Rate: 0.6% [that is, 60% of 1%]
Transfer Tax = 0.6% x 2,500,000 = P15,000

□火災保険

 約3,000ペソ/年間とのことです。

□その他の費用


これは現地で購入シミュレーションをしてもらった書類です。区分所有のコンドの場合、もろもろ含めて5.5%の諸経費がかかるというのが結論のようです。不動産エージェントの仲介手数料は3%だそうですが、新築にはおそらくかかりません。

現地訪問

Mezza Residences Condos in Manila by SM Development Corporation

中心部からは少し離れたエリアです。

 

中心地から少し外れた大学エリアに位置するコンド。SM City ショッピングモール隣接。Aurora Boulevard,という大通りに面しているが、ここは交通量と排気ガスが非常に多く、周囲は混沌としておりThe 発展途上国のアジアという雰囲気。

 

共有部分にはフィリピンに留学に来ているイラン人が目立ちました。フィリピンのケーブルテレビでは、カタール(イスラム圏)の衛星放送アルジャジーラ (Al Jazeera)の英語放送を視聴することもできます。共有部分のプールは、まったく高級感はなく、日本の感覚で言えば物件価格2,500-3,000万 円程度の一般庶民クラスの雰囲気ですが、こちらでは安くはない類に入ると思われます。管理費は平米あたり50ペソ(90円)/月で2戸を隣り合わせで購入すれば、コンバイン(2戸を結合して利用)も可能だそうです。

 

フィリピンの不動産で一番印象的だったのは、この仕上げの汚さ。これでも2009年築の未入居物件です!

 

外壁も築3年にしては傷んでいる気がします。右は、エアコン設置用の通気口。

価格はこちら。為替レートは、1ペソ1.8円(ペソ建て×1.8=日本円建て)です。キャッシュで購入する場合は10%割引するとのことです。

MezzaII Residences Condos in Manila by SM Development Corporation

Mezzaのすぐ隣に建設予定なのがMezzaIIで2014年に竣工予定です。IIの方が若干グレードは上とのことですが、資料を見るには、Mezzaが2ベッド以上のファミリータイプ、MezzaIIはワンルーム中心のシングルタイプという違いのようです。

 

さすがにモデルルームはきれいなのですが、Mezzaのいまいちな仕上がりを見ると、竣工前物件を買うのはちょっと怖い気がします。

 

エアコンは写真右のようなコンパクトタイプが採用されいました。高級ホテルでは、壁埋め込み式や日本の家庭用のような普通の形のエアコンが使われていましたが、家庭用は韓国製の低価格製品が主流なのかもしれません。

こちらは、15.65平米のワンルームタイプで136.4万ペソ(245万円)、23.47平米で182.7万ペソ(328万円)という価格設定(諸経 費別で別途5.5%)です。日本の地方都市の200万円台のワンルームを購入するよりは魅力的だと思います。親がお金持ちの学生(特に外国人)が通学のために住むコンドなので賃貸はすぐに埋まるだろうとことです。

One Archers Place | Eton Properties Philippines

こちらは、SMDCと競合するEton Propertiesの物件。ここも写真では伝わりにくいのですが、前面道路の交通量、排気ガス、混雑というか雑な感じが強くて、あまり表通りを歩けない 発展途上国的な場所でした。大学のすぐ隣に作られており、物件内の造りも、学習ルームやイベントスペースなど完全に隣接大学の学生ターゲットでした。

 

建物の中に入ると一転、エントランスや廊下の雰囲気は悪くないグレードです。

 

左はWebに掲載されていたイメージ写真。右は実際の部屋。右のベッドはモデルルームから運んできたものだと言っていました。ちょっとモデルルームとは雰囲気が違いますね。

 

バスタブはなく、給湯器は簡素なものですが、学生ならば十分でしょう。高級なワンルームタイプ学生寮という雰囲気の物件です。

New Port City | Megaworld

こちらは、おそらくマニラでは最大級のカジノ、ホテル、ショッピングセンターのコンプレックスであるResort World内にブースを出していました。時間の都合上、現地は訪問していないのですが、この模型通りにプロジェクトが進んでいるのであれば、かなり大規模な(マニラ近郊では最大?)開発プロジェクトだと思われます。

 

フィリピン不動産の総評

マニラ中心部でも日本円換算で300万円程度、郊外に出れば100万円以下でも新築が購入できます。単価は安く将来性もあり新興国投資としては魅力的です。しかし、購入時の諸経費率5.5%はともかくとして、売却時には仲介業者手数料3%+キャピタルゲイン課税という名の流通税6%=計9%という高い税率は気になります。投資ローンの金利も8-10%と高いため、ある意味で値上がりは当然の経済環境です。不動産市場がインフレ率と金利をどれだけアウトパフォームするかが鍵となります。

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玉川陽介
海外投資
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