2017/11/13

日本人は冷たいから自殺率が高い

北欧は天気が悪いから自殺率が高いと言われている。

実際、行ってみるとムーミンやマリメッコのきれいなイメージとはことなり、
北海道よりも寒い、昼でも暗い、乾燥して寝られない、雪が積もる。という気候で、
正直、こんなところに住んでも人生楽しくないだろうという気がする。

しかし、いろいろな研究によると、その天気の悪さは自殺につながっていないらしい。

実際、スウェーデン人も「スウェーデンは自殺率が高いが(気候も文化も類似の)ノルウェーは自殺率が低い」といっていた。

では、スウェーデンの自殺率が高い理由は何なのだろうか。

彼が言うには、スウェーデンでは「Good morning!」と見知らぬ人に言うと「It’s my morning. Not your morning」と言われる。という冗談があり、
街で道を尋ねると「iPhone持ってないの?」と返される。とのこと。

みんなで、わいわい楽しむお国柄ではないようだ。

さて、スウェーデンは高度な福祉国家である。
食べて行くには困らない。働きたくなければそれでもいい。ホームレスになる心配はない。子どもが増えたら補助金をもらえる。
ブルーワーカー的な無知識層も少ない。なんてすばらしい国だろう。

しかし、これがむしろ問題になっている。
ゆりかごから墓場まで、誰の助けを借りることなく、ひとりで生きて行かれてしまうからだ。

人は、人の助けが必要なければ一人で生きることを選びがちな生き物のようだ。
「物質的には豊かだ。それゆえ、一人で孤独に生きて鬱になる人が多いのではないか。それが自殺につながっているのではないか」
というのがスウェーデン人の意見。

一方、ノルウェー。同じく福祉国家で天気も悪いが、
スウェーデン人曰く「人々はオープンなマインドであり、知らない人とも他愛ないおしゃべりをする」
それゆえ、スウェーデンよりも自殺率が低い。

うーん。なるほど。と言いたいところだが、
OECDの統計を見るには、どうやらこの説は正しくない。スウェーデンとノルウェーの自殺率は同じだからだ。
だが、WHOの統計では自殺率はスウェーデン>ノルウェーとなっており正しい。
なので「誰が調査しても、明らかにこれが原因で間違いない!」といえるほど統計的有意ではないのであろう。
だが、個人的には、正しいのではないかと思っている。

*** https://well.blogs.nytimes.com/2011/04/22/happiest-places-post-highest-suicide-rates/
ほかでも同じような結論にたどり着いた学者もいるようだ。

では、日本はどうなのかと言えば、そんなスウェーデンより、もっと自殺が多い。

https://en.wikipedia.org/wiki/Suicide_in_Sweden より引用

1980年以降のバブル崩壊の精算局面で自殺率が増えたのはそれが理由と推測できるが、
その後、いったんは減り、最近また増えており、他の先進国よりも圧倒的に多い。

これは、どう理解すべきだろう。
人と気軽に話をしない。交流しない文化のワースト・ランキングと自殺率は相関しているのではないだろうか。

観光客は「日本人は親切だ。駅で困っていたら英語が話せる若い子が来て、ホテルまで一緒に案内してくれた」と言うが、
それはゲストには親切にするという文化、そして人種的な差別が容認されている国だからであり、
同じ日本人として輪の中に入れば、そんな厚遇を受けることはあり得ない。

むしろ、日本(東京)ほど、人に話しかけて嫌がられる国はない。
電車内で人に話しかけたら係員や警察を呼ばれることを心配しなければならない。

また、店員とお客、官と民のように、気軽に交流しないような社会的な壁が存在する文化でもある。
たとえば、東京都内の区役所窓口で、公務員と長々と雑談をするのは迷惑な人だと認識されるだろう。
コンビニでも店員と雑談する客はいない。

それに加えて、日本では、人に悩みを話すことは、
借りを作ることであったり、恥であったり、聞いている側は「重い」とか面倒と感じたりして、あまりポジティブではない気がする。
これらは「人に迷惑をかけるな」という思想の影響ではないかと思う。

では、人に助けを求められない我が国では、どうすればいいのか。
日本では、人の迷惑にならず、人知れず悩みを解決する方法が高度にサービス化やシステム化されている。

雑貨がどこで売ってるか友達に聞かずにAmazonで買いましょう。
仕事がない人は、人に聞く前にリクルーティング会社のシステムを検索してください。
おとなりさんに味噌と醤油を借りるなんて、戦後じゃあるまいしコンビニに行きましょう。

困った人は、人ではなくシステムに頼り何かを探すことになる。
これは、街で道を尋ねると「iPhone持ってないの?」と返されることに似ていないだろうか。
便利といえば便利だが、じつは、とても冷たい社会だ。

さらに言えば、お店の人がニコニコしているのも「スマイル=ゼロ円」とマニュアルや商慣習で定義されているため
システムとしてニコニコしているだけであり日本人の性格ではなかろう。
銀行ATMの待ち受け画面に、銀行員がニコニコしている絵が映っているのと同じである。

また、日本はお店の人や係の人の裁量権も少ないと思う。担当者は人格を消してシステムの一部になりきっている。
人がニコニコ接客しているのは事実だが、無人化された自動システムに近い。

それに加えて、日本では「みんな一緒がいいよね」と言いつつも、他人との優劣を付けたがるので
社会的貧困や失敗に陥るとコミュニティから孤立する。だめな人という烙印を押され、仲間はずれになりやすい文化だ。

お金がないから大学を中退してしまった。友達はディズニーに行くけど私はお金がないから行かれない。
このような人たちが、今までの友達と仲良くし続けるのは大変なことだろう。
受験や就活に失敗した。というのも似たような話だ。競争による優劣を付ける文化なわけだ。
(しかし、同一性という前提があるので、北欧で一番良い大学を出たとか、桁外れの金持ちなどは「勝ち」ではなく「その他」になり、日本ではやりにくい)

他にも自殺が多いと言われている国として、シンガポールが挙げられるが、もちろん、生活に困る国民は誰もいない国である。
経済的には豊かな韓国でも自殺が多い。
シンガポールや韓国の自殺率は、このような社会的な競争に疲れた人の影響が強いと思う。
(北欧にはこの問題はない。上も下も格差が少なく、下でも十分なレベル感。金に困っているやつがいないから)

一方、発展途上国では「社会的にいまいち」な立ち位置を気にする人は少ないのではないか。
「まあ、酒でも飲んで適当にがんばろっかー」みたいな人が多し。
もしくは、貧困層向けのコミュニティがあり、各自の居場所がある。排除されて孤立することはない。そんな気がする。
(ちなみにタイあたりで道を聞くと、みんなiPhoneを持っていても近所の人と相談して教えてくれるが、だいたい適当。タクシーもおそらく業務とは関係ないであろう話をずっとしている)

このように、
1.人と気軽に話せない雰囲気
2.解決策のプロバイダーが人ではなくシステム
3.社会的貧困や社会的競争に負けたことによる居場所のなさ
このような冷たい文化と社会環境が日本の都市部での自殺につながっているのではないだろうか。
「私は自殺しないから関係ないわ」と思うかもしれないが、自殺率の高い国はクオリティ・オブ・ライフ(QoL)が低いと考えれば、みんなに関係ある話だ。

無人化や機械化を推進すると、確かに効率は良くなり、いい面が多い。
しかし、それを究極的に突き詰めれば、
人と人との会話はなくなり、無機質な物流センターのようなところで働き、コンテナの中で暮らすような感じになるのかもしれない。


Amazonかどこかの自動化された倉庫(https://singularityhub.com/より)

IT化の目的は、一言で言えば「雑用を効率化して、余った時間で人生をもっと楽しもう」というものだが、
実際には、効率化のおかげでコミュニケーションがなくなり孤独化が進んでいるのではないか。

もしかしたら、Amazonの倉庫は機械化せずに、
近所のシニアや学校帰りの子どもたちを集めて、みんなでわちゃわちゃと、みかんでも食べながら箱詰めをするのが楽しい未来なのかもしれない。