[A2-2011]シンガポール(基本経済)

好景気!シンガポール

【国家のためになる者は、徹底的に優遇して積極的に人材を引き抜くのがシンガポール流】

 

今回は、2010年の実質GDP成長率14.5%を記録したシンガポールの経済を垣間見てきました。シンガポールの特徴は、とにかくすべてのモノが輸入品。純粋に国内で生産されているものはほとんどないのに物質的にはとても裕福な国というところ。

なぜ、これといった実業がないのに豊かな国ができるのか。ここにシンガポールの秘密があります。

この国は実質的にはリー・クアンユーという国家元首の独裁制で、この元首の手腕によって主に、金融、石油精製によって富を蓄え、それを世界中に投資することにより、収入を得ています。

国家元首は、この国は本来は空っぽだということを十分に認識しており、その空っぽの国でもできるビジネスに最大限注力して、今のシンガポールは成り立っているのです。

そして、その先導の仕方は徹底しており、GDP成長率が10%を超えると公務員に8ヶ月分のボーナスが出たり、R&D(研究開発費)実額の4倍を経費として計上して良い会計ルールがあったり、ローカルの子供は小学校6年生の時点で大学に行くコースと職業訓練コースに分けられたり、外国人が驚く施策が満載です。

国家のためになるものは徹底的に優遇、そして競争させるという制度設計がはっきりと伝わってきます。

他にも外貨制限のない自由な通貨制度、外資の参入できる産業分野に制限がない、英語が通じるなど、外国資本を呼び込む土壌が整備されています。

シンガポールの主力産業

【金融と石油で得た利益を再投資するビジネスモデル】
各分野では具体的にどのような政策で他国と差を付けているのかは次の通り。

[金融]

金融は法律の規制と税制によってすべてがコントロールできます。そのため、シンガポールでは、年金を担保にしたローン、借入を起こして買う生命保険(→リンク シンガポールの生命保険)など、日本の金商法ではできないような商品が目白押し。

そして、各国からの投資家を保護するため、投資家の住んでいる国の税務調査に対しては、シンガポールの裁判所で判決を取らなければ情報提供をしないなど投資家の味方をする決まりになっています。

中国、インド、韓国、日本など、周辺の裕福な国の富裕層、大企業を法規制と税制面でのアドバンテージをちらつかせ、本来は祖国に納税するべき税金を値引きして誘致しまくっている。というのが過激に言えばシンガポールの金融です。

なお、法人税は、ビジネスに対する収益に17%、キャピタルゲインとインカムゲイン(配当)課税はゼロです。なお、中小企業の場合は、S$30万(2000万円)の利益までには、ほとんど税金がかかりません。

ローカルの弁護士にも話を聞く機会があったので、ファンドの設立についても聞いてみましたが、シンガポールは国際金融市場としての評判を気にするので、あからさまな脱法行為は当然に規制されて厳しく監視されているが、実際には、日本人がシンガポールで会社を作って、そこから外国人として日本の不動産を購入するというような取引も観測されているとのことで、どうやら日本以上に本音と建前をうまく使い分けている国のようです。

[石油精製]

ローカルの不動産エージェントに、シンガポールで高給な業種ってどのあたり?と聞いてみたところ、金融、不動産、石油関連とのことで、石油もシンガポールを支える重要な産業です。
http://www.weblio.jp/content/%E3%82%B7%E3%83%B3%E3%82%AC%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%83%AB%E7%9F%B3%E6%B2%B9%E4%B8%AD%E7%B6%99%E5%9F%BA%E5%9C%B0
石油は専門外なので、外部の説明に譲りますが、インドネシア、マレーシアなどの産油国から原油を輸入した後に、精製して出荷するプロセスを担っているようで、島の南側リゾート地、セントーサからは大きな石油精製施設がいくつも見えます。

[投資]

シンガポール政府投資公社(GIC)テマセック・ホールディングスキャピタランドなどの政府系投資機関が有名で、アジアを中心に世界中の金融商品や不動産に投資しています。

シンガポールの国家プロジェクト

【金融、バイオ、コンピュータなどの分野で国がイニシアチブをとって育成中】

 

シンガポール内では、事業の多くは国家プロジェクトとして行われており、そこまでやるのか!と感心させられる話を多く聞きます。写真はシンガポール証券取引所とバイオ技術系国家プロジェクトの一つ、BIOPOLISの看板。

たとえば、金融であれば、どのような規制や税制にすれば、海外からおいしいプロジェクトを抜いてこられるのか?というところを考えて、制度設計されてお り、民間企業の経営計画とはレベルの違うスペシャルな条件を諸外国に対して提示できるように考えられています。日本では、民間企業主導で行っているようなビジネス分野に税制や法律をフル活用して国を挙げて取り組んでいるのですから競争力は高いです。

さらには、ゲイランという風俗街で働く世界各国の娼婦ですら、しっかりと国によって管理されており、月に一度の病気検査が義務づけられた2年滞在のライセンス制なのだそうです。すべてが徹底して管理、最適化されています。

ちなみに、外国人を誘致して成り立っているのがシンガポールであるがゆえに、街の中心部にある高級コンドミニアムは、ほとんどが外国人の所有。そして、 実際に住んでいるのは金融系ビジネスに従事する白人が多く、ローカルの人は中心部から少し離れたHDB(HOUSING & DEVELOPMENT BOARD)という公団住宅のようなところに住んでいます。

コンドミニアムにしても観光地にしても、一等地のほとんどが外国人に占拠されてしまっているため、ローカルの人の不満が募っているようです。その関係で、最近は永住権の発行条件がかなり厳しくなっているとのことです。

街を歩くと実感できる好景気

【カジノのオープンも重なって、14.5%という過去最高のGDP成長率】

 

2010年は、マリーナベイサンズ(Marina Bay Sands)とリゾート・ワールド・セントーサ(Resorts World Sentosa)のオープンなども重なって、14.5%という過去最高のGDP成長率を記録したシンガポールですが、街を歩いた感覚では、

高級ワインショップが多い(店主に聞いたところお客の多くは中国人だそうです)

・高給な置物など生活必需品以外の高い商品が多い

カジノのスロットに空き台がほとんど無い(ラスベガスでもマカ オでも、このような状況は見たことがありません) なお、シンガポール人と永住権(PR)取得者は、カジノの入場にS$100を取られるのですが、入ったのは良いが混んでいてゲームができない。というクレームが多かったため、急遽、シンガポール人専用の部屋というのが用意されたほどの活況だそうです。

・カジノの出口には深夜までタクシー待ちに数百人が並んでいる。

・食品会社経営の中国人がカジノで3晩で16億円損した。

カジノの利益率は49%で開店3ヶ月でS$3億を稼いだ。建設費用は5年で回収できる計算。

・不動産エージェントが言うには、給料は安いのに物価がどんどん上がって楽ではない。5年前に買った自宅が現在ではかなり値上がりしたが、売ったら高くて次が買えないので売らない。

 

高級漢方薬の店と高級ワインショップ

大盛況のカジノ。スロットはラスベガスと少し違ってアジアンテイストのマシンが多い。

このように、日本人の不景気になれた目から見ると、とても景気の良いというより少しバブル気味?とすら感じる街でした。

しかし、日本のバブル期と違うのは、株のチャートを見てもそうですが、それほど過熱感がないというところです。不動産も上がってはいるようですが、短期に数倍になっているというわけではありません。

また、独裁政治なので動きが早い(不動産の規制も不動産エージェントが覚えきれないくらいにすぐに変わる)、日本の過去の失敗を学習している、という違いもあり、同じ失敗パターンを踏まないで済む可能性もあると思います。


2019/03/26更新