[E3-2012] モナコ(プライベートバンクと居住権)

モナコとは

  

モナコはフランスのニース(南フランス)から電車で20分という場所に位置する、フランスの一部が独立したようなミニ国家です。
日本からの直行便はありませんので、ニースやミラノまで飛行機で12時間以上かけて飛び、そこから陸路でモナコへ入るという長い道のりを辿ることとなります。

モナコの最大の特徴は、なんと言っても超富裕層マネーを集めることを国策として行っている点です。富裕層を迎えるに相応な社会インフラ、そして、お金持ちを魅了してやまない税制優遇(インカムゲイン、キャピタルゲイン、所得税のすべて無し)を提供しているところです。

  

モナコのフラグシップホテル、オテル・ド・パリ(Hotel de Paris)は1泊750ユーロ

モナコには数十億円を超えるクラスの超富裕層が多く居住しており、予算に上限なく個人の懐具合に合わせてテイラーメイドで何でも手に入ります。たとえば、東京で賃料1,000万円/月の賃貸物件はありませんが、モナコにはそれ以上の物件がいくつもあります。クルーザーも東京湾では見ることのできない 10億円を簡単に超えるクラスの大型船舶が何隻も停泊しています。遊びも桁違いでレンタルクルーザーは1週間で30万ユーロ(3,000万円・船長や料理 人など含めたフルサービス)です。この価格でも、買うよりは安い合理的な選択なのだそうです。

迎える側もセレブリティの扱いに慣れています。たとえば、ホテルのバレットパーキングのスタッフも高級車を日常的に取り扱うので、数千万円の高級車で乗り付けても誰も驚きません。高額な車で乗り付け、大きな買い物をしても目立たなくて済むのは、富裕層から見れば安心して生活できる環境と言えるでしょう。また、小さい街にもかかわらずたくさんの警官がおり、治安に維持には格段の配慮をしているように見えます。

 

船舶の係留権にも265Kユーロ(2,700万円)という値段が付いている

 

雑貨店や酒屋にも富裕層向けアイテムがたくさん。右側のルイ13世(Louis XIII Rare Cask)は1万ユーロだそうです。

モナコに居住権を取る

超富裕層の街、モナコですが、モナコでは小金持ちも受け入れています。

モナコのプライベートバンクに約100万ユーロ(1億円・金額は銀行により異なり概ね3,300万~2億円程度)を預ければ、銀行が「この人は十分な資産があり、働かなくてもモナコで生活できる人です」という証明書を発行してくれます。それに加えて、日本での無犯罪証明書と東京広尾のフランス大使館(モナコの国務の多くはフランスが代行しているため)で発行されるビザ、モナコに住居を構えている証明書(物件は購入しても良いが賃貸でも良い)を揃えて当局に提出。その2~3週間後に銀行を通じてモナコの警察を紹介してもらい面談をすれば、比較的、簡単に居住権を発行してくれるようです。

居住権は、初回は1年有効のものが発行され、1年有効×3回 → 3年有効×1-2回 → 10年有効と更新ごとに滞在許可期間が増えていきます。更新の際には電気代の請求書など実際に住んで生活していることを証明することが必須です。

1億円程度の預け入れで居住権を発行してくれるというのは、シンガポールの居住権を取るために必要な資産額(2012年現在6億円)などと比べても割安感があります。

ただし、モナコの銀行担当者いわく居住権は5,000万円程度でも発行してくれるかもしれないが、それしか持っていないとモナコでは2年でそのお金はすべて無くなってしまうとのことで、生活費は別途かかります。私の感覚では、日本並みの生活で旅行や贅沢をしなければ不労所得が月額100万円あれば、生活には困らないという印象です。

 

このような車や船舶を乗り回す生活では数千万円の生活費では不足でしょう。街ではフェラーリとポルシェを最もよく見かけます。

これだけ手頃な価格設定なのにモナコでアジア人を見かけない理由を現地のプライベートバンカーと話したところ、そもそもモナコをよく知らない。フランス的な文化に馴染めない。アジアから地理的に遠い。日本語や中国語のコミュニティがない。などが原因ではないかとのことでした。これには同感です。それに加えて例によって日本人は英語が不得意であることも欧州進出の妨げになっていると言えるでしょう。

モナコのプライベートバンク

ネットで調べたところモナコには次のようなプライベートバンクが存在しており、そのうち4件を訪問してきました。営業時間はどこでも概ね、土日祝日を除く平日の9~14時、昼休みを挟んで14時~16時となっており、ヨーロッパ流に昼休みはきっちり取ります。はっきり言ってあまり一生懸命には働いていないのではないかと思います。

なぜ、モナコに世界中から富裕層が集まってくるのか。実は、モナコはフランス以外とは租税条約の締結をしておらず、他国での脱税はモナコでは罪に問わないと公言しています。そのため、欧州、ロシア、北欧などから本国での租税回避目的の資金が集まってきています。特に、近年ではロシア超富裕層の勢力が強いそうです。

□Credit Foncier de Monaco
11 Boulevard Albert 1er Boite Postale Nº 449 98012 Monaco Cedex
Tel.: 377 9310 2000 Fax: 377 9310 2350

□Dresdner Bank Monaco
24 Boulevard Des Moulins Boite Postale Nº 23 98001 Monaco Cedex
Tel.: 377 9770 1701 Fax: 377 9770 1741

□CIC Lyonnaise de Banque
26 Boulevard Princesse Charlotte 98000 Monaco Cedex
Tel.: 377 9798 2070 Fax: 377 9798 2079

□KB Luxembourg (Monaco) S.A.
8 Avenue de Grande Bretagne Boite Postale Nº 262 98005 Monaco Cedex
Tel.: 377 9216 5555 Fax: 377 9216 5599

□UBS (Monaco) S.A.
2 Avenue de Grande Bretagne 10-12, Quai Antoine 1er 98007 Monaco Cedex
Tel.: 377 9315 5815 Fax: 377 9315 5800

□BNP Paribas Private Bank Monaco
15/17, Avenue de Ostende Boite Postale Nº 257 98005 Monaco Cedex
Tel.: 377 9315 6800 Fax: 377 9315 6801

□Compagnie Monègasque de Banque
23, Avenue de la Costa Boite Postale Nº 149 98007 Monaco Cedex
Tel.: 377 9315 7777 Fax: 377 9325 0869

□Crèdit Mobilier de Monaco
15, Avenue de Grande Bretagne Boite Postale Nº 81 98002 Monaco Cedex
Tel.: 377 9350 5208 Fax: 377 9330 5913

□Banque Pasche Monaco
3 Boulevard Des Moulins Monaco
Tel.: 377 9797 3222 Fax: 377 9797 3225

□Societe Generale Bank & Trust (Monaco)
13-15 Boulevard Des Moulins Boite Postale Nº 262 98000 Monaco Cedex
Tel.: 377 9797 5859 Fax: 377 9797 5806

□Banque de Gestion Edmond de Rothschild Monaco
2 Avenue de Monte Carlo Monaco
Tel.: 377 9310 4747 Fax: 377 9325 7557

□HSBC Private Banking

 

アポ無しで訪問しましたが、いかにも仕事のできそうなイタリア人のPB担当者が相手をしてくれました。

曰く、「優先出資証券や劣後債の担保評価は銘柄によりだが(欧州系は評価が出る様子?)時価の60~70%だろう。過去1ヶ月はハイイールド債の買い時 だった」「プライベートバンク選びで一番重要なのは担当者だ。私はアセットマネージャーであって、仕組債のセールスマンではない。顧客の成長が私の成功。 そのため、手数料も安価に設定している。」「債券ETFは運営者によって債券のデュレーションが投資家の意志に反して変更されてしまうこともあるので、個 別銘柄の債券の方が良い」「ISINコードを指定してくれればブルームバーグで調べてどんな商品でも提供できる」など、一歩踏み込んだ専門的な話も一通り 分かっているようでした。


ミニマムデポジットはUS$ 2M(パンフレットには1Mユーロと書かれていますが敷居が上がったそうです。2012年3月現在)

□ソシエテジェネラル

 

マネージドポートフォリオ(ファンドマネージャーにお任せ)と通常の預け入れの2種類をサービスラインナップとして提供しているようです。

マネージドポートフォリオの場合は、預け入れ資産に対して0.5%を年間の信託報酬として徴収されます。個別の取引には規定手数料が設定されていますが、これは非常に高いので実際には担当者との相談で手数料が決まると言っていました。

通常の預け入れ(safe keeping)に対しても年間で0.1%のrelationship fee(顔つなぎ費用)がかかる様子ですが、手数料はたとえば、個別債券の売買で30~40bpなど日本のPB各社に比べれば安価な設定です。

HSBCと同様、証券担保融資はやっていますが、商業銀行が行っているような不動産に対する融資はしていません。ミニマムデポジットは1Mユーロです。

□UBS

アポ無しで行きましたが普通に接客室へ通してくれました。初日は、たまたま担当者が不在であったため、会議室から別の支店にいる担当と電話で話して翌日のミーティングを取り付けました。

翌日、店に足を運んだところ、40歳くらいのキレイ系セルビア人女性がクライアントアドバイザー(営業)として出てきました。彼女の旦那は韓国人だそうです。

UBSの特徴は、非居住者への口座開設がとても厳しいことです。日本に住んでいて、今後もモナコに移住する気はないと言うと口座開設は受け付けてくれません。モナコに居住することを前提に口座開設の話が始まります。UBSは脱税幇助に関する問題で一度アメリカ(IRS)とやり合って負けて以来、世界的に厳しいようです。口座を作って資産だけを移すという用途には使えません。なお、ミニマムデポジットは1.5Mユーロです。チューリヒとシンガポールのUBSは非居住者に対しても比較的簡単に口座開設をしてくれるだろうとのことです。

オフショア国のPBはどこでもそうなのですが、どんな商品を取り扱っているのか?と聞くと、なんでそんなこと聞くのか?というような反応をします。なぜなら世界中の上場商品、ヘッジファンド、仕組債など、すべてを国境なく売買できて当たり前なのがオフショア金融だからです。なお、日本では金商法による消費者保護というタテマエがあり、金融庁のお墨付き商品でなければ取り扱いができませんので、世界中のどんな商品でもとは言えません。このあたりは、日本の金融行政が鎖国的であり日本の金融機関が世界に後れを取っている様子を象徴しています。

証券担保融資の金利はLibor+150bpですが交渉可能です。面白いのは、不動産担保融資も行っている点で、不動産価格の50%以上の証券資産を担 保に入れれば、フルローンで融資が出ます。金利はLibor + 175bpで、5年ごとのローンオーバーが可能で証券担保融資と同じで元本支払いなしの金利のみ支払いです。この場合でも不動産への第一抵当の設定は必要 となります。一般の商業銀行では、非居住者向けであれば自己資金50%と生命保険への加入を要求してくるだろうとのことです。EU加盟国国民であれば自己資金ゼロ~20%程度で一般の銀行が融資を出してくれるかもしれないとのことでした。

□とあるモナコの銀行(おすすめ!仏クレディアグリコル系)

 

モナコの王族が30%、残りをクレディ・アグリコルが出資する由緒正しい銀行。高級クルーザーが多数停泊するマリーナの向かいに本社を構えます。

メニューは3種類あり、プライベートバンキング1Mユーロ以上、パーソナルバンキング300Kユーロ以上、それ以下は一般口座となります。今回は、プライベートバンキングの入り口で話を聞きましたが、パーソナルバンキングを選ぶ場合でも同じ担当者が担当してくれると言っていたので、サービス内容に大きな違いはないのかもしれません。

この銀行の使い勝手としては、なんと言っても300Kユーロでパーソナルバンキング口座を開設するだけでも居住権を取得するために必要な銀行預金証明書を発行してくれる点です。他の金融機関に比べて数分の一の預入額で証明書の発行を依頼でき、その後の不動産賃貸など一通りの手続きをサポートしてもらえます。

担当者は33歳のフランス人男性でした。あまり英語がうまい人ではなかったのですが、一通りの話は通じました。PB勤務での年収は10万ユーロ程度で、 彼はモナコで働いていますが、フランス人なので所得にはフランス国内と同じく課税されているとのことです。30Mユーロを預けている顧客やロシア人で33Mユーロ、1300平米の邸宅をモナコに購入した人がいる(!)などと説明してくれました。担当者は、隣町のマントン(フランス)に住んおり「モナコで働いているような人はモナコに住む生活費を捻出できないので周辺の街に住んでいる」と言っていました。

プライベートバンクの精神をいくつか語ってくれました。たとえば、「同じ担当者が長く顧客をサポートして長期間かけて信頼を得て(confident relationship)顧客の資産を増やす」「そのために手数料は最小限のみ(お任せ型の信託方式では総資産に対して年間0.1~0.3%、safe keepingと呼ばれる預けておくだけの契約ではカストディフィーは取らない。個別銘柄の取引手数料は0.1~0.3%程度)」など。これらは日本のPB担当者が言っていたのとほとんど同じで世界共通の考え方のようです。

前述のUBSと同じ考え方で不動産に対する融資も行っていますが、数ヶ月EURIBOR+スプレッドのロールオーバーを繰り返すという方式ではなく、 7~10年間という貸出期間を予め設定するようです。しかし、毎月の約定弁済はなく期限までに一括で返済するという証券担保融資と同じ考え方の貸し方で す。貸出金利はEURIBOR+220bp程度、30Mユーロ程度預ければ+100bpまでは交渉できるとのことです。


2014/04/23更新