2014/03/25

2014年の不動産市況展望

■サマリー

・震災以降、機関投資家のカネ余りと堅調な証券市場を背景に、都心の投資用不動産価格は上昇を続けている。

・近年では、震災前に比べて2-3割の上昇となり、価格上昇スピードは一服。高位安定を続けている。

・売主はアベノミクスとオリンピックで強気。買主は、あまり高く買うとキャッシュフローが逆ざやのため買い控えている。このように、相場目線に乖離があり、購入希望の引き合いは多いが実際の成約数を見るとバブルの様相はない。

・富裕層は、利回りの下がった不動産市場を静観し、代わりに太陽光発電などのオルタナティブなfixed income商品を積極的に物色している。

現在の購入主体は、純投資家ではなく、資産家や地主と呼ばれる、投資リターンをそれほど精緻に計算していない層ではないかと推測している。

・オリンピック以降はイベントがなく2020年までを価格のピークとみている。ただし、金融機関の融資姿勢が緩和されれば資産バブルの本格化も期待できる。

■本文

□震災以降はカネ余りを背景にして断続的に値上がり

3.11震災が落ち着いた後は、機関投資家のカネ余りが、私募ファンドやREITへの増資、ローンなどへ回り、間接的に不動産市場を支えているようです。

また、金融市場で積極的に買い進められるfixed income商品が少なかったこと、株式投資で利益確定した資金を、より安全性の高い不動産投資に振り向けたことも、市場へ資金が流れる要因となったとみています。

直近(2013年末)では、都心の投資用一棟マンションは震災前に比べて2-3割の値上がりとなっており、現在では、ネット利回りは5%~5.5%(表面7%)、借入金利は1.5~2%、スプレッドは3.5%程度の薄い利益幅のみが残っています。

□売主と買主の投資目線に乖離あり

しかしながら、アベノミクスによる資産インフレ期待、また、オリンピックによる先高感(2020年前に相場の後ピーク期待)、金利は当面上がらないという コンセンサス、さらに台湾、シンガポールからの投資マネー流入という言い訳があるため、低いスプレッドながらも相場は堅調さを維持しています。

また、このように先高感があるために、売主は非常に強気で、売り物件が少ないのも現在の市場の特徴です。

一方、以前より不動産投資をしており、サブプライム後の安値を覚えている個人投資家の間では、オリンピックによる価格上昇が顕著になる前に仕込みたいという焦りはあるものの、現在の市場はすでに割高感があり、静観を続けています。

このように、売主と買主の利回り目線が合っていないため、活況な割には取引はそれほど頻繁に成約しているわけではなく、バブル的な動きはありません。

投機的な融資も出ていないため、資金に余裕のある投資家が、きわめてまっとうな利回りで購入しているという、持続可能な相場環境だと見ています。

□これ以上の価格上昇はキャッシュフローをネガティブにしてしまう

買主が積極的に買い進められない理由として、ネット利回り5.5%の水準まで利回りが下がると(価格が上がると)借入を起こして投資した場合にキャッシュ フローがネガティブになってしまうことがあります。この要因が価格(利回り)の上限をキャップしていると考えます。

個人投資家は、賃料キャッシュフロー収入以外に残債返済分も純資産が増加しているという計算をせず、また、心理的にネガティブキャッシュフローは損をしている感覚を受けます。

そのため、いまだに少しずつの価格上昇傾向とはいえ、キャッシュフローが出なくなる水準(現在はすでにそれに近く7合目くらいまで来ている)を超えて買い進まれることは考えにくいと見ています。

□不動産市場よりも採算のよい太陽光発電に脚光

このように、今後の価格上昇期待を除けば、投資妙味の薄くなった不動産市場に見切りを付けた富裕層もおり、その一部は、グリーン投資減税の恩恵も受けられる太陽光発電に流れています。

太陽光発電は、不動産投資と考え方が似ているため、不動産業者や不動産投資家がメインプレイヤーとなっており、その利回りは不動産と比較して圧倒的な投資妙味があります。

そのような背景より、太陽光発電案件も非常に品薄で購入は順番待ちの状況です。特に、不動産と違って太陽光では、案件ごとに個別性がなく(太陽光パネルは規格品でありどれも同じ、土地はどこでも同じ量を発電するため)

どこで、どのようなプロジェクトを仕込んでも、結果はほぼ同じになることが考えられるため、予約者の順番待ちが発生しています。

□富裕層の投資ポジション

多くの「投資知識のある富裕層」すなわち純投資の投資家は、不動産をメインで保有しつつ、ハイイールド社債、外貨建て債券も持ち、株への投資は遊び程度、余った資金で太陽光発電などのオルタナティブを探しているという感覚だと思われます。

一方、資産家や地主、相続対策による買い手など、知識はないが資金はある。という人たちが、今後は不動産市場のメインプレイヤーとなり得ると考えます。

外国ファンドやアジア人富裕層の買いも散見されますが、市場規模から考えて、外国人がメインにはなり得ないと思われます。

□今後の展開-オリンピック以降はポジティブなイベントがない懸念

オリンピック前までは、このような高位安定が続くと考えられますが、多くの人は、オリンピック以降に何も良いイベントがないと考え、財政問題などにより再び、沈没するかもしれない日本経済像を思い浮かべています。

それも価格がつり上がらない心理的なブレーキとなっていると思われます。

唯一のバブルの引き金は、アベノミクス量的緩和による、金融機関の融資姿勢緩和だと考えます。

2007年頃のように投機的な融資が出れば、利回りは悪くても買いたい人は列をなしていますので、東南アジアの不動産市場のように、価格はどこまでも上昇を続けることができると考えます。