2014/11/21

できるやつは製造業に就職しろ!

■いま一流だと思われている仕事は日本の未来にとって重要ではない

 優秀な人材が、給料と名声に惹かれて、金融機関、コンサル、商社、メディア、士業のような「まとめ係」「手伝い係」「環境構築係」的な仕事に就いてしまうのは日本の国力を衰退させる遠因になっていると思います。 

 優秀な人材は、現場で技術職をやって、日本がこの先食べていくための産業を育成しなければ、日本は、環境は整備されているけど、何も作れない、空っぽの国になってしまいます。 

 第三次産業が産業の大半が占める国は何もしていないのと同じです。 

 みんなが円形に並び、前の人の肩もみをしている状況です。肩もみは一周して全員の肩こりは治まりますが、これだけではお腹がすいてしまいます。国内だけで展開する第三次産業だけでは「メシのタネ」となり得るモノをつくることはできません。

  最近のエリート層は「仕事を与えてくれればうまくやります。けど自分で仕事を作ることはできません」という人が多いと思いますが、みんながこれでは食べていかれないのです。

 金融的にいえば、このような状況が続けば、長期的には貿易赤字が山積して日本経済は崩壊してしまいます。

■米国と日本で同じことをやっても勝ち目はない

 ところで、米国人はたいして働いているわけではありませんが、この先も裕福なはずです。これは、世界の統治者として、富を集めるビジネスモデルができあがっているがゆえに第三次産業や利権の管理だけで食べて行かれるのです。

 AppleやGoogleが天下を取れているのも偶然ではなくIEEEによる規格化、特許など米国有利な社会システムの影響が多大にあったと思います。もちろん、偶然にすべてのシステムが米国有利になったわけではないでしょう。米国国家の役割は、米国民に有利な世界を作ることです。それを国策や国家戦略と言います。逆に日本の産業が振るわない理由のひとつは、日本にには世界で通用する国家戦略がなかったことだともいえます。

 このように、米国と日本では権力や世界におけるプレゼンスなど立場が違います。いまや「仕組み」だけ作って、あとは勝手に楽して儲かるという類の仕事は、なかなか日本には回ってきません。そのため、日本はモノを作れなければ、日本の労働人口全体が中途半端な中間管理職として失職することになるかもしれません。

 ■新興国が日本よりも高品質な製造業をはじめている

  台湾は巧みな国家戦略で、バナナの国から半導体世界一になりました。いまや日立と東芝を足しても台湾TSMC社にはかなわないでしょう。iPhoneの中身は台湾製です。

  サムソンも国家の後押しを得て、また、日本人のゆとり教育とは対極にある気力でモバイルデバイスでは世界一とも言える地位を築きました。好き嫌い、やり方の良い悪いは別として、韓国の産業が無視できないレベルに達しているのは事実でしょう。

  すごいなーと思う反面、アジアの新興国に仕事をとられ、日本人はこれからどうやって食べていくのか見通しが付きません。

  日本にもITの得意な人は少なくないですが、99%はアプリケーションプログラマーであり、1ヶ月働いていくらという仕事をする人がほとんどです。いわゆるエンジニアとは、やっている仕事が根本的に違います。

 ■日本のお家芸であるエレクトロニクス産業がお家断絶の危機

  かつて、半導体は日本のお家芸と言われていましたが、DRAMなどの単純で安価な製品は、サムソンなどアジア勢にとられてしまいました。 東芝はフラッシュメモリで食いつないでいますが、フラッシュメモリなどというのは記録さえできれば何でもいいのです。東芝製である必要はなく、コモディティ化は必至です。安価なアジア製に駆逐される日はそう遠くないでしょう。

  では、エルピーダメモリのように、高性能&高品質という「THE 日本製」の路線はどうかといえば、この路線は、いまのIT分野ではあまり必要とされていないのが悩みのタネです。現在の市場は、新興国でも気軽に使える、必要十分な内容で極限まで安い製品が求められています。これも人件費が高い日本勢には逆風です。

 ■IT産業のグローバル化と標準化が日本の付加価値産業を無価値にした

  この逆風はグローバル化が呼び起こした風でもあります。

  いまのIT製品の規格は、世界共通で同じものを使うほうが相互接続性や生産効率が良いため、難しそうに見える最先端の技術ですらも規格団体の定めたリファレンス・モデルと呼ばれるマニュアルに従い組み立てるだけ(と言ったら技術の人から怒られそうですが)なので、独自性や新規性のある商品は作れないようになっています。

  コレガやバッファローのような一般メーカーでも、最先端の無線規格などを採用しながらも1万円を切るような価格で商品が提供できるのは、そのためです。

  新規性のある技術は次世代の規格競争にさらされ、それに勝ち抜かなければ製品化されないため、いまや新技術を立ち上げて、それで市場を席巻しようとする戦略はギャンブル性の高いものとなっています。

  ブルーレイ vs HDDVDを思い出すと良いと思いますが、HDDVD陣営は、多額の予算を投じて研究したものが製品化されず多くが無駄になっています。さらに、競争に勝ったブルーレイですら、それほど利益を生んでいるようには思えません。

 技術の移り変わりは早く、大きな工場を作って製造を開始しても、工場の建設費を回収する前に次世代の技術に主役を奪われてしまうためです。

 ■話は変わるが、人を集めて広告を貼るビジネスモデルはやめましょう

  近年では、エレクトロニクス産業の進化はゆっくりで、それに代わってFacebookや「まとめサイト」をはじめとするコンテンツビジネスがITの主役となりました。コンテンツビジネスの基本は、とにかく人をたくさん集めることです。人を集めれば広告収入が入り、また、無料会員のうち一定数は有料会員になってくれます。

  このように人をたくさん集めて集金するビジネスは好きではありません。IT産業やエレクトロニクス産業は、広告やマーケティング業界、エンターテイメント業界から来た人に乗っ取られ、IT産業が本来進むべき進路から脱線しています。それにより技術的な進化を止められて足踏みしているように思います。

 ■IT技術は技術者のものからビジネスマンのものへ

 ところで、このようなコンテンツビジネスに世界が熱狂するには理由があります。WindowsXP(2001年ごろ)以降、ITは一般の人にも幅広く使われるようになり、この分野は、もはや技術者やギークのものではなく、ビジネスマンのものになりました。そこから、いかに安くて早くて儲かるものを作るかの競争がはじまります。

 サブプライム危機以降、その流れはさらに加速したように思います。PS4のゲームをひとつ作るよりも、DSで「なつかしゲーム」の詰め合わせを売った方が手っ取り早く儲かるので、新しいモノを作ることは投資効率が悪いのです。ましてや、お金にならない分野を研究することは御法度です。

 その点、人を集めて広告を貼るビジネスモデルは、ひとりの人間のアイデアだけで簡単に作れるため開発費用がかからず、それでいて巨額の利益を稼ぎ出すため、ビジネスマンの要求にあっているのです。

 しかし、世界は誰かが集めた広告やトラフィックでできているわけではありません。このようなものばかりが産業として増えてしまうことには違和感があります。

 IT = コンテンツになってしまえば、これ以上、アルゴリズムもハードウェアも発展しません。産業の歴史として考えれば停滞しているのではないでしょうか。

■日本には自動車とアニメも残っている!?

 話が飛びましたが、再び日本国内の産業を考えてみましょう。

 日本の自動車は、いまだに世界でもっとも支持されている製品のひとつです。私は、自動車にはまったく詳しくないのですが、日本車は外国製よりも普及機については基本性能が良いようです。

 しかし、自動車もコモディティ化が著しく、長期的にはアジア製でも米国製でも大きく品質差がなくなることは間違いないでしょう。日本の自動車が海外で高く売れる環境がいつまで続くか分かりません。

 テスラのように、今までとはことなる作り方で製品化している企業もあります。

 かつて、世界最高品質の高付加価値モニタを作っていたナナオ(現EIZO)が、技術革新により付加価値の低い会社に一転したようなことが、自動車産業でもあり得るかもしれません。

 近年では、ゲームやアニメが日本の主力産業であると、本気なのか冗談なのか言われていますが、このような基幹産業になり得ない軽い産業だけで1億人分の食費をまかなうには無理があります。

 権利と利権は米国にとられ、重厚長大産業をアジアにとられ、日本には中間管理職ばかりが残ってしまったら、人事部と管理部だけしかない企業のように、何も製品を生まず、食べて行かれないのではないでしょうか。

■どの仕事に価値があるのか。国が白黒つけるべき

 トルコでは技術者は日本よりも地位が高いです。こどもに将来なりたい職業を聞いたら、エンジニア!と答えるかもしれません。

 おそらく、銀行員や公務員と言うような教育は施されていないでしょう。そのおかげで、トルコは自前で家電など、それなりに高度な製品を作りEU諸国に輸出することができており、中身の詰まった国になっています。

 シンガポールでは、外国人がシンガポール内で営んで良い業種に、日本では職業選択の自由という憲法に反するような制限を課しています。占い、マッサージ、健康食品のような仕事は外国人が営むことはできません。国益にならない仕事の種類を国が明確に定めて禁止しているといえるでしょう。

 日本では、日本人が食べ続けて行かれる理由である、ものづくり分野の人たちが尊敬されるような国家戦略はないように思えます。社会全体として、「まとめ係」は偉くなくて、現場でモノを作ってる人が偉い!というコンセンサスを浸透させなければならないと思います。

 今月より、隔週刊だった日経エレクトロニクスが月刊化されました。これは、日本の第二次産業に特筆すべきものがなくなったことを如実に表していると思います。同誌の月刊化の背後にあるのは、ここで語ったような、日本の未来を左右する重大な課題だったのではないでしょうか。

 ■結論

・頭のいい人は コンサルや業務効率化など、人の手伝いばかりしないこと。ましてや、金融や投資のような間接部門の高い給料に吸いよせられることなく、日本の未来を担う基幹産業を作ることを考えましょう
・アニメやゲームで日本ファンを増やしたところで、その程度の規模の軽工業では1億人が食べていくには不足です
・日本国内で争っていては日本の産業は世界で勝てない。積年のライバル同士は合併して対米、対アジア戦略を考えましょう
・日本の国は次世代を担う産業に対して不公平感や庶民感情などを度外視して、重点的に資金や環境を提供すべきでしょう
・弁護士や医者や銀行員ではなく、産業となりうる産業を担う人たちが尊敬されるようにしましょう。こどもにはプロジェクトX(NHK)でも見せておくといいでしょう