[E4-2012] ルクセンブルクのプライベートバンク

2014/04/23更新

訪問日:2012年3月

ルクセンブルクとは

 

ルクセンブルクはパリから電車で2時間(片道約90ユーロと高め)という場所に位置するヨーロッパの小国です。小国なので目立った観光名所もなく、人口も国全体で50万人、中心部にも9万人程度しかいません。

それにもかかわらず、金融業界では誰もがルクセンブルクを知っているのには理由があります。この国では、ファンド立ち上げに関する費用が非常に安く済むため、多くの投資信託がルクセンブルクでファンドを組成してルクセンブルク籍を名乗っています。

投資家にとってのメリットは、タックスヘイブンであることです。ルクセンブルクは、証券取引に対する源泉徴収を15%行うとして、公式にはタックスヘイブンではないように装っています(そうでなければEUに加盟できないはず)しかし、実態は、下記のEU近隣諸国以外の国(日本など)の国民に対しては、無税の投資環境を提供しています。もちろん、ルクセンブルク国内では無税といっても居住国(日本)での申告義務は発生することをお忘れ無く。

ルクセンブルクにおいて免税扱いとならないEU近隣諸国の国(これに当てはまらなければルクセンブルク国内では無税)
Andorra, Anguilla, Aruba, Austria, Belgium, British Virgin Islands, Cayman Islands, Channel Islands, Cyprus, Czech Republic, Denmark, Estonia, Finland, France, Germany, Greece, Hungary, Ireland, Isle of Man, Italy, Latvia, Lichtenstein, Lithuania, Malta, Monaco, Montserrat, Netherlands, Netherlands Antilles, Poland, Portugal, San Marino, Slovakia, Slovenia, Spain, Sweden, Switzerland, Turks and Caicos or the UK

ちなみに、オフショアの語源は、wikipediaによれば、「タックスヘイブンとして利用される地域は、-中略- イギリスのマン島など本土の海岸から少し離れた島(マン島はグレートブリテン島とアイルランド島の中間くらいの位置にある)が挙げられる。このことから「国または本土の沿岸から遠く離れた地域」を意味する「オフショア」という言葉が、租税回避地という意味を持つようになった。」とのことですが、近年はルクセンブルクに限らず、オフショア金融機関の堅固だった秘密の扉にひびが入りかけています。2013年には、今まで堅く口を閉ざしていたルクセンブルクの金融機関からアメリIRS(税務当局)へ対して、顧客資産内容の開示を行うことが決まっています。ただしこれはアメリカ人所有の資産に関してのみで日本人には関係ありません。

※なお、日本とルクセンブルクは2011年12月30日発効で租税条約を締結しました。これにより日本も源泉徴収の対象となるとだいぶ話が変わってきます。近日確認して追記します。(一番重要なところが抜けていてスミマセン!執筆日現在、営業時間外で現地証券会社が休みでした!) 2012/03/22追記 Internaxxのサポートに確認したところ、「The treaty did not change witholding tax eligibilty for Japanese clients living in Japan.」とのことで、租税条約締結後も源泉徴収は徴収されないことが分かりました。

ルクセンブルクの地理

ルクセンブルク中心地は歩いて回れるほどの小さな街です。大きく分けて二つのエリアに分かれます。

 

旧市街ルクセンブルク(Luxembourg)が街の中心ですが、これと言って特徴の無い買い物街です。事前の想像と違 い、銀行の店舗などはそれほど多くありません。しかし、写真では分かりにくいですが、雑居ビルの中小企業も表札から察するに金融、ファンド、不動産など虚業系(笑)が中心です。少し離れた(と言っても徒歩10分)ところに電車の駅(Gare de Luxembourg)があります。

 

新市街キルヒベルク(Kirchberg)は旧市街とは全く雰囲気が異なり、シンガポール的な効率重視の最先端金融シティです。多くの金融機関が軒を連ね、また多くのルクセンブルク籍のファンドがここから生まれています。空港はこのエリアに隣接しており、Luxairというルクセンブルクの航空会社が運行しています。ただし、Luxairはフランス行きなどでも距離の割に高いので、パリかブリュッセルまで電車で行って格安航空会社で移動するという手もあります。

プライベートバンク訪問

Banque BGL BNP Paribas Luxembourg

ルクセンブルク政府(34%)とBNPパリバ(66%)の合弁会社。BGLはBanque Générale du Luxembourgの略です。担当者いわく「BNPパリバが傾いたときには、BGL BNP Paribas Luxembourgは、一定の費用を支払えば、そのグループから抜けることができる契約になっており、クレジットリスクからは隔離されている。後ろ盾は ルクセンブルク政府だから安心」とのことでした。欧州危機の真っ最中に欧州に来ているので、BNPパリバの信用格付を考えてのPRということでしょうか。

ミニマムデポジットは250Kユーロでプライベートバンキングの口座が開設できます。リテールのネットトレード環境の話を聞きたかったのですが、債券の取引など高度なことをしたいのならばPBが良いとのことで、PBにアポイントを取ってもらいました。

 

 

ルクセンブルクの金融街であるキルヒベルクにあるBGL BNP Paribas Luxembourgのオフィス。プライベートバンクというよりは、とても広々していてIT企業の研究所のような雰囲気プライベートバンク以外にも本社機能やおそらく大企業向け金融の拠点も入っています。

PB担当者に聞いてみたところ、日本の利用者はほとんどおらず、最近の太い客はロシア系が多いかな。とのこと。

たまたまだと思いますが、PBの担当者はちょっとやる気がない感じの人で、あまり好感は持てませんでした。リテールの支店は良い人だったのですが。

PB担当者いわく「PBでもロットの小さい客は債券の利子の計算が360日(欧米式)か365日(アジア式)で検算を求めたりするが、大口の客はそのよ うな面倒は言わない」「うちの銀行は10ユーロ貸すにも上司の決裁やらコンプライアンス部のチェックや何やらが必要で大変なんだ」「最近、欧州ではUBSの評判が悪い」などと言っていました。

 

面白かったのは、銀行の内部的にはVIPは20Mユーロ以上の預かり資産という閾値が設定されていると言っていたこと。ただし、担当者は「個人的には5Mユーロ以上でVIPかな。なぜなら、うちに5Mを入れる客は全部で20Mくらいは持っている。本国の金融機関に問題が生じた際に移管してもらえる可能性は高いので」とのことです。

BGL BNP Paribasのロゴ入りチョコレート(!)と紅茶が出てきました。個人的にはロゴ入りチョコが気に入りました。

融資の金利について聞いたところ、あとで確認してメールを送るということになったのですが、届いたメールが一部フランス語で手抜き感ありでした(笑)しかし、金融の世界では話すことはどこでも同じなので、フランス語は分かりませんが、なんとなく内容は理解できてしまう不思議。

interest on the loan:
– EURIBOR 1 mois + marge standard de 1.5% pour de l’euro
– LIBOR 1 mois + marge standard de 1.5% (tirage 1 mois) ou 1.8% (tirage 3 à 12 mois) pour du dollar
– LIBOR 3 mois + marge standard de 1.5% pour les devises GBP/CHF/CAD/AUD/JPY.
貸出金利のスプレッドは150bpが定価(marge standard)のようですが、おそらく交渉で100bpくらいまでには下がるのかなと思います。日本国内のPBでも100bpほどが普通です。

あとは、このあたり細かい点ではありますが、重要な点。Il faut cependant prendre en considération que si le portefeuille reste ainsi structuré, les titres donnant de la VF étant soumis à critère de concentration, leur VF respective sera limité à 40% de la VF totale. A titre d’exemple, si la VF totale des deux titres est de 100 – 50 pour chacun des titres (ce qui représente plus de 40% par ligne)- alors la VF sera ramenée à 40 (40%) par titre. 英訳がなかったので内容は分かりません(笑 が、おそらく、資産ポートフォリオの内容が一部の商品に偏りすぎていると証券担保ローンの貸出可能額が減ります。などという意味ではなかろうかと。

ロンバートファイナンス(他のPBにて証券担保ローンで起こした借り入れごと資産移管する手続き)にも対応可能とのことでしたが、日本の金融機関が発行した優先出資など欧州から見ればマニアックな商品や、上場ETFでも時価総額の小さなものはローナブルバリューがゼロ(lonable value = 証券担保ローンの際の担保価値 = 掛け目)の扱いでした。

UBS Luxembourg

 

非常に近代的なオフィス。ここに限らず、このエリアのオフィスはUBSに限らずですが、広い割に誰もおらず閑散としています。

 

アポなしで行ったので仕方ないのですが、散々待たされたあげく、「現在、UBSルクセンブルク支店では日本人の口座開設は承っておりませ」とのこと。ですが、「チューリヒのUBSでは非居住者でも口座開設できるはずなので是非UBSをよろしく」とのこと。担当者は几帳面な感じの人で、「私は慎重派。欧州の債務危機はまだ終わっていないと思う。フランスの債務状況も危な い」「最近はイギリスポンドを推奨している」「ハイイールド債券やアジア債券は利回りにまだうまみがある」(これは私も同感 2012年3月現在)などと言っていました。 しかし、欧州人に欧州危機はまだ終わっていないと言われると、そうなのかーと思ってしまいますね。

さらに「UBSでは、支店のある国の法律だけでなく、口座所有者の居住国の法律にも配慮するので、本国での租税回避のためにオフショアに口座開設したい!などと言ってくる人は断らざるを得ない」という有用な豆知識の伝授を受けました。お互い租税回避と分かっていても公言しないのがヨーロッパ流マナー・・というか単純にコンプライアンス的な問題でしょうか。日本人であれば、地震や国債残高問題で将来が不安で・・・などと言うのが良いのかもしれません。

Internaxx(おすすめ!)

Internaxx(インタナクス)はプライベートバンクではなくオンライントレードのブローカーですが、かなり良いのでここで取り上げます。同社はTD Bankグループの子会社です。Internaxxは、日本から郵送でも口座開設ができる(ただし、英語での簡単な電話インタビューあり)ことから、個人ブログなどで取り上げられており、一部の個人投資家が利用しているようです。

リテール向けなので現場に行っても対応してくれないかと思いきや、非常に親切丁寧なお姉さんがパンフレットをくれて諸々の話をしてくれました。郵送が基本ですが、来店での口座開設もできるとのことです。来店の場合、郵送で必要な行政書士などの有資格者によるパスポート認証もないので、手続きは早いようです。もちろん、日本からルクセンブルクまで行く方が大変ですが(笑)

アメリカのInteractive Brokers(IB)を知っているか?と聞いてみたら、「もちろん。当社の競合です」と言っていました。さすが、よく調べていらっしゃる。Internaxxでは、欧州全域と米国株を取引できます。ただし、私が個人的にほしかったシュトゥットガルト(Stuttgart)市場に上場している個別銘柄債券のオンライントレード機能はなし。売買手数料はIBよりは若干高めで、口座の維持に年間588ユーロ(年間の売買手数料がそれを超える場合は免除)かかります。1-2千万円以上の規模でやるならば口座の維持費用を支払っても十分にメリットがあり、日米欧のPBに比べても手数料は圧倒的に安いので、Internaxxは欧州系では最強の取引窓口会社の一ではないかと思います。

パンフレットによれば取引できる市場は下記の通りです。

North America
 New York (NYSE,Nasdaq,Amex)
 Toronto (TSX,TSX Venture Exchange)
Europe
 Frankfurt (Xetra)
 Euronext Amsterdam ・EuronextBrussels
 Euronext Paris
 London (LSE,A IM,PLUS Markets)
 Dublin
 Madrid (IBEX)
 Zurich (SWX)
 Stockholm (SX) ・Milan
Asia
 Singapore ・HongKong ・Australia

株式手数料表

口座維持費用

手数料は上記の通り。ポイントは年間30回以上の取引でFrequent traderの扱いとなり、表頭右側の割引レートが適用される点です。なお、3ヶ月毎に預入額の0.05%を預かり料(custody fee)として徴収されますが、 年間30回以上の取引(588ユーロ相当)をした場合、この費用はかからなくなります。なお、細かい点ですが、最初はStandard ratesが適用され、30回を超えた時点で過去にさかのぼって手数料を払い戻す割引方法を採用しています。また、custody feeは以前は手数料同様に過去にさかのぼって払い戻していましたが、最近システム変更があり、3ヶ月毎の徴収タイミング以前に徴収したcustody feeの返金はなくなったとのことです。最初の3ヶ月で30回を超えるトレードをするのが最も安いということのようです。

Internaxxのオフィスにはシスコとアクセンチュアが同居しており、オンライントレードの会社なのだなあということが表札からも伝わってきます。 ひとつ心配なのは、2012/03/18現在、オフィシャルwebが落ちていたりネットの掲示板でも経営の健全性が心配されるなど、中小企業気質なところ でしょうか。

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玉川陽介
海外投資
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