[M3-2010] イスラエル(テルアビブ・基本経済)

【日本から最も遠い国のひとつ、イスラエル。】

 イスラエルの不動産を語る前に、そもそもイスラエルとは何なのかを説明する必要があるでしょう。なぜなら、日本からはイスラエルに関する情報は、ほとんど入らず、感覚的に日本から最も遠い国の一つだからです。このページですらも日本語で読めるイスラエル経済情報の中では、最大級かもしれません。

日本人の想像するイスラエルは、中東情勢、陰謀説、戦争、など日常生活の中では、話題に挙げることすら遠慮されるようなテーマを連想する国ではないでしょうか。

  

写真はロイターより

日本のニュースでイスラエルが報道されるとき、映し出される映像は、必ずこの写真のように、戦争やテロに結びついたものです。そのため、多くの日本人は、イスラエルは危険な国だと思っています。

実はこれは違います。というより、違わないけど、一部の地域のみ。 というのが正しい表現だと思います。

実は、イスラエル人から見た日本は、ポケモン、自動車(特にマツダ車)、PlayStationなどの日本製品こそ有名ですが、日本自体については、「香港って日本の都市だっけ?日本はテレビで見たことあるだけだけど、とても狭いんでしょ?日本は兵役でアメリカ軍に入るの?」という程度の認識で、彼らからもあまり知られていないのです。

イスラエルに住む私の友人たちと。

テルアビブの実際

【危険なイメージとはほど遠い近代的で清潔な町並み】

 

イスラエルの首都はテルアビブです。Wikipediaによれば、2010年の都市圏人口は268万人であり、同国の人口(約700万)のおよそ40%が集中している。とのことです。

テルアビブはとても近代的で、世界でもシンガポールに並んで衛生的な街なのではないでしょうか。はっきり言って東京よりもきれいです。これはテルアビブの街が1909年に作られてから、まだ100年しか経っていないため、都市計画が近代的であることとも関係していると思います。

 

おしゃれなカフェやヨーグルトショップもあって文化度は高いです。 食べ物、治安、物価は東京並み。ホテルのクオリティと衛生観念はさすがに日本より良い国はないですが、日本以外ではトップレベルです。

 

建築アーキテクチャーがとてもユニーク。建国当初はアメリカよりもヨーロッパとの交流が強かったため、建築デザインはドイツのバウハウスに強い影響を受けています。

以下のインタビューの多くの部分は、イスラエルに長年住むダイヤモンド商の日本人、 JETROの日本人、現地在住の日本人ビジネスコンサルタントからのヒアリングです。各ヒアリング先はこのレポートに直接関係せず、文責は筆者に帰属しま す。イスラエルという国の特性上、内容は十分に裏の取れていないもの、非公式なものを多く含みます。

イスラエル=ユダヤ教の国

【ユダヤ教という宗教団体が独立して国になったような国】

イスラエルは特殊な国で、ユダヤ教という宗教団体が独立して国になったような国です。通りすがりの中学生に「あなたJewish(ユダヤ人)?違うの?じゃあなんでイスラエル来たの?」と聞かれてしまうくらい、イスラエル=Jewishなのです。

なお、Jewishなら誰でも永住権を取って社会福祉を受けることができます。近年はロシア系Jewishの移民受け入れが多く人口は増え続けています。中には、社会福祉などの金銭的な援助目当ての人もいるのではないか、とのことでした。

フランスにもロスチャイルドなど裕福なJewishは多いですが、近年はそれらよりもロシア系Jewishが強いのではないかとのことです。

Jewishが支えるイスラエル経済

【公式統計には出ないJewishマネーの動きが重要】

 イスラエルの経済は、どう見ても公式統計上に現れているきれいな資金だけではつじつまが合わず、Jewishからの地下支援に支えられているのがイスラエル経済です。

私はあまり気づかなかったのですが、現地の人の指摘によれば、テルアビブの街には、個人名の入った公共施設や公共設備が多くあり、これらは名前の示すとおり、Jewish個人からの寄付であることを示しています。

イスラエル通貨であるシュケルが強く、不動産がバブルなのは、サブプライムで行き場を失ったユダヤマネーが本国に回帰しているからではないか?イスラエルの銀行は去年まではマネーロンダリングの調査がなかった。現在でも銀行は、マフィアの資金は入れたくないがJewishの資金援助(アンダーグラウンドマネー)は入れたいのが実情。との説がありました。

イスラエルのIT産業

【イスラエルはIT先進国】

 IT基礎技術の業界では、イスラエルは基礎技術の発明大国として有名です。たとえば、RSA暗号、また、一部の無線による高速通信技術にもイスラエル起源のものがあります。

私の思うイスラエルのIT技術の特徴は、基礎技術に強い。Facebookやカジュアルゲームのような非技術系のITとは違う、テクノロジーベースのIT産業をイスラエルでは多く見ることができます。なぜそれが可能なのかを聞いてみました。

 

GoogleやRSAのオフィスは、テルアビブ中心地から10Kmほど北、ハイテク産業の集まるHerzliya(ヘルツェリア)に集まっている。

【教育】
テクニオンという東京工業大のハイレベル版のような大学があり、頭の良い学生を優遇して飛び級させたりするシステムが整備されています。

頭の良い学生は兵役でも開発部門(か空軍)に配備されるとのことです。 なお、軍事技術を転用してIT産業にというのは昔の話。今は軍隊で先端技術に触れインスピレーションを受け、という程度で軍の技術を盗んで民転しているわけではないとのことです。

ちなみに、この国では、日本での花形業種である銀行などの金融機関よりも、ITエンジニアの方が尊敬されています。1億円以上稼ぐようなスーパーエンジニアもいるとのことです。日本では聞いたことないですね。

【Jewishのネットワーク】
国がお金を出してベンチャービジネスへ投資しています。投資金額規模は、計上に出るものだけでも日本と同程度の金額。イスラエルの人口は東京の数分の一しかいないにもかかわらずです。

それに加えて、高学歴Jewishのネットワークを使える、というのと、Jewishの統計外の資金援助があるとのことです。詳しくは、統計値として表に出てくるものではないので、分かりませんが、確実にそのような事例はあるようです。

【基礎技術に強い理由】
なぜアプリケーションやサービスではなく基礎技術に強いのか?これは私のイスラエルの産業に対してもっとも聞きたかった質問の一つですが、現地で知り合ったイスラエル人の友人が言うには「別に基礎技術だけに強いわけではない。あえて言うなら、周囲にサービスを売るほどの市場がないので、基礎技術にならざるを得なかったのでは?」と言っていましたが、いまひとつ納得がいっていません。

しかし、他の国とは違い、有望な若者には資金力豊富なJewishが積極的に支援をして、国力を落とさないようにビジネスや技術を育てる仕組みができあがっていることは、よく伝わってきました。

イスラエルとダイヤモンド

【歴史的な経緯からダイヤモンド産業が活況】

 

イスラエルでは、ダイヤモンド関連も主要な産業です。

Jewishはその昔、ヨーロッパで金融と宝石の仕事だけに従事することが許可されていたため、その影響で今日もその業界はJewishが占めています。Jewishはいろいろなところで迫害を受けていたので、資産を防衛するために、持って逃げるのが容易な資産としてダイヤモンドを選んだ。不動産?持ち運べない。ゴールド?重すぎる。そのような理由もあり、ダイヤモンドが便利だったそうです。

ダイヤの取引はレーティングによって統一した価格表があるにもかかわらず、相対で、かつ跡の残らない取引が基本。ブラックマネーのロンダリングにも使い やすい。イスラエルの輸出入統計でダイヤはカウントされているが、同社内の国際支店間移動でも輸出入にカウントされてしまうので、輸出入の額と販売約定額 は一致しない。とのことです。

水技術の産業化

【かつてはイスラエルの弱点であった水の供給。必要は発明の母か。】

ミニイスラエルという子供用の教育施設の中にある産業説明コーナー。これは確か海水を膜で濾過して水を作っている工場。

ITとダイアモンド以外には、水関係の技術が非常に発達しています。なぜなら、イスラエルは地形的に水の少ない場所であり、水の採取は主にヨルダン川、ゴラン高原というような、有事の際には敵に占領されてもおかしくはない場所から得ていたため、国家戦略上、水の安定供給は非常に重要で、少ない水を最大限活用する技術が発展したと聞きます。

現在、イスラエルの生活排水の70%以上が農業用として再利用されているのだそうです。しかし、水技術については専門外なので、あまり詳しくは聞いてきておりません。

イスラエルを語る際に切り離せないのが、周辺の国々との間にある軍事問題です。イスラエルの経済とも密接に結びついた問題なので非常に重要なのですが、私はこの分野は全く素人なので参考までに。

イスラエルと他国との戦争

【アラブ諸国、特にイランとは一触即発の危うい関係性】

 イスラエルと周辺国の戦争は、宗教戦争ではなくシオニズムに対する戦争なのだそうです。シオニズムとは、Wikipediaによれば、「イスラエルの地 (パレスチナ)に故郷を再建しよう、あるいはユダヤ教、ユダヤ・イディッシュ・イスラエル文化の復興運動(ルネサンス)を興そうとするユダヤ人の近代的運 動。」だそうです。

【インティファーダ】
インティファーダと呼ばれる暴動、Wikipediaによれば、「イスラエルによるパレスチナ軍事占領に対する2度の民衆蜂起(或いは抵抗運動)」が、 1987年と2000年に発生し、そのときに日本企業はみんな撤退した。テルアビブが発展したのはこの15年くらいで、インティファーダ後に治安が安定したのも一役買っている。とのことです。

【イランとの関係】
現在、イスラエルの最大の脅威はイランの核武装です。イランは「イスラエルを地図から消したい」と公言しており、実際、イランの地図にイスラエルという国はないのです。イランの核の脅威におびえる状況だけは絶対に作りたくないので、アメリカが解決しなければイスラエルが先制攻撃を仕掛ける可能性もあるだろうとのこと。

これはBMWが作って問題になった地図。イスラエルの部分はパレスチナとなっています。identified Israel as ‘Palestine’ on a map or directory listing or has omitted Israel entirely (with the purported intent of “courting Arab business”) are not uncommon,  元サイトによれば、アラブ諸国への敬意を示すために彼らと敵対国であるイスラエルを地図上から消すことは、結構良くあることのようです。

イスラエルとアラブ諸国との関係は一触即発であることが伺えます。私の知人のサウジアラビア人と話したときもイスラエル人に対しては非常に強硬な姿勢でした。政治的な問題のみならず、一般人の認識としてもアラブ人から見たイスラエルは完全な敵国であるようです。

現在、対イランとの戦いに備えて(ではない。と公式にはアナウンスされているようですが)国民総参加の大規模な避難訓練、毒ガスマスクの配布(!!)が行われているそうです。ここまで本気だというアピールをしてアメリカとイランの間で話を付けてもらうためのポーズでは?とのことです。

毒ガスマスクの配布、というのには驚きました。もし日本で毒ガスマスクが配布されたら、国民は、もうこの国は終わるのかなあ、と想像すると思いますが、イスラエルでは、毒ガスマスクの配布は、今回が初めてではないようです。

なお、この訪問の二ヶ月後、2010年6月には、スタクスネット(Stuxnet)という、イランの核施設を攻撃するためのマルウェアがベラルーシのセキュリティ調査チームにより発見され話題になりました。ニュース記事をまとめると、「イスラエル政府が同国のディモナにある核施設の遠心分離機を用いてスタクスネットの実験を行っていた可能性が高い。これには、米国の国立研究所もセキュリティホールの特定に係わっており、米国政府の関与を示唆している。本件については、ロシアのセキュリティソフト会社カスペルスキー(Kaspersky Labs)も「国家の支援」抜きでの開発が可能であるとは考えにくい、という声明を出している。」とのことで、現地でヒアリングした際には、話を聞きながら、そんな大げさな・・・と正直思っておりましたが、あながち間違っていなかったようです。

【湾岸戦争の時は】
湾岸戦争の時は、イラクからスカッドミサイルが38発ほどテルアビブに飛んできましたが、なぜか死者は出ませんでした。最近のミサイル攻撃は、建物をピンポイントで狙うので、精度が良ければ軍事施設以外の場所が攻撃されることはなく、日本人が想像する太平洋戦争のじゅうたん爆撃みたいなのは、今時の戦争 ではやらない、とのことです。ちなみに、湾岸戦争の直前にも毒ガスマスクの配布があったそうで、毒ガスマスクの配布は戦争の予兆?とのお話でした。

それにしても、住人がみな兵器に詳しいです。兵役で実際に兵器を扱うためでしょうか。

謎の国イスラエル

【暗躍する諜報組織】
シャバック(שב”כ)とモサド(המוסד)という諜報組織あり。先日のドバイの暗殺事件もモサドであるとのこと。 ちなみに、ヘブライ語は右から左へ読みます。

MSN産経ニュース 2010.3.28 18:00
アラブ首長国連邦(UAE)ドバイのホテルで今年1月、イスラム原理主義組織ハマスの幹部が暗殺された。監視カメラの映像などから、ドバイ警察当局は、イスラエルの情報機関モサドによる犯行とほぼ断定。

【アメリカとの関係】

 アメリカの政治家はAIPAC というJewishネットワークへのロビー活動を重視している。Wikipedia によれば、AIPACは「アメリカにおいて、全米ライフル協会をも上回る、もっとも影響力のあるロビー団体とする報道もある」とのことで、Jewish団 体の影響力がアメリカにおいても強いことが伺えます。多くのIT系大企業がイスラエルに支社を持つのは、Jewishにも配慮してイスラエルに支店作りましたよ。というロビー活動的な意味合いが強いとの説もありました。

テロは?

「ガザ地区、レバノンからのロケット攻撃が散見されるもその数は減少」とJETROの公式資料に記載があります。ガザ地区やレバノンからのロケット攻撃というのは、攻撃というよりは嫌がらせレベルのものであるとのことです。多少の攻撃では驚かないのがイスラエルなのでしょうか??

やはりイスラエルの話だけあり、緊張感高まるテーマになってきましたが、詰まるところ、テルアビブは安全なのでしょうか?治安は非常に良い場所のように 見えるのですが・・。現地人に聞くところによれば、安全と決まっているわけではない。むしろ、攻撃されるならテルアビブしかない。エルサレムは聖地なので 普通に考えれば攻撃するやつはおらず安全。とのことでした。

 

聖地エルサレムは近代的なテルアビブとは違って重々しい雰囲気に包まれた街です。右は有名な嘆きの壁(Western Wall)。祈る場所は男女別です。

しかし・・・このインタビューから約1年後、

(2011年3月24日01時25分 読売新聞)
エルサレムで爆弾テロ、1人死亡…7年ぶり
【エルサレム=加藤賢治】エルサレム西部のユダヤ人地区のバス停近くで23日、爆発が起き、イスラエル放送などによると、1人が死亡、約30人が負傷した。

なお、現地で話を聞いた人が言うには、「私から言わせれば、イスラエルが敵国から攻撃される危険よりも、日本の地震の方がよっぽと怖い!私は日本に行くときは、建物の避難経路を必ず確認する。」と断言されておりました。

もうこれは、さすがに大げさなのではないかなあ・・日本の方がイスラエルよりも危険・・?? という感覚で聞いておりましたが、大方の予想に反して、日本では2011.03.11の大地震で多くの死者を出し、放射能汚染の危機にさらされる、という、まさかの展開となったのはご承知の通りです。

すごい国。イスラエル。

経済的なところは差し置いても、イスラエルというのは、非常にユニークな国で、日米の常識と言われる価値観がいろいろ覆ります。男女平等、非核三原則、平和(שָׁלוֹם – shalom)、無神論の常識、他人とのつながり方、商習慣、職業の優劣などなど。

とにかく誰かと話すと、必ず宗教の話になる国です。そして、それは単なる宗教的なつながりとしてではなく、国を動かすためのJewishネットワークとして組織されています。そして、Jewishネットワークは表には出ませんが、世界を統治している陰の組織の一つのようです。

イスラエル人は、ホロコーストで虐殺されたことから始まり、いろいろなところで迫害されているので、防衛のために知恵を使って強くなりました。たとえば、いまだにイスラエル人は、特定の人種からは快く思われていないようで、私の友人のイスラエル人も、ロンドンに旅行に行ったときは、イスラエル人とは名乗らずフランス人を装ったそうです。

また、イスラエルの小学校ではホロコーストの記憶を幼少期に脳裏に焼き付けるための教育プログラムがあります。先生は、クラスの全員に家族と友人知人の名前、知っている限りすべてを紙に書かせます。そしてみんなの作った名札を一つの鍋に入れ、最後に先生がそれに火を 付けます。そして、ホロコーストの時はこれとは比較にならない多くの人たちが虐殺にあったのだ、という話をするのだそうです。

それらの経験は、彼らに、この国は自分たちが一致団結して守らなければ滅びてしまう、という危機意識を植え付けるのでしょう。これが日本の若者とは根本的に考え方の違うところで、決して真似のできない、彼らの強さでもあります。

ここから先は本題の不動産編です。主にイスラエル人の建築家、現地では大物らしい不動産デベロッパーの社長に話を聞きました。


2014/04/23更新