2021/06/23

玉川陽介 日本経済解説(企業活動の経済指標-GDPとは何か)

企業活動の経済指標

GDP統計とは

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厳密には非常に難しいGDP統計

インターネット上でGDPとは何かを調べると、多くは初心者向けの解説ページにたどり着きます。
そこでは、「生産者が生地業者に小麦を売り30の利益、生地業者はパン屋に生地を売り40の利益、パン屋は消費者にパンを売り30の利益、利益の合計100がGDP」と説明されていることが多いでしょう。GDPは国全体の儲けを示すというわけです。

しかし、それはGDPの一面をイメージした抽象表現に過ぎず、経済統計を読み込むには不十分です。

そもそも、GDP計算は推計や補正を含む、非常に複雑な数理モデルですので、対象となる経済活動を1円単位で集計して足し合わせても、GDP統計値とは一致しません。

GDP季節調整

たとえば、季節調整といって、夏と冬だけに数値が突出するサラリーマンの賞与などは、年収ベースで計算して月額を求めて平準化するような調整を入れています。

また、賞与が出れば、商店のセールがはじまります。そのため、その直後だけ瞬間的に消費が増えます。しかし、それでは、日本の景気が良くなったのかセールが始まっただけなのか判別できません。そのため、そのような季節的な増減のノイズは、移動平均を採用するなどして平準化される計算法になっています。

GDPと金融市場

ではGDPとは何なのでしょうか。GDP統計は、その重要性から、経済指標の王様といわれ、多くの場面に登場します。

ただし、日本のGDP統計は、リアルタイムの金融市場を動かす要素ではありません。日本の景気はいつでも停滞していて経済成長はしないことが市場の共通理解になっているため、多少、良くても悪くても誰も驚かないからかもしれません。
どちらかといえば、研究レポートなどの中で分析的に用いられることが多いのが特徴です。たとえば、「国債残高の対GDP比」などの表現は多くのレポートで使われています。

また、日本の金融市場では、GDPよりも、為替や米国経済などが市場を動かすトリガーとして寄与率が高いこと、また、GDP統計の複雑さゆえに詳しい理解がされていないため、それが話題になることも多くありません。

じつは、安倍政権になってからGDP計算方法が変更され、結果、日本のGDPは大幅に増えることとなりましたが、多くの人は内容を理解できていないこともあり、この変更が市場に与える影響は限定的でした。

しかし、本来は、複雑怪奇な計算モデルゆえに、計算モデルの変更は反則技です。コンピュータの速度計測ベンチマークテストと同じだと考えればいいでしょう。実行する計算問題を自陣営に有利な内容に変えれば「当社比で大幅な高速化」を達成することは容易なのです。GDPも、同じ計算方法を続けているからこそ前年との比較が成立し、経済成長しているのか否かを定点観測できるわけです。

日経
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個人消費とGDP

投資家としては、GDPについては、最低限の内容だけ知っておけばいいでしょう。
GDP統計は、生産面、分配面、支出面という3つの側面があり、どの切り口で見ても総額は同じになることから、三面等価といわれていますが、金融市場では、GDPを支出面からとらえるのが一般的です。先のパン屋の例にあったような、サプライチェーンの各サプライヤーの利益の積み上げという発想とは逆の切り口です。


表からも分かるように、
日本のGDPは550兆円程度。うち55.5%(約6割)は民間最終消費支出、すなわち個人消費です。
・政府最終消費支出と公的固定資本形成の合計が25%ですので、政府部門は1/4と理解すればいいでしょう。
・残り15%は民間企業設備、すなわち民間企業が購入する生産機械設備などです。

このように、GDP統計に占める個人消費は大きいため、(計算ロジック的に)経済成長には個人消費の増加が欠かせないともいえます。
個人消費を増やすには、給料を増やし、将来不安を減らすことが効果的なように思います。そのように考えると、アベノミクスをはじめとした政府の政策が理解できるでしょう。

金融市場ではこのような見方のため、GDPを説明するには、パン屋の例では足りないことも分かるでしょう。

GDP統計計算の勘どころ

投資家は経済指標アナリストではないのでGDPの計算をマスターする必要はないでしょう。ポイントだけ把握しておきましょう。

土地の値上がりはGDPに含まれない

土地の売買は支出に含まれませんので、更地に建物を新築した場合、建物代金のみがGDPの計算対象です。これは、土地が何度も売買されたとしても経済社会の実態は変わらないためです。

家賃の値上がりはGDPに含まれる

民間最終消費支出の内訳として存在する、持ち家の帰属家賃とは、経済統計上の特殊な考え方です。消費者物価指数でも同じ概念が出てくるので知っておきましょう。

持ち家に住めば、多少の税や管理費を除きお金はかかりません。しかし、それを賃貸住宅のような他者から買う住宅サービスと考えた場合に、どれほどの支出相当かを計算するという指標です。
持ち家の自宅とは、お父さんが買って家族に有償で賃貸し、その家賃相当額を支払う賃貸住宅サービスと考えれば分かりやすいでしょう。仕組み上、この賃料は住宅ローンの支払額とは無関係であり、類似スペックの賃貸住宅と近似するはずです。

従い、持ち家の帰属家賃は、概念上は支出しているが実際にはしていない仮想的な支出です。民間最終消費支出には、この仮想的な支出も含まれています。逆にいえば、すべての国民がレジで支払ったお金を合計しても民間最終消費支出にはなりません。

製造業が海外現地生産した場合の利益はGDPに含まれない

GDP統計の定義上、製造業が海外現地生産した場合の利益、および、それを日本に送金した環流金は含みません。
日本の製造業の主流ともいえる稼ぎ方が統計から除外されているため、そこには留意が必要です。(それを追加したのが国民総所得(GNI)ですが金融市場ではあまり使われていません)

逆にいえば、日本のGDPを見かけ上だけかさ上げするには、トヨタなど製造業の海外生産を国内生産に切り替えることが有効となる計算です。

無報酬労働はGDPに含まれない

家事や育児のような、無報酬労働(unpaid work)はGDPに含まれないことも計統計上の盲点です。
それらを自給自足していた女性が社会進出して労働し、代わりに、保育や家事代行などにお金を支払うことには、GDPの押し上げ効果がある計算です。
無報酬労働の従事者を有償労働者に切り替えることは、仮に仕事内容が同じだったとしてもGDPの数値には貢献することになるでしょう。埋蔵された労働力資産と考えることもできます。

計算上の問題で、そのような定義だからと理解すれば簡単ですが、自給自足ではゼロカウントなのにそれを他人に売れば利益としてカウントされるとはいかなることか。など、実態と比較していくと複雑な話になってしまいます。
お母さんが二人いたとして、それぞれが自分の子どもを自給自足で育てれば無報酬労働でGDPへの寄与はゼロですが、Aが保育士としてBの子を世話し費用を払い、同じくBがAの子を世話して費用を払えば、民間最終消費支出に寄与してGDPは増えます。GDPとはいったい。もはや哲学的です。

経済成長と経済指標

以下、作りかけ

実質GDP成長率
GDPデフレーター
名目GDP
実質GDP
需給ギャップ
機械受注統計
業況判断DI
鉱工業生産指数
資金循環統計

なお、国際金融市場においては、日本の経済統計自体がそれほど重視されません。