[E1-2010] マルタ(基本経済と居住権)

マルタとは

マルタ良い国です。ひとことで言うなら地中海の沖縄!しかもオフショア。

人口40万人の小国ですが、カジノ、高級レストラン、ローカル料理、海とマリンスポーツ、アジア人ほとんどいない、雨降らない、16歳から酒が飲める、物価は安くはないが高くもない。中世からの世界遺産あり。という、バケーションとか新婚旅行には最高な感じの国です。 イギリス連邦に加盟しており、マナーや法律体系もイギリス仕込みでしっかりしています。

地中海の沖縄

 

マルタにはイタリア、フランス、ドイツなどなど、ヨーロッパ圏から多くの旅行客が訪れます。ユーロ紙幣は製造番号からどこの国で印刷されたかが分かるようになっているのですが、圧倒的にイタリア製が多いです。マルタ製は見たことないです。

沖縄と同じように経済は夏の観光シーズンに依存しており、寒い時期は閉鎖されている店やホテルもあります。サルデーニャ(Sardegna イタリア)コーシカ(Corsica フランス)は観光の島としては似ていますが、英語は通じないのでマルタに利があります。

マルタの人口はわずか40万人で土地が狭い

非常に少ないです。少ないと何が良いのか。制度や仕組みを変えやすいと思うのですよね。規模的には 国民全数調査を一台のパソコンで管理できてしまう規模ですので、やる気になれば制度革新なども実務的には速いはずです。

誰に何を聞いてもみんな知ってるくらい狭いです。こういう場所は沖縄と同じで景気が良くなったときに地価が上がる属性の場所だと思います。実際、ユーロ加入バブルでPortomasoというマルタで一番いい場所は、5年で2倍になったとのことです。

多国語を話し、まじめな人が多い

 

日本に外国人があまり来ない理由のひとつに、英語が通じないためというのがあります。マルタでは街の不動産エージェントでもこれだけの言語に対応できる環境が整っています。イギリス仕込みのカトリックだからというのもあり、店の店員さんなども非常にまともです。食べ物も日本と変わらないハイレベルな店もあります。

中国とアメリカに浸食されていない

アメリカ式の大型店もなければ、中国のチープなプラスチック製品も出回っていない。カジノのルーレットもヨーロピアンタイプ。アジア人はほとんど見かけ ない。ビジネスの仕方もおそらくイギリス流なのでしょう。日米ほど熱心ではなく、どちらかと言えば「ワインを飲む人種は仕事をしない」と言われるヨーロッパ人の血筋のようです。

製造業と観光業

ST Microが半導体工場をマルタ空港のすぐ脇に作っています。半導体工場が進出してくるくらい地元民はきちんと働きます。金額ベースでは製造業の半分がST Micro関連みたいです。また、語学学校(これが意外に大きなウエイトを占める)と観光ビジネスもメイン産業です。なお、マルタで仕事を持っている日本人は10人くらいしかいないのではとのこと。

島民はきちんと働きますが、アジアほど商売熱心ではありません。13~16時まではシエスタという昼寝タイムそして、日曜になると店はすべて閉まります。24時間営業の店は法律上、作れないようで、日曜日も店を開けられる区域は限られています。これはカトリック(日曜礼拝)の関係もあるのかもしれません。日本と比べると「熱心に働く」の次元が違うようです。

発展途上国

5つ星ホテルができはじめたのは13年前 90年代から、 タバコの吸い殻のポイ捨てをしなくなったのは5年前から、という先進国と発展途上国の間にある国です。

 

排ガス規制がなく街を歩くと喉が痛くなります。規制はあると 言っていますが日本の感覚からするとひどいレベルです。20-30年くらい前の車がたくさん走っていて、しかも中身を改造してディーゼルエンジンに載せ替 えているようです。なぜ観光立国なのにこの程度の規制もしないのでしょう。しかし、あらゆる分野において何年かの期限内にEUスタンダードに準拠することが求められるとのことなので、徐々に先進国基準の規制と品質に変わるのだと思います。

遺跡の跡地に駐車場を作るというようなプランがいくつも出てしまうのも発展途上国的な考え方なのか。世界遺産に指定されているはずの、バレッタの街の中央通りも観光用に古くからの建物を壊して幅員拡張したのだとか。

マルタは電力と水道については、あまり状況が良くありません。

数年前から、火力発電用の石油を産油国との相対ではなくて、マーケットから調達しなければならない契約に変わったらしく、原油乱高下が電気代と水道代にもろに反映されてしまっています。電気代と水道代が高いのはマルタ人の悩みなのだそうです。水道は、その55%が海水を浸透膜で濾過したもので、それには大量の電気を使うので、水道代は発電コストに連動しているのだとか。水道代はここ数年で2倍になり、マルタの平均的な水道代は現在60ユーロ/月、電気代は0.17ユーロ/unit×300ユニット/月=51ユーロ/月、程度とのこと。EUの中では TOP5に入る高額な電気、水道代とのことですが、日本人から見れば普通ですね。まあ、水道代はちょっと高いかもしれませんが。

EU加盟

 

マルタは2004年にEUに加盟しました。EUってユーロ通貨と圏内自由貿易という以外は何がすごいのか全く知らないのですが、多分、標準業務プロセス や最低限の規制など国としてやるべきことをEUが提供してくれているのではなかろうかと思います。パスポートもマルタ国ではなくて’EUの中のマルタ’と いう発行のされ方になります。大学の卒業認定までEU加盟国で学位の互換性ありとのこと。SAPのERPソフトの国家版のようなイメージなのではないか と。「多様性における統一」というのが理念で、強制項と選択的適用項がある様子です。

自動車のナンバープレートにもEUのマークが入ってる。ということは、自動車の管理システムはEU標準に準拠なのでしょう。マルタのような小国にとっては低コストでまともなシステムを導入できる良い仕組みなのかもしれません。

EUに入った今となっては、発展途上国的な部分は徐々に解消されていくはずです。現在、国営郵便局の民営化をやってるところなのだとか。このパターンは経済にとっては悪くない方向性です。何年かすれば、もっとすっきり整備された観光地になっているのは間違いないと思います。

小さいながらも裕福な国

 

マルタにはホームレスは一人もいません。失業率は6.4%(2007年)ですが、失業しても国の補助が手厚い様子。そのため、違法入国を試みる難民が海から結構たくさんやって来るのですが、なぜか一人1,000ユーロもの現金をお土産に持たせて強制送還しています。

マルタの社会保障の例

・生活保護は100ユーロ/週

幼稚園から大学まで完全無料医療費完全無料老人ホームは国営で無料

・高校、大学生は国から小遣いをもらえる 90ユーロ/月くらい

・高校生は10月になると400ユーロもらえる。大学生は初年度1,000ユーロ(金額は学部により)もらえる。2年目はその半額。

・年金は62歳から 数百ユーロ/月

マルタの標準的な給与

・学校の先生は月給1200ユーロ(ただし夏休みが3ヶ月もあり)

・物販のマネージャー1500ユーロ。2000ユーロもらってれば悪くないサラリーマン。

・アルバイト時給4.5ユーロ

仕事がないわけではありませんが、あまり種類は選べないそうです。業種的にはマルタのITは結構進んでいるらしいです。マイクロソフトの現地法人もあります。CG製作のプロダクションなんかも国内にあったりします。進んでいるとは言っても日本人が驚くようなレベルのものはないと思いますが。

マルタ人に対する税金は、累進課税ですが中堅の人で18%くらい。社会保障が給料天引き10%。住民税無し、とのことで、日本と同じような水準だと思います。

マルタ人に言わせれば、「マルタは給料が安くて税金が高いが、社会福祉がしっかりしているので、明日の心配をする必要はなくて良い」とのことで、このマルタのゆとりのシステムは日本人からするとうらやましい限りです。日本人に生まれたのは世界一ラッキーと思っていましたが、意外にそうでもないのかもしれませんね。

安い給料でどうやってPCなど、世界共通価格の(高い)商品を買うのか?と聞いたところ、学生は優遇されていて、学生はサインをするだけで購入費用を国が出してくれて、販売価格も学割が利くと至れり尽くせりです。

島民が40万人しかいないからコストがかからないにもかかわらず、年間100万人の観光客がお金を落としにやってくるので、儲かっているのでしょう(実際は、観光以外のセクター(半導体とか)も結構大きいらしいですが) 地中海クルーズの観光船も年間400籍ほど寄港するそうです。人口が少なくて外貨を稼ぐ術があるというのはすばらしい。シンガポールのようですね。実際、マルタ人と飲んだときも、マルタ人の政治に対する愚痴はあまり悲壮感がないなあ。という印象でした。

実はオフショア

マルタはあまり知られていませんが、外国人に対する税制優遇プランを持っている国です。EU加盟国にしてオフショアとはなんたること?と思うわけですが、マルタがEUに加盟する際に、このオフショア税制だけは当面、ふさがないという密約があったのだそうです。実際、近年ではルクセンブルクよりもマルタの方がファンドの運用コスト(税金)が安いらしく、ファンド筋からもにわかに注目を集めています。

ヘッジファンドを虜にするマルタ-年間300日の晴天と透明性が売り
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-LXB7D107SXKX01.html

マルタへの投資

投資環境

マルタという国、個人が投資するには非常に良い条件が整っています。まだ注目度が低い割には発展性のありそうな国で、この先が面白そうです。

ヨーロッパの国だけありサービスやモノの品質がまとも。英語も通じて治安も良い割にはまだまだ物価が安い。

・EUに入ったばかりでまだ発展途上国から先進国への過渡期。これから開発ラッシュがまさに始まるところ。

表面上はEU準拠の税制だが実はオフショア税制の規定もあり国は外国人投資家を歓迎し始めているが、まだほとんど認知されていない。

・市場規模が小さすぎて大口投資家は入ることができない。市場規模が小さいのでバブルが発生したときは高い値上がり率が期待できる。

税制と居住権、そして投資の匿名性

マルタでは不動産のキャピタルゲインは3年以上保有の場合ゼロそれゆえに北欧やロシアからたくさんお金持ちが来ています。個人、法人、非居住者・・など投資主体によって適用される税のルールは異なりますが、概ね外国人にとってもメリットがあるシステムになっています(ここに限らず海外って、まとめ資料みたいなのを作ってくれる人が少ないのですよね)

ほか、おさえておくべき点は、マルタに物件を買った場合、賃料収入の20%が見なし経費となって、経費控除後、利益に対して20%くらい(累進課税)の 税金がかかる。 物件の購入費用の5%が税金となるが、これを安くするために物件価格を安価に設定して、その代わりに借地代を月々分割で支払わせる方法もある。というあた りでしょうか。これは現地人から聞いた話なので、外国人居住者に対する税制は、累進課税ではなく売却時キャピタルゲインと賃料収入の15%が税金となるかもしれません。レシートを集めておけば経費として控除されるとのこと。税制については、現地の人に聞くと、外国人用ではなく現地人用の税制を説明されたり するので混乱しました。ここは要再調査です。

法人を作る場合は、初期費用が2Kユーロで年間の維持費が数Kとのこと。10K/年くらい払えるならば、法人の所有名義を会計士などの代理人名義にして匿 名性を保つこともできる!!とのことで、さすがオフショアです。「マルタってオフショアだったとは知らなかった」と言ったら「いやいやオフショアじゃないんだ’今は’。ロシア人のマフィアとか怪しい奴らは全部断ってる」と言ってはいましたが。。。

法人の不動産キャピタルゲイン課税は35%です。一般事業に係る課税はいったん35%が法人に課税されますが、なぜかその後で株主に30%が戻ってくるので、オーナー兼経営者であれば実質の課税率は5%という抜け穴のようなものがあるようです。しかし、この仕組みは不動産キャピタルゲインには適用されませんこのような突拍子のないことを言われると、英語の聞き間違いかと耳を疑ってしまいますが、どうやら間違いない模様です。

これはおそらく、表向き税率5%としてしまうとEU加盟基準を満たさなくなってしまう、もしくは租税回避地と認定されてしまうとか、そういうことなのだと思います。おそらく、財務省やJETROが作っている資料にもマルタの法人税は35%。とか書かれているのではないかと思います。

ちなみに、現地でビジネスをやる場合、政治家や警察、マフィアとの付き合いが必要か?と聞いてみたところ、必要ないと思うとのことなので、外国人でも参入しやすい環境にあるのかもしれません。

なお、日本人が投資する場合、日本はEU加盟国ではないので、日本の税法上、日本での税金支払義務が発生します。ただし、現地に会社を作るなど、うまく かわす方法はあるようです。マルタで会社を作った場合はマルタ国内での税務申告が必要になってくるため、ある程度の投資規模がないとオーバーヘッドが大き く面倒かもしれません。

マルタの不動産エージェントは「マルタで取引があったというのをどうやって日本の税務署が把握するの?そんなの心配する必要ある?」と言っていました が、日本の税務署クオリティは、ホントに公務員か?というくらいレベルが高いので、正しく申告することをお勧めします。なお、2012年3月現在、日本とマルタの間には租税条約は締結されていません。

マルタと租税条約を締結している国のリスト

Albania, Australia, Austria, Barbados,Belgium,Bulgaria,Canada,China,Croatia,Cyprus,Czech Republic,Denmark,Egypt,Estonia,Finland,France,Georgia,Germany,Greece,Hungary,Iceland,India,Ireland,Isle of Man,Italy,Jersey,Jordan,Korea,Kuwait,Latvia,Lebanon,Libya,Lithuania,Luxembourg,Malaysia,Montenegro,Morocco,Netherlands,Norway,Pakistan,Poland,Portugal,Qatar,Romania,San Marino,Serbia,Singapore,Slovakia,Slovenia,South Africa,Spain,Sweden,Syria,Thailand,Tunisia,Turkey,United Arab Emirates,United Kingdom,USA

不動産を買うと居住権が付いてくる

マルタに不動産を買うと居住権がついてきます。居住権の維持費には「The prospective new resident will be required to remit to Malta at least 14,000euro per annum…..」と書かれており、毎年14Kユーロをマルタの自分の銀行口座宛に送金する必要があります。これは不動産エージェントに聞いたところ、送金記録が残っているだけで良く、実際には資金を循環させているだけでもOKとのこと。

居住者になるとマルタで上げた利益に一律15%課税。税金のミニマムチャージは年間4Kユーロです。この年間4Kユーロが居住権維持のための費用と理解して良いでしょう。不動産の固定資産税的なものはなし。相続税は5%のみ。(1Kユーロ≒10万円) という話がマルタオフィシャルのパンフレットに書いてありました。

自国でのビジネスもあるのにそう簡単に移住できないだろうと思ったりもするわけですが、特許などの無形物を主な資産とする人にとっては、居住地を変えてもビジネスにあまり影響がないので、使い勝手があるのです。

マルタの外国人に対する税金は、基本料金高め、そのかわり課税率は低いというオフショアに良くあるパターンのようです。EU圏とは二重課税協定を結んでいるのでスウェーデンなど税金が高額な国の人が租税回避目的で投資しに来ています。また、ロシアからはマネーロンダリング資金が流れてきているとのこと。奥深すぎですね。

銀行と証券

Bank Of Valletta(BOV)では外国人でも口座の作成を受 け付けていますが、おそらく、非居住者が少額の資金を入れておくためだけの口座開設は、うまく断られます。私も日本の銀行からBank Reference Letterを送って、口座開設を試みたのですが、1回目は書類が届いていない、2回目はこの様式では開設できない、などあやしい回答をしてきました。 (当初、マルタにコンドを購入する前提で融資の話を聞きに行き、口座開設をする運びになったのですが、その後、いろいろ考えて、物件の購入は中止しまし た。なのですが、株式の取引をするために銀行口座だけ、とりあえず開設したいたという依頼をしたらこの反応でした)

Bank Of Vallettaの資料より。Malta Stock Exchangeには20銘柄くらいしか上場していなくて、とても海外の機関投資家が入ってこれるような規模ではありませんが、個人投資家としては面白いと思います。社債も取引できて、大体いまのイールドは6-8%くらい。ユーロ建てなので、まあ普通ですが(2010年1月現在)

面白いのは、マルチカレンシーの口座で、ブルガリア、チェコ、デンマーク、エストニア、ハンガリー、アイスランド、リトアニア、ラトビア、ノルウェー、 ポーランド、ルーマニア など、普通のFX会社では見かけないような国の通貨を取り扱っているところでしょうか。それらの国の株式も買えるようなことを 言っていたので挑戦してみたかったのですが残念です。なお、Bank Of Vallettaで取引をした時点でマルタ国内での税務申告が必要になるとのことでした。

なお、Bank Of Vallettaの銀行システムは、ほとんどマルタ人が作っていて、ネットバンキングから携帯料金や税金の支払いが出来るなど、よくできています。HSBCのは出来が悪いとのこと。


2014/04/23更新