量的緩和による不動産バブルは2016年3月で終わる

2015/12/14

先のことを書くと、だいたい当たらない。ハズレ予想が増えるだけで何も良いことはないのだが、
今回は少しばかり自信があるので書いてみたい。

ズバリ、旺盛な融資に支えられてきた不動産バブルは2016年3月で終わる。

理由は次の通り
・量的緩和マネーが不動産市場に向かいすぎていることについて日銀と金融庁ともに警笛を鳴らしている
・そのような中で信用金庫はバブル期以降最大の新規融資伸びを記録するはず(2016年1-3月期)
・信金各行へのヒアリングでも、秋に比べて今冬は若干、融資対象が選択的になってきたという肌感覚あり
・原油下落など外部環境の悪化
・そのような中、各金融機関とも4月からは体制見直しの時期となる

■不動産価格の値上がり(利回り低下)をふりかえり

まず、過去1年でどれだけ不動産価格が上がってきたかを確認したい。
データ集計の労力の都合、2015年分だけをひとまずアップロードする。後日、2014年分も追加したい。

[都心の投資物件]エリア別表面利回り推移
東京不動産2

[都心の投資物件]全体の利回りと価格推移
東京不動産1
(いずれも非公開のデータソースをもとに玉川陽介独自作成)

ここから読み取れることは次の通り
・2015年4月からは各金融機関とも急激に融資姿勢が強気に変化した感覚あり。それを裏付けるように3~4月からの価格上昇が顕著
・春夏は高値張り付き横ばいで硬直感あり。しかし、秋冬はさらにもう一段あがった感覚あり。データもその通りになっている
・8月くらいまでは売り物件が出ない状態が続いていたが、秋以降は少し出てきた感覚あり。それもデータ通り(出現頻度分布はここには掲載していない)

集計対象物件のスコープとしては「私がいつも探しているような物件」(新耐震でそれなりの規模のもの)というおおざっぱな括りであり、厳密なものではないが、その分、私の肌感覚には非常にあった結果となっている。サンプル数が少ないので、たまにデータが飛ぶ、月×区があるが、概ね全体感としては正しいと思われる。

ここまで価格が上昇しているのは(また、これ以上に価格が急騰しないのは)多くの純投資家が借入を起こす条件(自己資金1割、25~30年、金利1.5%税後)から逆算すると、表面7%を切るとキャッシュフローが出ない計算となり、長期保有前提の純投資では計算が合わず難しくなるからだろう。
かわりに購入主体として目立つのは、相続税対策や地主である。台湾人富裕層なども買ってはいるものの、やはり主力の購入者は日本人であることにかわりはない。彼らは利回りを考えず、資金も豊富にあるため、物件の内容次第ではいくらでも価格を付けられる資産家だ。

相続税の増税と前述の資産家たちによる、その対策もあり不動産は買われた。$=120円の円安も手伝いアジア人の資金も一部流入。一方、日本人の純投資家は都心の物件の利回りに興ざめし、一時代前の利回り(7-10%)を求めて郊外(千葉・神奈川・埼玉ほか地方の主要都市)を物色するようになった。

■信金の融資の伸び

メガバンク、地銀、信金の全金融機関の不動産業向け貸出は、下記の通り堅調に伸びてはいるものの異常さを感じさせるほどではない。
cap-1214-02
(日本銀行のデータをもとに玉川陽介作成)

一方、信用金庫の新規貸出はバブル期の伸び率ほどではないが、2006年のミニバブル期よりも明らかに旺盛である。
cap-1214-00
(日本銀行のデータをもとに玉川陽介作成)
そして、金融機関の仕組み上、1-3月期は決算の締めの時期であり、一年のうち最も融資の伸びる期間であるため、2016年1-3月期は過去最高の伸び率を記録することは、ほぼ間違いない。

■日銀と金融庁の警鐘

じつは、このような旺盛な融資に対して日銀と金融庁は2015年夏から警鐘を鳴らし始めていた。

2015年08月19日 12:47 JST 地銀・信金の3割、本業収益で不良債権カバーできない可能性=日銀
http://jp.reuters.com/article/boj-regional-banks-idJPKCN0QO08A20150819
地域金融機関における最近の貸倒引当金の算定状況
https://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/fsrb150819.htm/
「地域銀行で約9割、信用金庫で約7割の先が、こうした観点から引当方法を工夫していることが確認された。具体的な内容をみると「算定期間数の拡大」により対応している先が多いほか、要管理先や破綻懸念先について、「DCF法」や「CF控除法」を導入(DCF法の適用額引下げを含む)している先が相応にみられる」

「算定期間数の拡大」とは、いわゆる耐用年数オーバー融資を出しても正常先(金融検査の債務者区分)のまま取り扱っていることを指摘していると思われる。違いました!貸倒率の平均値を計算するときに過去3年よりも過去5年の実績平均としたほうが計算上、低率になる場合、有利な計算期間を採用しているというような話しのようです。VaR計算するときのHVの採用期間に「適切」な期間の定めはない。という問題の応用のようです。

さて、耐用年数オーバー融資を出しても正常先(金融検査の債務者区分)のまま取り扱っている事例は多くある。
金融庁の金融検査の考え方では、耐用年数以降は経済的価値がなくなり廃屋同然になってしまうため、賃料を収入できる保証はない。そのため、耐用年数期間内に返済がすべて終わっていないと返済原資がなくなってしまう。という考え方によるらしい。
「工夫している」とは、他の収入で信用補完するであるとか、専門家の鑑定書を付けるという意味合いだと思われる。このような工夫は、簡単に言えば本来のルールを逸脱しているのではないかとの指摘であろう。

2015年12月10日 20:21 JST 金融庁、不動産融資急拡大で一部金融機関からヒアリング=関係筋
http://jp.reuters.com/article/fsa-realestate-loan-idJPKBN0TT18020151210

さらに、金融庁も地銀からヒアリング。地銀は量的緩和の運用難の影響を正面から受けた金融機関である。資金は余っている。国債は買えない。高度な運用をする知恵もない。ということで預金が余って困っているわけだ。
そこで、各地方から東京に進出し、東京駅近くにサテライト店舗を出し、地方で集めた預金を東京で運用している。
簡単に言えば、地方で高齢者から集めたカネを、東京で不動産を買いたい人に、非常に緩い条件でローンを出している。これは不動産投資家や不動産業者の間でも以前より指摘されており、業界関係者の間では周知の事実である。これは悪いことではない。四国など地方に行くと特にその傾向は顕著だ。預金は集まるが貸す先がない。他県で貸すしかない。というのは想像が付く(東京の金融機関がそれを言ったら、東京で貸せなくてどこで貸せるのか?と言いたくなるが・・)

なぜ、このように急激に融資を出すようになったのか。量的緩和の影響で運用難という側面もあるが、地銀、信金の横並び姿勢が変わっていないことも関係している。「近隣の他行が出せば当行も出す」この習慣は変わっていない。
さらに、日銀が指摘している貸倒引当率低下に関係して、金融機関の悪い習性として「金利低下で利ざやが取れなくなってきたために、その分、融資量を増やして金額ベースでは収益低下を防ぐ」というものがある。利益率が下がってきたから融資量を増やして薄利多売で利益を維持する。当然、貸倒れリスクは上がる。日銀は、このようなことを心配しているのではないか。

また、地銀や信金は金利上昇への対応という考え方が希薄だ。中には30年国債と同じ利率で、中途解約ペナルティなしの固定金利をオファーする金融機関もあるとのこと。中途解約ペナルティなしをコーラブルオプションとして金額評価すると、実質的な借入金利は非常に安い(下手すると国債よりも安い?)
金利上昇の際には超長期の固定貸出の実質価値が値下がりすることは考慮されていないように思う。
日銀はALM(Asset – Liability Management)という考え方を推奨しており、このような金利上昇に対するマネジメントをするように。としているが、中小の金融機関にこれを理解できる担当者は少ないであろう。それがゆえに、目先の利ざやを得られれば良いという考え方に傾斜しているように思う。

さてこのような状況の中、過去最高を更新するであろう信金の不動産業向け新規貸出。
(信金の仕事は、近所の肉屋やパン屋へ年金の集金に行くことではなく、単なる零細企業のように見えるがじつは富豪という高齢者や、地主向けの不動産融資が主力商品であることは言うまでもない。多くの信金でその比率は5割を超える)

この貸し方を4月以降も続けるのは簡単なことではないだろう。

■外部環境の悪化

ここでは簡単にだけふれるが、原油の下落、また、米国不動産の上げ一服感、米国金利上昇による市場の不安定さ増大もネガティブ要素だ。
日経平均の下落は、前述までの日銀や金融庁の話とは別に、自然と融資マインドを冷めさせる。

cap-1214-01
原油価格の下落とそれに相関の高いロシアルーブル
(トムソンロイター・EIKON端末)

1caseshiller
ケースシラー指数は全体で見ると堅調に上昇しているように見える
(トムソンロイター・DateStreamのデータをもとに玉川陽介作成)

2caseshiller
しかし、地域ごとに分けて見ると、上昇地域と下落地域は非常に選別的になっていることに注目。どこでも上がるバブルは終わった。
(トムソンロイター・DateStreamのデータをもとに玉川陽介作成)

■4月以降何が起きる

4月以降は、このように日銀や金融庁の意向に従うならば、不動産融資の伸びは抑制され、不動産価格も一服となるであろう。
しかし、大幅下落によるバブル崩壊にはつながらないはずだ。

2006年のミニバブル崩壊とは違い、今回はファンドのプレイヤーは少ない。ファンドはその資金調達方法により、物件価格が下落すると時価評価が必要となり信用取引の証券と同じようにロスカットが発生する。それが元で多くのファンドが損を出したのが当時だ。
しかし、今回は個人投資家主体の上昇であるため、物件価格がいくら値下がりしても、月々の返済が滞らない限りは評価損は出るものの入出金の帳尻は合うため、何事もなかったように返済を進めるだけでよい。
多くの投資家は表面7%を超える「十分に返済が可能な利回り」で購入しているため、追加融資が受けられずとも、物件価格が下落しようとも、なんら運用や返済に影響は出ないのである(転売ができなくなったこと以外は)
そのため、融資が出ないために、多少、売買件数が減る(震災直後のような)という以外に価格の急落要因はないと考える。

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