[A2-2011] シンガポール(不動産ほか)

2014/04/23更新

訪問日:2011年3月

好景気!シンガポール

【国家のためになる者は、徹底的に優遇して積極的に人材を引き抜くのがシンガポール流】

 

今回は、2010年の実質GDP成長率14.5%を記録したシンガポールの経済を垣間見てきました。シンガポールの特徴は、とにかくすべてのモノが輸入品。純粋に国内で生産されているものはほとんどないのに物質的にはとても裕福な国というところ。

なぜ、これといった実業がないのに豊かな国ができるのか。ここにシンガポールの秘密があります。

この国は実質的にはリー・クアンユーという国家元首の独裁制で、この元首の手腕によって主に、金融、石油精製によって富を蓄え、それを世界中に投資することにより、収入を得ています。

国家元首は、この国は本来は空っぽだということを十分に認識しており、その空っぽの国でもできるビジネスに最大限注力して、今のシンガポールは成り立っているのです。

そして、その先導の仕方は徹底しており、GDP成長率が10%を超えると公務員に8ヶ月分のボーナスが出たり、R&D(研究開発費)実額の4倍を経費として計上して良い会計ルールがあったり、ローカルの子供は小学校6年生の時点で大学に行くコースと職業訓練コースに分けられたり、外国人が驚く施策が満載です。

国家のためになるものは徹底的に優遇、そして競争させるという制度設計がはっきりと伝わってきます。

他にも外貨制限のない自由な通貨制度、外資の参入できる産業分野に制限がない、英語が通じるなど、外国資本を呼び込む土壌が整備されています。

シンガポールの主力産業

【金融と石油で得た利益を再投資するビジネスモデル】

 各分野では具体的にどのような政策で他国と差を付けているのかと言えば

[金融]

 金融は法律の規制と税制によってすべてがコントロールできます。そのため、シンガポールでは、年金を担保にしたローン、借入を起こして買う生命保険(→リンク シンガポールの生命保険)など、日本の金商法ではできないような商品が目白押し。

そして、各国からの投資家を保護するため、投資家の住んでいる国の税務調査に対しては、シンガポールの裁判所で判決を取らなければ情報提供をしないなど投資家の味方をする決まりになっています。

中国、インド、韓国、日本など、周辺の裕福な国の富裕層、大企業を法規制と税制面でのアドバンテージをちらつかせ、本来は祖国に納税するべき税金を値引きして誘致しまくっている。というのが過激に言えばシンガポールの金融です。

なお、法人税は、ビジネスに対する収益に17%、キャピタルゲインとインカムゲイン(配当)課税はゼロです。なお、中小企業の場合は、S$30万(2000万円)の利益までには、ほとんど税金がかかりません。

ローカルの弁護士にも話を聞く機会があったので、ファンドの設立についても聞いてみましたが、シンガポールは国際金融市場としての評判を気にするので、あからさまな脱法行為は当然に規制されて厳しく監視されているが、実際には、日本人がシンガポールで会社を作って、そこから外国人として日本の不動産を購入するというような取引も観測されているとのことで、どうやら日本以上に本音と建前をうまく使い分けている国のようです。

[石油精製]

 ローカルの不動産エージェントに、シンガポールで高給な業種ってどのあたり?と聞いてみたところ、金融、不動産、石油関連とのことで、石油もシンガポールを支える重要な産業です。
http://www.weblio.jp/content/%E3%82%B7%E3%83%B3%E3%82%AC%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%83%AB%E7%9F%B3%E6%B2%B9%E4%B8%AD%E7%B6%99%E5%9F%BA%E5%9C%B0
石油は専門外なので、外部の説明に譲りますが、インドネシア、マレーシアなどの産油国から原油を輸入した後に、精製して出荷するプロセスを担っているようで、島の南側リゾート地、セントーサからは大きな石油精製施設がいくつも見えます。

[投資]

 シンガポール政府投資公社(GIC)テマセック・ホールディングスキャピタランドなどの政府系投資機関が有名で、アジアを中心に世界中の金融商品や不動産に投資しています。

シンガポールの国家プロジェクト

【金融、バイオ、コンピュータなどの分野で国がイニシアチブをとって育成中】

 

シンガポール内では、事業の多くは国家プロジェクトとして行われており、そこまでやるのか!と感心させられる話を多く聞きます。写真はシンガポール証券取引所とバイオ技術系国家プロジェクトの一つ、BIOPOLISの看板。

たとえば、金融であれば、どのような規制や税制にすれば、海外からおいしいプロジェクトを抜いてこられるのか?というところを考えて、制度設計されてお り、民間企業の経営計画とはレベルの違うスペシャルな条件を諸外国に対して提示できるように考えられています。日本では、民間企業主導で行っているようなビジネス分野に税制や法律をフル活用して国を挙げて取り組んでいるのですから競争力は高いです。

さらには、ゲイランという風俗街で働く世界各国の娼婦ですら、しっかりと国によって管理されており、月に一度の病気検査が義務づけられた2年滞在のライセンス制なのだそうです。すべてが徹底して管理、最適化されています。

ちなみに、外国人を誘致して成り立っているのがシンガポールであるがゆえに、街の中心部にある高級コンドミニアムは、ほとんどが外国人の所有。そして、 実際に住んでいるのは金融系ビジネスに従事する白人が多く、ローカルの人は中心部から少し離れたHDB(HOUSING & DEVELOPMENT BOARD)という公団住宅のようなところに住んでいます。

コンドミニアムにしても観光地にしても、一等地のほとんどが外国人に占拠されてしまっているため、ローカルの人の不満が募っているようです。その関係で、最近は永住権の発行条件がかなり厳しくなっているとのことです。

街を歩くと実感できる好景気

【カジノのオープンも重なって、14.5%という過去最高のGDP成長率】

 

2010年は、マリーナベイサンズ(Marina Bay Sands)とリゾート・ワールド・セントーサ(Resorts World Sentosa)のオープンなども重なって、14.5%という過去最高のGDP成長率を記録したシンガポールですが、街を歩いた感覚では、

高級ワインショップが多い(店主に聞いたところお客の多くは中国人だそうです)

・高給な置物など生活必需品以外の高い商品が多い

カジノのスロットに空き台がほとんど無い(ラスベガスでもマカ オでも、このような状況は見たことがありません) なお、シンガポール人と永住権(PR)取得者は、カジノの入場にS$100を取られるのですが、入ったのは良いが混んでいてゲームができない。というクレームが多かったため、急遽、シンガポール人専用の部屋というのが用意されたほどの活況だそうです。

・カジノの出口には深夜までタクシー待ちに数百人が並んでいる。

・食品会社経営の中国人がカジノで3晩で16億円損した。

カジノの利益率は49%で開店3ヶ月でS$3億を稼いだ。建設費用は5年で回収できる計算。

・不動産エージェントが言うには、給料は安いのに物価がどんどん上がって楽ではない。5年前に買った自宅が現在ではかなり値上がりしたが、売ったら高くて次が買えないので売らない。

 

高級漢方薬の店と高級ワインショップ

大盛況のカジノ。スロットはラスベガスと少し違ってアジアンテイストのマシンが多い。

このように、日本人の不景気になれた目から見ると、とても景気の良いというより少しバブル気味?とすら感じる街でした。

しかし、日本のバブル期と違うのは、株のチャートを見てもそうですが、それほど過熱感がないというところです。不動産も上がってはいるようですが、短期に数倍になっているというわけではありません。

また、独裁政治なので動きが早い(不動産の規制も不動産エージェントが覚えきれないくらいにすぐに変わる)、日本の過去の失敗を学習している、という違いもあり、同じ失敗パターンを踏まないで済む可能性もあると思います。

シンガポールの不動産

シンガポールの高級住宅街は

Orchard(≒表参道)

Marina Bay(マーライオンのある中心部)

Robertson Quay(中心部に近い高級コンドミニアム街、Marina Bayができる前は一番高級だった)

Nassim Road(Orchardまで歩いて行かれる低層邸宅街)

Sentosa Cove(南部セントーサ島のリゾートコンドミニアム)

このあたりだと思います。これ以外にも中心部から電車で数駅以内の場所には、外国人向けのプール付き高級コンドミニアムがいくつも建っています。

不動産価格は上がっている

【不動産価格は国家による価格安定策に支えられ、緩やかに右肩上がりを描く】

下記のチャートは、Property Guru というシンガポールで有名な不動産検索サイトにあった資料です。日本では最近お目にかかれない、右肩上がりのチャートが見られます。

  

不動産エージェントの人も5年前にHDB(HOUSING & DEVELOPMENT BOARD)という公団住宅を40万Sドル(2500万円)で買ったら、今は60万ドル(3800万円)になったと言っていました。売って利益確定した ら?と聞いてみたら、売ってしまうと次に住む家を買うのも高いので売れないとのことでした。

なお、日本企業の現地駐在員の社宅費用は、4000~5000S$/月(30万円くらい)でしたが、最近は家賃補助が削減されて、日本企業の現地駐在員は今より安いところへ賃料削減目的の引っ越しという需要が多いそうな。シンガポールは景気がよいのに日本企業の懐事情は良くないようです。

ローンについて

不動産購入において重要なポイントとなってくるローンですが、不動産エージェントが言うには、

2年前(2009年)はシンガポールに居住権のある人は自己資金5%~10%で可能だった。

・現在は規制が変わって自己資金40%必要

・外国人でもローンは可能

不動産融資のコントロールによって過熱気味の不動産市況を冷まそうとしているという政策がよく伝わってきます。

不動産エージェントへの手数料

・売買 売買価格の1%を売り主が払う

・賃貸 2年契約で1ヶ月分、1年契約で0.5ヶ月分
※2年契約の場合は14ヶ月以上住まないと解約ペナルティ有り

賃貸でもオーナーのエージェントとテナントのエージェントが基本的には双方とも現場に来るようです。賃貸中の住居でもテナントは内覧に協力しなければな らないという契約になっていて、テナントも、「私はこの部屋を気に入っていて、とても良い環境ですばらしい。」とコメントするなど、日本人とは違って前向 きです。

税金関係

インカムゲイン、キャピタルゲインには非課税ですが、取得税や固定資産税があるのかどうかを聞いてくるのを忘れたので後日追記したいと思います。

メイドについて

高給なコンドミニアムには、メイド室が付いている物件が多いです。こちらでは、ミャンマー、ベトナム、フィリピンなどから住み込みで働くメイドが多いそうです。月々400~500 S$と費用は安いです。(派遣会社が手数料を取っていることを考えると、本人にはいくら渡るのでしょう??)

国に帰るときには雇い主が切符を買ってあげなければならない、1年勤めた後は日曜を定休としなければならない、などルールがあるそうです。住み込みには抵抗がある場合は、時間単位で来てもらうことも可能。

シンガポールの不動産物件レビュー

1件目 THE SAIL (Marina Boulevard)

THE SAILはマーライオン、船の形のカジノ(Marina Bay Sands)、そして金融街(Financial District)から近い、高級コンドミニアム。

 

モダンな中にもアジアンテイストな共有エントランス

2009年築、2 Bed Rooms、82㎡、 S$5,500(36万円)、家具なし というスペック 買う場合は、眺望やフロアにより2,850~3,200S$/SqFtとのことなので、買うと 1.72億円程度。部屋の中は、会計士と技術者の白人夫婦が住んでいて、居住中の内覧だったので写真は撮っていないのですが、82㎡にしては、シャワー ルームも2カ所あって十分なスペックでした。

窓からはシンガポールの中心部が一望。

シンガポールのコンドミニアムは、とにかく共有部分が充実していて、ジムルームにロッククライミング用の岩が! 実際にここで練習ができるほど大きな岩ではないのですが、共有部分の充実にかける意気込みはスゴイです。 賃料も手頃で共有部分は会議室としても使えるので、自宅兼オフィスのスモールスタートアップとして使うのも良いと思います。

2件目 Marina Bay Residence (Marina Bay)

1件目THE SAILのすぐとなりがMarina Bay Residenceです。 2010年築、2 Bed Rooms、114㎡、 S$8,800(57万円)、家具付き(写真の部屋は家具なしの部屋) というスペック。買う場合は、3,500S$/SqFtとのことなので、2.8億 円。日本の高級タワーマンションよりも、平米単価はかなり高いですね。

参考に、同時期に六本木ヒルズレジデンスA棟、109.09m2、23,000万円、4LDK 3階/地上6階建 というのが売りに出されているので、比較してみると六本木ヒルズ以上の単価です。

 

共有廊下も豪華です。金融街の高層ビル(Standard Chartered銀行)がバックのプール。プールからのビューが隣のビルというのは、この国に住む以上は仕方ないのかもしれません。

 

部屋は日本の高級マンションと同じくらいのグレードで、仕上がり、サッシ、素材、天井高ともに申し分ないです。ほかにもティールーム、サンセットルーム、ワインパーティールーム、カラオケルームなど、とにかく共有部分は充実しています。

3件目 Orchard Residence[ION] (Orchard Road)

今回は、ここOrchard Residenceが一番すごかったです。2010年築、3 Bed Rooms、168㎡、 S$16,000(104万円)、家具付き というスペック。買う場合は、3,600S$/SqFtとのことなので、4.2億円。こんなの誰が買うの?と 聞いてみたところ、中国に加えて、インドネシア、ロシアの富裕層からの資金が入ってきているとのこと。

入り口からしてバブリーです。

 

向かいのマリオットホテルのプールは小さいのに、こっちは広々というのも購入者のプライドを煽るのでしょうか?写真右はなんと、プールサイドにある共有部分のワインセラー室。充実と言うより驚きです。

土地の狭いシンガポール中心部にしてテニスコート!(ここにはありませんが、場所によってはバスケットコートがあるコンドミニアムもあり)

 

室内も高級ホテルのスイートルームレベルのクオリティで揃えられています。

そんな高級マンションにも、倉庫兼ミサイルシェルターの設置が義務づけられています。それに比べると日本の防衛意識は低いですね。

4件目 Nassim Regency (Nassim Road)

Nassim Regencyは日本大使館と同じ通りにある自然豊かな高級邸宅街です。さらに、オーチャード駅(表参道のような商業の中心地)まで徒歩圏というすばらしい環境の中にあります。

ここは古い建物をリノベーションして作った高級コンドミニアム。 Far Eastというローカルの不動産会社が持っているのですが、値上がり期待があるため、賃貸のみで売却はせず、長期保有で持っているのだそうです。

築年はリノベーションのためデータ無し、3 Bed Rooms、185㎡、 S$14,000(91万円)、家具付き というスペック。売っているわけではないが、買う場合は、2,000-3,000 S$/SqFtではないかとのこと。

 

なお、全31室で6ヶ月前から募集開始して、25部屋が賃貸中、6部屋が募集中です。場所が中心部から多少離れていて、好き好きの分かれるエリアですが、賃貸重要は、そこまで大活況なわけではないのかもしれません。

内部は、天井高が高く、リビングが広い、日本人が理想とする邸宅のイメージにぴったり一致している気がします。そして、オーチャード徒歩圏なのに窓からの眺めは緑豊かで、本当にすばらしい環境です。私はこの部屋が一番気に入りました。

他と比べると小ぶりですが、プールとバーベキューエリアもあり。日本の感覚ではすばらしいプールなのですが、いろいろ良い施設を見慣れてくると、まあ必要十分かな、くらいに見えてくるのが不思議です。

まとめ

日本の住宅は世界一。と以前から思っていましたが、共有部分の充実度は日本よりシンガポールの方が上でした。

なぜ、東京より狭いシンガポールでそれができるのか?というのを考えてみたのですが、おそらく不動産開発も自由競争ではなく、国のプロジェクトに近いため、容積率という足かせが少ないのだと思います。

シンガポールには、土地は狭いが背が高いという建物が非常に多いです。そのため、建物内に広い共有スペースを作ったり、テニスコートやプールに大きな面積を割り当てることができるのだと思います。

シンガポールは、中心部は山手線の内側よりも全然狭いエリアに密集しているのですが、体感的には、緑や空き地も多く、そんなに狭くないのですよね。これは土地の使い方がうまいからだと思います。東京も、もっと戦略的に土地を使っていけばいいのになあと思いました。

最後まで読んで頂いた特典として、ご希望の方には現地で知り合った信頼できる不動産エージェント(日本語可)を紹介します。賃貸、売買共に可能です。

その後のシンガポール追跡情報

(1) 2011年7月時点の情報によれば、いまだに景気は良く、賃貸契約更新時に賃料3-4割アップで再契約(払えなければ既存テナントを立ち退きさせて、新しいテナントを入れる)などは普通のようです。

(2) Orchard Residence[ION]などの超高級マンションにおいても、内装や排水の不具合などは多く、見かけは豪華だが細かいところは日本の品質には及ばず、といった感じのようです。

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玉川陽介
海外投資
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